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王都に行きましょう

サン・ブルージュに到着しました

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その白虎族の男の人は、太い木に凭れかかって悠然と私たちの魔獣討伐の様子を観戦していたみたいだった。
私たちの注目を集めているのに気が付くと、ゆっくりと木から身を起こし深々と頭を下げた。

「危ないところを助けていただき、ありがとうございます」

どこか優雅な仕草で頭を上げると、にっこりと微笑み・・・微笑み・・・沈黙ですか?
何か言いなさいよ・・・。
リュシアンがアルベールと目配せして、一歩前に出る。

「あー、怪我はないか?俺たちはこの先の町「サン・ブルージュ」に行く冒険者パーティーだ」

よろしくと手を差し出し握手する。

「そうなんだ。僕はそこに住んでいる魔獣学者なんだよ。今日は可愛い花角兎の観察に来たんだけど、運が悪く強い魔獣とバッタリ会ってしまってね」

花角兎とやらは見たことが無いが、例えその兎が無害な魔獣でも、その軽装で森に入るのはどうかと思うわ。
リュシアンもちょっと言いにくそうにそのことを指摘すると、彼はあっさりと自分の爪をニョキと伸ばして笑ってみせた。

「自前の武器があるから、ついつい軽装になってしまうんだ」

そして、興味深そうに私たちひとりひとりの顔をじっくりと見る。

「なかなかバラエティーに富んだ編成だね。子供たちも強いし。サン・ブルージュには魔獣討伐が目的で?それなら珍しい魔獣の生息地まで僕が案内するよ?」

・・・そんな恐ろしいツアーには参加したくありません!
この人、優男に見えるのに強いのかな?
それより魔獣学者ってなんだろう?

とりあえず、一緒に町まで行くことになり、行きとは違いゆっくりとした足取りで馬車まで戻る。

ん?
何か忘れている気がするなぁ?と思ったけど、リオネルがフンフンと魔獣学者先生の匂いを嗅ぎまくっている衝撃映像のせいで、そんな疑問は遠くに放り投げてましった。

「なにやってんのよっ!」

小声でリオネルを叱りつけ、アルベールにやられたときのように襟首を掴んで思いっきり引っ張る。
ぐえっ、と漏れた声は無視よ!無視!
あの人は白虎族なんだから、同じ白虎族のリオネルは近づいちゃいかーん!

今は私が作った魔道具で白猫獣人に姿を変えているけれど、魔獣牛と戦ったときに自爪での攻撃は目撃されてるんだから、バレちゃうでしょう!

さりげなくリオネルを私とルネの背後に押しやり、不思議そうにこちらを見た学者先生から隠す。
えへへへ、と愛想笑いのひとつもしておくわ。

アルベールとリュシアンが学者先生の気を紛れさせるために、町のことをあれこれ聞いて歩くことしばらく。
馬車が見えてくると同時に、ブリュレの不機嫌そうな嘶きと、成人男性としてきあるまじき泣き声が聞こえて来た。
ああ・・・忘れてたのは・・・セヴランだったんだ。







「ひどいですよ!みんなして私を置き去りにして。怖いじゃないですか!森の中にひとりですよっ。しかも強い魔獣が出たというのに。もう少しでブリュレまで行ってしまうところだったんですよ!」

「うん、ごめんごめん」

馬車の中で、紅茶とお菓子を出してやりながら、泣くセヴランの頭を撫でて慰めてやる。
すまん!馬車のこともセヴランのこともすっかり忘れていたよ。
ちなみに魔獣と戦ってストレス発散できなかったブリュレは、リュシアンが森の中に連れて行って運動をさせている。

この規格外な馬車の中身を学者先生に見せることはできないので、アルベールと学者先生が馭者席に座ってもらって、子供組みとセヴランで馬車の中にてお茶タイム。

「それより、ひっく。いいんですか?白虎族なんて連れてきて?えっぐ、リオネルのことがバレたら面倒事が起きますよ?」

「うーん、迷子の白虎族の子供を保護したってレベルじゃないし。第一リオネルが白虎族の里に戻りたい気持ちも無いし。そもそもあの子、昔のこと忘れちゃってるし」

奴隷商人の馬車でルネと一緒になるまでの間のことは、リオネルの記憶にない。
白虎族にリオネルがカリスマスキル持ちだとバレたら、次代の王として里に連れ戻される。
リオネルがそうしたいなら止めたいが止められないけど、あの子にそんな気持ちがあるわけない。

私は腕を組んで首を捻った。
今は私たちがボロを出さないように、腹黒エルフのアルベールが相手してくれてるけど。
どうしようか?
それと、つい白虎族という学者先生をこっそり「鑑定」してしまったんだけど・・・その結果もなぁ。
あとでまとめてアルベールたちと相談しなきゃ。

セヴランを慰め、リオネルにせっせとお菓子を出してあげている内に、運動を終えたブリュレとリュシアンが戻ってきて、偏屈な者が集う町「サン・ブルージュ」改め、学者が集う町「サン・ブルージュ」の門が見えてきました。
意外にも町に入るのに並んでいるのは、屈強な冒険者たちがほとんどで、たまに商人の荷馬車が混じっている。
学者さんらしき人たちは、乗合馬車や冒険者が護衛する馬車に乗ってやってくるのだろう。
私たちが門を潜るとき、例の学者先生が門番に声をかけられる。

「カミーユ先生。お早いお戻りですね?希望の白い花角兎が見つかったんですか?」

「それがねぇ。森の浅い所でフォレストブラックブルの群れに襲われてしまって、この方たちに助けてもらったんだ。ああ、たぶん強い魔獣の移動があって森の浅い所に高ランク魔獣が出没するかもしれないから気を付けるように言ってくれるかい?」

「魔獣の移動ですか?」

「うん。森の奥に強い魔獣が出て他の魔獣が逃げているのか・・・。森の奥に異常が出たのかわからないけど、フォレストブラックブルが興奮した様子で奥から移動していたからね。注意が必要だよ。冒険者ギルドには、僕から報告しておくから」

学者先生・・・カミーユさんは門番に手を振り馬車を前に進ませようとしますが、待ってください!

「私たちの入町審査がまだですよ」

アルベールが苦笑いで馬車の手綱を奪いとった。

なんとか無事に?「サン・ブルージュ」に到着です!

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