悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。

金田のん

文字の大きさ
102 / 103
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い

101:チェスターは、勇者に興味がない(3)

しおりを挟む
ルナリア帝国第9兵団・3番部隊隊長の私・<チェスター・バシュラール>は、グラナダ迷宮11階層で気配を消しつつ、約1か月前の出来事を思い出していた。


*********

「ばかな・・・」


1か月前・・・・・私は目の前で起きた信じられない出来事に、そう思わず声をもらしていた。

それは、<常陽の森>でレイ皇国の天才児<フレデリック・フランシス>を暗殺する任務中の出来事だった。

フレデリックを<勇者>に急襲させるも、敵陣営に事前に察知されたようで殺すには至らず、勇者が反撃を受けたあとのこと。
もちろん反撃を受けるのも、私の想定内だった。

だから、その結果を見る前から私は走り出していたし、すぐさま勇者に反撃したと思われる<護衛の男>を倒すべく、その男に短剣で攻撃を加えていたのだが・・・・。

どうやらその読み自体が・・・・・・・間違いだった、と気づいたのだ。

私が<護衛の男>と剣を打ち合うのを横目で伺うと、間違えの原因であるその女・・・は・・・・あろうことか、すさまじい威力の身体強化魔法を私の目の前で披露したのだ。


(この私でもあの速さで移動するのは難しい・・・・・・ありえん・・・・!!)


女は、1秒もかからず、200M以上離れた女の兄である<フレデリック・フランシス>に駆け寄り、勇者と対峙した。
思わず夢中でその女・・・・<レティシア・フランシス>の姿を目で追ってしまう・・・・。取るに足らないはずだった存在が、急に敵陣営の戦力になったのだ、それがどのくらいの実力か見極める必要があった。

だが、それが私に隙を生んだのだろう。


ゴツッッ・・・

「・・・ッ!!!?」


私としたことが目の前から注意をそらしすぎたようで、斬り結んでいた<護衛の男>からみぞおちに拳の一撃をくらった。


(くっ、汚い手が私の服に・・・)


護衛の男は普通の冒険者や兵と比べればできる方なのだろう。だが、もちろんルナリア帝国で影をまとめている私の敵などではない。短剣を落としてしまったが、殴られても倒れるほどでもなく、ダメージはほとんどないに等しい。

・・・・しかし、私を殴ったその手は・・・・・先ほどまで魔獣・<ファングドッグ>を解体していた汚いものだ。

ふつふつとした怒りがわいてくる。任務中だから多少汚れるのは仕方ない・・・仕方ないのだが、任務中でも、ここまで私が汚れたのは久しぶりであった。


(この男・・・フレデリックともども早く殺してやる。今日は心置きなく風呂に入らねば気が済まん・・・・・!)


私がいまこの時を思い返し、敗因をあげるとしたら、<レティシア・フランシス>という想定外の戦力を目の前で見たにもかかわらず、彼女が強くても<フレデリック・フランシス>以上ではないだろうと侮ったことだろう。
簡単な任務という先入観がまだ私の中にあったのだ。

目の前の護衛の男の剣をかわし、地面に落ちた汚い剣ではなく、懐に入れている予備の短剣でその腹に一撃を入れる。

くずれ落ちる護衛の男にさらに剣を深く突き刺すと、意識を失ったようで崩れおちた。そのまま頸動脈をかき斬ってもいいが、放っておいても一刻も経たずに死ぬだろう。今の優先事項はこの男ではない。<フレデリック・フランシス>の暗殺だ。

そう思い、勇者が対峙しているであろう<フレデリック・フランシス>の方向に足を向ける。
そうして駆けだした私の目に映しだされた光景は、女・・・・・・<レティシア・フランシス>に右腕をねじ伏せられ、首元に剣をつきつけられている勇者の姿であった。


(・・・勇者が死ぬとさすがに任務上、まずいな)


条件反射で部下を助ける時のように、勇者を助けようと即座に判断を下すが・・・・次の瞬間に、そのおかしさに気付く。

そう、私が助けようとしているのは<勇者・・>なのだ。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

処理中です...