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王都に行きましょう

冒険者ギルドに着きました

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冒険者ギルドカードを提示して門番さんに挨拶を済ませ、馬車を町の中へと進ませる。

「わああっ!」

馬車の窓から見える町の風景は、今までの町とは違っていた。
まず道が広い!
馬車が2台ずつ行き交うことができる道幅、前世でいうなら4車線道路!
等間隔に柵で仕切られた向こうには、歩行者用の道まである。
門から広場まで繋がる道はメインストリートだから一番広いんだろうけど、それでも凄い広いよ!

並ぶお店や屋台を見ながら広間まで辿り着くと、真ん中の噴水を中心に放射線状に道が分かれていて、ぐるりと真ん中の噴水を囲むように右回りで進み、カミーユさんが指差した道へと入る。
ここも馬車がすれ違えるほど道が広く、ちゃんと馬車とぶつからないように歩道が確保されている。
馬に乗っている人は、馬車用の道を使っているみたい。

そして、だいたいどこの町でも道は緩やかな曲線か直線で、町は真ん中に広場があって放射線状に道が作られているんだって。
この町の驚くところは、他の町では狭くてごみごみしていた道と道の間の建物区間は等間隔に作られていて、碁盤の目のように整理されている。
その道は歩行者のみ通行可能で、馬車が通れる広さはないし、騎乗して通ったらダメとのこと。
セヴランが教えてくれたけど、確かにこの世界の移動は馬などに騎乗するか馬車だもんね。
直角の道って馬は曲がりにくいし、それこそ馬車がドリフト走行してたら事故る以外の想像ができません!

あちこち好奇心丸出しで見て、いろいろとセヴランに尋ねていたら、いつのまにか冒険者ギルドに到着していたみたいです。

「ほら、降りますよ」

「はぁーい」

アルベールに開けてもらった扉からぴょんと飛び降りて、サン・ブルージュの町の冒険者ギルドとご対面。

「ふわあっ、ここもデカイ!」

ゴチン!
アルベールから拳骨もらいました。

「淑女の言葉遣いではありませんね」

もう、痛いじゃない!いやいや、今の私は冒険者ですけど?
カヌレとブリュレ、馬車は冒険者ギルドで預かってくれるらしい。

「さあ、中に入りましょう。僕もギルマスに報告があるので」

カミーユさんはニコニコと笑いながら、立派な石造りの3階建て冒険者ギルドの扉を開けてくれた。

「おおーっ!」

リュシアンが嬉しそうに声を上げる。
1階の半分は冒険者ギルドの受付と買取窓口で、あとの半分は完全な酒場だった。
すでに多くの冒険者たちがジョッキを交わしている。

お酒が飲みたいんだね・・・もう少し待ってください。

カミーユさんはギルド職員に片手を上げて挨拶をすると、案内も待たずに階段を昇っていく。
私たちもなんとなく後を付いて階段を昇っていく。
2階の奥の部屋をノックもしないで開け放って入って行くカミーユさん。
なんか・・・そういうとこ、リオネルと似ている気がするわ。

「なんだ!カミーユ。どうしたんだ?」

部屋の中から驚いた男の野太い声が聞こえた。
ひょこと顔だけ出して、部屋の中を覗いてみると、筋骨隆々の逞しい壮年の男の人が執務机に両手を付いて立ち上がっていた。










「フォレストブラックブルがそんな所に出たなんて。こりゃ、森の調査に冒険者を派遣した方がいいな」

「そうだね。僕もそう思うよ。僕も一緒に行こうか?」

「お、そりゃ助かる。そのときはよろしく頼むわ」

カミーユさんが森であったことを報告するついでに、私たちの冒険者カードも確認してもらって、なんとなく一緒に話を聞いているけど・・・完全に別れるタイミングを見逃した・・・。

