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第2章 主要人物として
第55話 「前夜」
しおりを挟む「あれ……俺……」
意識が覚醒する。
最初に目にしたのは、暗い空。
側には焚き火、燃える匂いがした。
「目、覚めたんだね。良かったよ」
「あれ……ラケル師匠」
温かそうな格好で、切り株の上にラケル師匠が座っていた。
俺が目覚めたことを確認すると、ホッと胸を撫で下ろしていた。
どうやら俺は、寝袋で寝かされていたらしい。
上着を三枚も着せられており、徹底的に温めてくれていたようだ。
真冬の空の下、適当に寝かされていたらきっと死んでいただろう。
「ここは何処なんですか?」
「『迷いの森』面積五十万平方キロメートル以上は及ぶ大森林だよ。学院からここまで移動すると数週間以上はかかるね」
「なんで……」
「それを君が一番分かっているはずだよ」
「……師匠、どうやって」
先ほど俺のこの身に起きた事象を、知っているかのような口ぶりのラケル師匠に聞いた。
「……それは言えないかな」
「どうして、なんですか? 教えてくれたっていいじゃないですか。ただでさえ、現状をハッキリと整理できていないんですよ俺。師匠が答えてくれなかったら……」
「まだ、その時ではないからね。たとえ愛弟子の頼みでも言うことができない。いつかは……答えてやるさ」
ラケル師匠が、先ほどの会話をどこまで聞いていたのかは分からない。
しかし、こうやって刺客が簡単には手出しできない場所に連れてきたということは、内容を理解しているからの判断だろう。
すなわち味方だ、ラケル師匠はいつだって俺の味方になってくれる。
誰よりも心強くて頼りになる人だ。
「今日はもう休んだまえ、あとは私が見張っておこう」
「……ごめんなさい」
いつでも頼りきりなのは辛い。
もう、面倒を見られるような子供ではないことを知ってもらいたかった。
それでも、どうやら俺はまだ甘えることしか出来ない子供らしい。
とっさに口から出てきたのが、謝罪だった。
「……私は、謝られるよりも感謝をされる方が嬉しいかな。だって言ったろ、私はいつでも君の味方だ。恥じることはない、寧ろビシバシ頼ってくれたまえ」
どれぐらい寝ていたかは分からない。
けどまだ眠り足りなく、ラケル師匠の言う通り二度寝することにした。
あれから、どれほど時間が経過しているのか、詳しいことは明日聞くことにしよう。
「師匠、ありがとうございます」
素直に感謝すると、ラケル師匠は本当に嬉しそうに微笑み返してくれた。
天使のような笑顔に癒されながら、寝袋に頭まで潜り込ませる。
今後の事も、明日考えることにしよう。
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