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冒険しましょう
アルベールの昔話を聞きました
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すみません。随分更新に間が空いてしまいました。
ワクチンの副反応で発熱、腕の痛み、関節痛、腰痛、頭痛、倦怠感と戦ってました。
もの凄く辛かった・・・。
また、不定期になりますが更新していきますので、よろしくお願いします。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
仕えていたみそっかす王女が実は異世界でアラサーまで生きた残念女子の前世を思い出し、今後は欲望のままに逞しく図太く生き抜く決意であることを知ったエルフは語りき。
そんなつもりじゃなかったのに・・・、と。
アルベールは数少ないエルフの里のひとつ、その族長の息子として生まれた。
私の知っている物語の多くがエルフの長命と出生の少なさを描いているが、やっぱりここでもそうらしい。
「だいたい長命種は出生率は低いんですよ。人族は短命ですが子供に恵まれ易く、次に獣人。そしてエルフ・ドワーフ・小人・巨人。最も長命で出生率が僅かなのは、竜人・ハイエルフと言われてます」
例外なのは魔族ぐらいですとアルベールは教えてくれる。
エルフのほとんどが気位が高く魔法が得意、スローライフ大好きで、里に生まれたエルフはほぼ里から出ないで一生を終える。
町で産まれたエルフはもう少し社交的らしいが。
アルベールは里で生まれた癖に、好奇心旺盛な好戦的な性格で、エルフとしてはまだまだ子供な時期に親と喧嘩をして家を飛び出し、そのまま冒険者登録を済ませ冒険者稼業を邁進し。
「気が付いたらAランクの冒険者となり、あちらこちらの国を訪れていました」
てへって照れ笑いしているけど、そんな簡単にAランクに成れる訳がない。
アルベール、恐ろしい子っ!
里を出て50年以上が経ち、ふと里に帰ることを思い立つ。
「なんでしょうねぇ。一緒にパーティーを組んでいた仲間の冒険者が亡くなって・・・ふいに里心がついてしまったんですかねぇ」
しんみり語るアルベール。
パーティーのメンバーには人族もいて、パーティーを組んだときはピチピチの20代でも50年以上経てばヨボヨボにもなって、自分はこれから青年期を迎えもっと危険な依頼も達成できるのに、仲間はひとり欠けふたり欠け・・・、そして残ったメンバーでパーティーを続けることも、メンバー補充することもなく解散した。
気落ちしたまま里に帰って、激怒した父親たちにボコられて、お詫びに高ランク魔獣討伐をして肉を提供して・・・ふと、気付く。
「なあ、ランベールはどこにいる?」
弟のランベールの姿を見ていないことに気づいた。
自分と違って大人しく、本が好きで、古いものに興味があった、かわいい弟。
エルフの兄弟は珍しい。
それもあって弟は殊の外可愛かったし、自分が自由気ままに里を離れられたのは、弟がいると甘えていたからだ。
「は?外に出た?」
かわいくて大人しい、ちょっと弱虫な弟は、古いものへの興味が尽きなく、とうとう外の世界の遺跡調査に飛び出して行ったという。
「私に似たのだと、父や母、祖父母にまでお説教されましたよ・・・」
そもそもアルベールは里帰りはしたけれど、ここで英気を養って再び冒険者稼業に精を出そうと考えていた。
そこで突き付けられた条件は、「弟を里に戻すこと」だった。
アルベールの親だって分かっている。
アルベールに里を治めることはできない。むしろ、やめろ。
まだまだ現役な父親がいるので、今すぐではないが、いずれはランベールに里を治めてほしいから、外の世界をほどほどに楽しんだら戻ってくるようにと伝言を頼まれた。
「頼まれたんですがね・・・。アデラ―ルが調査に行った遺跡というのは・・・ハイエルフの里跡なんですよ・・・」
秘境も秘境。
今はその存在すら幻とされているハイエルフ。
里を出て、適当な街で旅支度を整えて、向かったハイエルフの里跡。
「その近くの村でランベールの目撃情報がありましてね」
なんでも、行きはヒョロヒョロした優男が危なっかしい足取りで森に入り、何か月か後に綺麗な女の人と一緒に戻ってきたという。
「女の人?」
「ええ。私も驚きました。あの朴念仁に綺麗な女の人。しかも森の中で出会うなんて、ね」
バチコンと私にウィンクしなくていいから、続きを話してよっ。
その村の話を聞いてふたりの足取りを追うアルベール。
