もみじの黄泉路

「──みつけた」

駅のホームに落ちた少年を助けるため、咄嗟に線路へ飛び降りた椛。
迫り来る電車の光に、自分は助からないと悟り、目を閉じたその瞬間──男の声が響き、誰かに手を引かれた。

次に目を開けたとき、椛は見知らぬ山の中に立っていた。
山道を彷徨い、やがて開けた丘に出る。そこに広がっていたのは、小さな頃から夢に見続けてきた景色と同じだった。

なぜ異世界に来たのか。
誰に呼ばれたのか。
右も左もわからぬまま戸惑う椛に、差し伸べられる一つの手があった。

彼の名は艮(うしとら)。鬼門を護る神であり、黄泉へ迷える魂を送る「黄泉送り」を生業とする神主だった。
椛は艮の住む神社で身を寄せながら、彼と共に現世に未練を残した魂や妖と向き合っていく。

しかし、椛の魂の奥底には、艮さえ忘れてしまった“ある記憶”が眠っていた──。

神と訳あり少女が紡ぐ、切なくも温かい異世界転移譚。

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