「んで、お前たちはフォレストブラックブルをどうした?」

リュシアンがアルベールを指差して。

「ああ持ってきている。全部で12頭。角も皮もある。解体した肉はこちらに寄こしてくれ」

「ん?流石エルフのBランク冒険者だな。収納能力者か。肉は全部か?肉は旨いから少し融通して欲しいな。あと内臓はどうする?」

内臓ってホルモンのこと?
うーん、ホルモンって処理が大変だって聞いたことがあるし、素人では扱いきれないしな・・・。
でも酒飲みには、非常に美味しいつまみだということは分かっている。
リュシアンの尻尾がフリフリ動いているし。

「あのぅ。内臓ってどこかで料理してもらえます?」

右手をあげて質問した私に、サン・ブルージュのギルマス、オラースさんがふむと顎に手を当てて考える。

「そうだな・・・。このギルドかある道の並びの店の中で「星屑の鍋亭」という店があるが、そこのモツ鍋は旨い。女将さんに頼めば料理してもらえると思うぞ」

なんなら、俺が一筆書いてやるとオラースさんは胸を叩きました。
オラースさんはいい人みたいです。

「じゃあ、ホルモンは2頭分ください。その代わり肉は4頭分ギルドへ提供します。あと・・・角は記念に一揃いください。ボス牛の角は売ります。皮も2頭分ください。マントを作りたいです」

「おお、そうか。嬢ちゃんありがとよ。マント作るなら皮細工師を紹介するぞ」

結局オラースさんには、「星屑の鍋亭」さんと皮細工師さんへの紹介状を書いてもらいました。
あとで買い取り窓口で血塗れの牛を出しておかないと。

「嬢ちゃんたちは宿はどうするんだ?」

「・・・冒険者用の広場はどうだ?」

冒険者がよく集まる町には、宿に泊まらず専用の広場でテントを張って滞在する冒険者たちもいる。
ダンジョンや森に入って何日も町に帰らない冒険者も多いので、宿を取っていると無駄金を払うことになるから。
ここは、冒険者がよく集まるって聞いたから専用の広場があると思うんだけど・・・。

「うーん、あんまりお勧めしないな。広場はかなり広いところがあるが、ここに集まる冒険者は大抵が荒くれものたちでな。毎夜酒盛りしては騒ぎ暴れて喧嘩になる。子供連れや夫婦恋人の冒険者は宿を取ったほうがいい。・・・けどな」

チラッと私たちを見てオラースさんは、ガシガシと短い髪の毛を掻いてため息を吐いた。
冒険者が集まる町だが宿屋を利用する冒険者は一部のみで、他に短期滞在の旅人が来るわけでもないこの町には、宿屋を営む人は少ないらしい。

「正直、宿を取って泊る奴らは少ないから、お前さんたちの人数だと部屋はバラバラになるな。下手したら宿も別々になるかもしれん」

ええーっ!それは困る。
宿に泊まるのもうちの子たちは不満が溜まるのに、バラバラの宿に宿泊なんて!
まず、どうやって問題なくメンバー分けすんのよ・・・、絶対意見なんて纏まらないわよ。

「ああ、お前さんたち。魔獣馬を連れてるんだっけ?それで宿を探すのは・・・」

ええーっ!カヌレとブリュレもダメなの?
うぐぐぐぐっ、どうしようか・・・。
もう面倒だから、このままサン・ブルージュの町を通り過ぎてしまおうか・・・。

「あ、フォレストブラックブルの解体には1日かかるからな」

・・・今日の宿泊は決定ですね・・・。

森に出て野営でもいいけど、そんなことしたら不審者で目立つよね?
アルベールたちと顔を見合わせていると、ニコニコと黙って話を聞いていたカミーユさんがパンと手を叩いて言った。

「じゃあ、僕の家に招待するよ!部屋数もあるし、厩もあるし、使用人もいるから、好きに使っていいよ!」

・・・それって一番避けたい状況なんですけどぉぉぉぉ。

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