ある町では宿屋の女将が可愛い恋人たちと話し、ある村の子供は優しいお兄さんと綺麗なお姉さんは仲良しと教えてくれ、ある国の教会で神父がにこやかにふたりの結婚の誓の見届け人になったことを告げた。
「その女の人がエルフならともかく、別種族の女性であれば子供を設けることはほぼ望み薄ですから・・・、どう父親に言い訳をしようか頭を悩ませましたよ」
そして、ゆっくり旅を楽しむふたりにようやく追いつくかと思われたミュールズ国のある町で、悲劇が起きる。
たまたまミュールズ国を訪れていたトゥーロン王国の王に連れ去られたのだ。
「でも連れられたのは女性だけ。ランベールの話は皆が口を噤む。調べて脅してようやく辿り着いたのは・・・共同墓地でした」
自分の妻が無理やりに連れ去られるのを黙って見ている馬鹿はいない。
ランベールも妻を守ろうと戦い・・・殺された。
「ふうーっ。今でも腸が煮えくり返り血が沸騰するほどの想いです。でも、私は連れ去られたランベールの妻を救出しようと、ミュールズ国から連合国タルニスへ入りトゥーロン王国へ。身分を偽り王宮に忍びこみました・・・」
なんとか離宮に閉じ込められた弟の妻の側に仕えることができたアルベールの目に映ったのは・・・。
「お人形のようでしたよ。なんの感情もないお顔で静かに座って・・・とごか遠くを見つめておられました。話しかけても反応はしません。美しい人形のような方でした・・・アメリ様は」
「お、母様?」
こくんと頷くアルベール。
夜中にこっそりエルフ姿のまま、お母様に会いに行くと、静かに涙を流されたそうだ。
呟くように「ごめんなさい。ごめんなさい、ランベール」と。
「私たちは兄弟で、よく似た容姿でした。表情が全然似ていないので見分けはつきましたけどね」
そうして、お母様に寄り添い静かに暮らしていると、母の妊娠に気づいた。
「私が離宮に勤めてから王が訪れたことはありません。その前かもしれませんが・・・もしかしたらとも思いました」
それって、私があの父親の子供じゃなくて、ランベールさんとの子供かな?ってこと?
アルベールは自嘲気味に口元を歪めて首をひとつ振ります。
「分からないのですよ。貴方はあまりにもアメリ様に似ていて。あの男の子供なのか、ランベールの忘れ形見なのか・・・」
母の態度からも分からなかった。
母は段々に人としての感情が無くなっていき、私を胸に抱いても反応は無かったそうだ。
「でも、エルフって出生率が低いんでしょ?だったら人族の王様の子供じゃないの?」
「どうでしょうねぇ。それはアメリ様が人族だったらっていう前提ですから・・・」
「へ?」
「アメリ様は元々、子供が出来にくい種族なんです。相手が人族でもエルフでも変わらないぐらいに希少種で」
「ちょっ、待って!待って待て!私のお母様って・・・」
「だからその金眼は人の目に晒さないようにって注意しましたでしょう?それは・・・ハイエルフの特徴ですよ」
は?はい?
ハイエルフーっ!!
ワクチンの副反応で発熱、腕の痛み、関節痛、腰痛、頭痛、倦怠感と戦ってました。
もの凄く辛かった・・・。
また、不定期になりますが更新していきますので、よろしくお願いします。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
仕えていたみそっかす王女が実は異世界でアラサーまで生きた残念女子の前世を思い出し、今後は欲望のままに逞しく図太く生き抜く決意であることを知ったエルフは語りき。
そんなつもりじゃなかったのに・・・、と。
アルベールは数少ないエルフの里のひとつ、その族長の息子として生まれた。
私の知っている物語の多くがエルフの長命と出生の少なさを描いているが、やっぱりここでもそうらしい。
「だいたい長命種は出生率は低いんですよ。人族は短命ですが子供に恵まれ易く、次に獣人。そしてエルフ・ドワーフ・小人・巨人。最も長命で出生率が僅かなのは、竜人・ハイエルフと言われてます」
例外なのは魔族ぐらいですとアルベールは教えてくれる。
エルフのほとんどが気位が高く魔法が得意、スローライフ大好きで、里に生まれたエルフはほぼ里から出ないで一生を終える。
町で産まれたエルフはもう少し社交的らしいが。
アルベールは里で生まれた癖に、好奇心旺盛な好戦的な性格で、エルフとしてはまだまだ子供な時期に親と喧嘩をして家を飛び出し、そのまま冒険者登録を済ませ冒険者稼業を邁進し。
「気が付いたらAランクの冒険者となり、あちらこちらの国を訪れていました」
てへって照れ笑いしているけど、そんな簡単にAランクに成れる訳がない。
アルベール、恐ろしい子っ!
