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6.夏季休暇
頭が回らないなりに色々考えていた私は、夏季休暇に入る前夜、両親にエマ様の調査結果を話した。
そして、もしかしたらライアン様との婚約は解消するかもしれない事も話した。
やはりというか、両親の耳にも噂は入っていたみたいで、はっきりわかって良かったと、話してくれて良かったと言ってくれた。
私の考えも何もわからず噂に振り回される事も無くて良かったと。
エマ様とラズベリー様とのお茶会から戻って来てから夏季休暇に入るまで、心ここに在らずといった風情の私に、家族はそれなりに心配してくれていたみたいだ。
お母様がいつもなら言うお小言を言わなくなり、兄は私の好きなスイーツを毎日買ってきてくれ、姉も私の好きなお茶を毎日入れてくれたり、弟や妹も学園が休みに入ってもあまり纏わり付いてこなかった。
何より驚いたのは、ケチなお父様が夏季休暇中のお小遣いを増額してくれた事だった。
まぁ、お父様からしたら、自分が持ってきた婚約話だった所為もあるからだろう。
元々、今年の夏季休暇は領地に行く予定だったから、気分転換には丁度良かったのかもしれない。
このままの状況でずるずると引き摺ったまま結婚するのも嫌なので、ライアン様と話がしたいと手紙を出していた。
だから、彼とは一度は顔を合わせる事になる。
その結果彼が何を考え何を思っていたのか、私達の婚約がどうなるかわからないけれどちゃんと答えが出るといいな。
そうは思っていたが、(悪い意味で)忘れられない記憶になるとは思わなかった。
△▽△▽△△▽△▽△▽△▽
夏季休暇に入る少し前ぐらいから、数こそ少ないものの魔獣の目撃情報があったらしい。
この世界では、世の中が乱れると魔獣が出没するという言い伝えがある。
そしてそれは国が滅びる前兆とも言われ、水神を奉っている国では神殿にある聖なる泉の水位が激減し、枯れてしまうのでは?という不安が広がりつつあり、風神を奉っている国では暴風が吹き荒れる日が増え、滅びの前兆ではないかという噂が流れ出したという。
私達が暮らすこの王国でも、王国の行く末を占った王家お抱えの占者の水晶玉に罅が入り粉々に砕け散ったという話が真しやかに囁かれていた。
幸いまだ魔獣の目撃情報は無いが、時間の問題だろうと言われている。
そして、学園の方も例年よりも何日か早く夏季休暇に入ることとなった。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
今日、城ではお父様たち辺境伯や王国軍の元帥位、将軍位に就いている者が緊急招集され、対策会議が開かれている。
私と一緒に領地へ行く予定だったお兄様が、一足先に領地へ行くと言うので予定を切り上げて私もついて行く事になった。
当初の予定では領地でのんびりする筈だったが、北部、南部、東部の辺境伯家の私設軍によって行われる合同訓練に十五才以上の者は参加を義務付けられた為、私もそれに参加する事になった。
そして、夏季休暇中にライアン様との婚約を継続するか、解消するかの話し合いをする予定もあり、私が合同訓練に向かうのは南部辺境伯領と決まった。
こんな時に…。と、思わなくもないが本格的に魔獣が出没するようになれば、魔獣騒動が収束するのが何時になるかわからない。
だから、その前にケリをつけてしまおうと考えての事だった。
その為、一刻も早く領地に向かわないといけないので、馬車ではなく馬を走らせている。
そして、来年結婚予定だったお姉様の結婚は、先に入籍だけを済ませ、事態が収束してから婚姻の儀を行う事になり、隣国の侯爵家へと既に輿入れしている。
延期の話も出ていたのだが、二人の強い意志によって双方の家から認められたのだった。
愛し愛されての結婚。
正直、羨ましくはある。
学園を卒業後に結婚する予定だった私だが、魔獣が出没するような事態になったのは却って良かったのかもしれない。
何よりこの時既に私の中では婚約解消すると決めていた。
ライアン様とラフレシア嬢…相思相愛の二人…。
確かに私はライアン様に一目惚れをした。そして今でも彼に対する恋愛感情はある。
だからと言って二人の邪魔をする気などない。
結婚していない今ならば辛くて悲しいけれどまだ身を引ける。
そうすればライアン様も本当に愛する人と結婚する事ができ幸せになれる。
そう思っていた。
だから、話し合いというよりは自分の気持ちと二人の関係にケリを付ける為に彼と話しをするつもりだったのだ。
婚約解消に向けて…。
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