悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。

金田のん

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第3章 入団までの1年間(2)、帝国の陰謀とグラナダ迷宮

61:勇者は頭痛が止まらない

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その日の夕方、ベルタが帰ってこないのを不思議に思いながらも迷宮都市<アッシド>にある拠点の一軒家のソファでオレ、仲河光輝はまどろんでいた。

・・・大量の猫たちに囲まれながら。

そうして、しばらくするとノックもせずに、扉がいきなり開いた。
確かめるまでもない。こんなことをするのは、1人しかいない・・・・・。

扉に目線を向けるとやはり、オレの相棒兼、監視役の猫狂い<ベルタ>だった。

オレに・・・・・・・いや、オレの周りにいる猫に向けて突進してくるベルタ。いつも通りの光景に、若干の安堵が心に広がる。


(10時間もいないから何かあったのかと思ったが、何も問題なさそうだな・・・・・・)


そこでふと気づく。ベルタ以外にもう一人気配があることに・・・・扉付近に立つその人物を見て・・・オレは固まる・・・・・。


そりゃそうだろう・・・。


(なんでよりによって、ここに<フレデリック・フランシス>のふりをした、あの少女がいる・・・!!!!)


頭痛が止まらない・・・・。
思わず、右手でこめかみに手を伸ばし、息を吐く。

何だかあっちも呆然としている気がするが・・・・オレはあの子と対面する時、覆面をかぶっていた。

オレが覆面の男だと気づかれていないはずだ・・・・たぶん・・・おそらく・・・

・・・・・・そう・・・・・・・・・・・・・・きっと。


「えーと・・・はじめまして・・・かな?
オレの名前はマクシム。彼女と一緒に住んでいるんだけど・・・・あなたは、彼女の・・・・・友達・・・・かな?」


とりあえず様子見で、はじめて会った風を装い、少女に声をかける。
少女がオレに殺気をむけるか慎重に気配を探りながら・・・・・。

少女は昨日も前回もオレに・・・


「私の半径1㎞以内に入ったら、問答無用で消し炭にする」


・・・と言い放った。つまり、オレがもし覆面男であるとバレていた場合、この瞬間に攻撃を仕掛けられるはずだ。
少女にそうと悟られないように、すぐに転移魔法を発動できるよう魔素を集中させた。

しかし、やはり少女はオレが覆面男だと気づいていないらしい、オレに可愛らしい笑顔を向けた。

・・・・・瞬間、安堵したと同時に、少し見惚れてしまった。

最初会ったとき、この世界には妖精がいるのかと思うほどの美貌だったのだ。
しかもこちらの世界は日本人より、成長が早い。
中学生くらいの年齢にも関わらず、高校生・・・・・・・下手すれば同い年くらいに見える。

見惚れるのが仕方ない・・・・・・・なんてことは・・・・ない!


(断じて、浮気ではないからな、理奈!オレには理奈だけだからな)


・・・思わず、オレは心の中で、元の世界に置いてきた最愛の彼女に言い訳する。

ちなみに名乗った<マクシム>という名は、この世界でよく使われている男性の名前。
ルナリア帝国帝王が、わざわざ用意したオレの身分証に書かれている<偽名>だ。
本名の光輝は珍しい名前だから、万が一<勇者>であると感づかれないよう、「使用禁止」を<命令>されているのだ。

少女は微笑みながら、オレに話しかけてきた。


「ああ、はじめましてだ。私は、フレド。
今日、彼女から迷宮探索の指名依頼を受けたF級冒険者だ。

あなたが彼女の言っていた、一緒に迷宮探索をする<強い人>で合っているかな?
明日の迷宮探索では、よろしく」


・・・・・情報量が凄まじい。

この少女は、おそらく<フレデリック・フランシス>の妹で、乙女ゲームの中で登場した悪役令嬢<レティシア・フランシス>だろう。

そしてオレのせいか、それとも時間軸の違いか、乙女ゲームとは違い、いまはなぜか兄であり、オレたちの暗殺対象ターゲットの一人公爵子息<フレデリック・フランシス>のふりをして、さらにもう一人の暗殺対象ターゲットのA級冒険者<アルフレッド・ブラッドレイ>とこの迷宮都市に来ている・・・・。

だが、さらに公爵子息であることを隠し、<フレド>というF級冒険者になりすましたうえで、<ベルタ>の指名依頼を受けたらしい。

しかも、その依頼内容は、オレと一緒に・・・・・迷宮探索・・・・・・・・。


(ありえない・・・・・)


なにがなんだか分からないが、この状況はひどいだろ・・・・・。

ストレスから、無意識にオレの眉が一瞬ぴくっとあがる。

とりあえず、<ベルタ>はなにがしたいんだ・・・・暗殺対象の<フレデリック・フランシス>を固有魔法の射程範囲に入れるため、一目見に行くと行って・・・・・

どうしてこうなった・・・・・・・。


「ギニャーッ」


オレ達のうしろで無理矢理捕まえた猫の一匹に叫ばれながら、頬を引っ掻かれたベルタ。

嬉しそうに頬を緩め、この混とんとした状況を何とも思っていなさそうな<猫狂い>に軽い殺意を覚えながら、オレは詳しい話を聞くため、少女を客間に案内するのだった。
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