里を出て50年以上が経ち、ふと里に帰ることを思い立つ。
「なんでしょうねぇ。一緒にパーティーを組んでいた仲間の冒険者が亡くなって・・・ふいに里心がついてしまったんですかねぇ」
しんみり語るアルベール。
パーティーのメンバーには人族もいて、パーティーを組んだときはピチピチの20代でも50年以上経てばヨボヨボにもなって、自分はこれから青年期を迎えもっと危険な依頼も達成できるのに、仲間はひとり欠けふたり欠け・・・、そして残ったメンバーでパーティーを続けることも、メンバー補充することもなく解散した。
気落ちしたまま里に帰って、激怒した父親たちにボコられて、お詫びに高ランク魔獣討伐をして肉を提供して・・・ふと、気付く。
「なあ、ランベールはどこにいる?」
弟のランベールの姿を見ていないことに気づいた。
自分と違って大人しく、本が好きで、古いものに興味があった、かわいい弟。
エルフの兄弟は珍しい。
それもあって弟は殊の外可愛かったし、自分が自由気ままに里を離れられたのは、弟がいると甘えていたからだ。
「は?外に出た?」
かわいくて大人しい、ちょっと弱虫な弟は、古いものへの興味が尽きなく、とうとう外の世界の遺跡調査に飛び出して行ったという。
「私に似たのだと、父や母、祖父母にまでお説教されましたよ・・・」
そもそもアルベールは里帰りはしたけれど、ここで英気を養って再び冒険者稼業に精を出そうと考えていた。
そこで突き付けられた条件は、「弟を里に戻すこと」だった。
アルベールの親だって分かっている。
アルベールに里を治めることはできない。むしろ、やめろ。
まだまだ現役な父親がいるので、今すぐではないが、いずれはランベールに里を治めてほしいから、外の世界をほどほどに楽しんだら戻ってくるようにと伝言を頼まれた。
「頼まれたんですがね・・・。アデラ―ルが調査に行った遺跡というのは・・・ハイエルフの里跡なんですよ・・・」
秘境も秘境。
今はその存在すら幻とされているハイエルフ。
里を出て、適当な街で旅支度を整えて、向かったハイエルフの里跡。
「その近くの村でランベールの目撃情報がありましてね」
なんでも、行きはヒョロヒョロした優男が危なっかしい足取りで森に入り、何か月か後に綺麗な女の人と一緒に戻ってきたという。
「女の人?」
「ええ。私も驚きました。あの朴念仁に綺麗な女の人。しかも森の中で出会うなんて、ね」
バチコンと私にウィンクしなくていいから、続きを話してよっ。
その村の話を聞いてふたりの足取りを追うアルベール。
ある町では宿屋の女将が可愛い恋人たちと話し、ある村の子供は優しいお兄さんと綺麗なお姉さんは仲良しと教えてくれ、ある国の教会で神父がにこやかにふたりの結婚の誓の見届け人になったことを告げた。
「その女の人がエルフならともかく、別種族の女性であれば子供を設けることはほぼ望み薄ですから・・・、どう父親に言い訳をしようか頭を悩ませましたよ」
そして、ゆっくり旅を楽しむふたりにようやく追いつくかと思われたミュールズ国のある町で、悲劇が起きる。
たまたまミュールズ国を訪れていたトゥーロン王国の王に連れ去られたのだ。
「でも連れられたのは女性だけ。ランベールの話は皆が口を噤む。調べて脅してようやく辿り着いたのは・・・共同墓地でした」
自分の妻が無理やりに連れ去られるのを黙って見ている馬鹿はいない。
ランベールも妻を守ろうと戦い・・・殺された。
「ふうーっ。今でも腸が煮えくり返り血が沸騰するほどの想いです。でも、私は連れ去られたランベールの妻を救出しようと、ミュールズ国から連合国タルニスへ入りトゥーロン王国へ。身分を偽り王宮に忍びこみました・・・」
なんとか離宮に閉じ込められた弟の妻の側に仕えることができたアルベールの目に映ったのは・・・。
「お人形のようでしたよ。なんの感情もないお顔で静かに座って・・・とごか遠くを見つめておられました。話しかけても反応はしません。美しい人形のような方でした・・・アメリ様は」
「お、母様?」
こくんと頷くアルベール。
夜中にこっそりエルフ姿のまま、お母様に会いに行くと、静かに涙を流されたそうだ。
呟くように「ごめんなさい。ごめんなさい、ランベール」と。
「私たちは兄弟で、よく似た容姿でした。表情が全然似ていないので見分けはつきましたけどね」
そうして、お母様に寄り添い静かに暮らしていると、母の妊娠に気づいた。
「私が離宮に勤めてから王が訪れたことはありません。その前かもしれませんが・・・もしかしたらとも思いました」
それって、私があの父親の子供じゃなくて、ランベールさんとの子供かな?ってこと?
アルベールは自嘲気味に口元を歪めて首をひとつ振ります。
「分からないのですよ。貴方はあまりにもアメリ様に似ていて。あの男の子供なのか、ランベールの忘れ形見なのか・・・」
母の態度からも分からなかった。
母は段々に人としての感情が無くなっていき、私を胸に抱いても反応は無かったそうだ。
「でも、エルフって出生率が低いんでしょ?だったら人族の王様の子供じゃないの?」
「どうでしょうねぇ。それはアメリ様が人族だったらっていう前提ですから・・・」
「へ?」
「アメリ様は元々、子供が出来にくい種族なんです。相手が人族でもエルフでも変わらないぐらいに希少種で」
「ちょっ、待って!待って待て!私のお母様って・・・」
「だからその金眼は人の目に晒さないようにって注意しましたでしょう?それは・・・ハイエルフの特徴ですよ」
は?はい?
ハイエルフーっ!!
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