捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。

亜綺羅もも

文字の大きさ
11 / 15

11

しおりを挟む
 ニコライド様の屋敷へとやって来ていた私は微かに震えていた。
 どんな用件なのか分からず、何を言われるのかが想定できず怖い。

 するとレオ様が私の手を優しく握ってくれる。

「僕が一緒にいるから大丈夫だ。何があろうと僕が君を守ってみせる」
「レオ様……ありがとうございます」
「おい! 貴様ら!」

 レオ様の優しさに安らぎを感じていたその時、ニコライド様が憤怒の様子でこちらに向かってきた。
 玄関ホールに響きわたるニコライド様の怒声に私は身体を縮こませる。

「何故手を握っているんだ!」
「何故と言われても……僕たちは婚約者なので」
「ふん。そうらしいな。だがそれは今日までの話だ。アニエル。この男との婚約を破棄してもう一度俺と婚約しろ」
「は、はぁ?」
「いいな。命令だ」
「い、いや……」

 この方はいきなり何を言っているのだろう。
 レオ様との婚約を破棄して……ニコライド様と婚約しろ?
 私はパニック状態に陥り、うっすらと涙を浮かべる。
 そんなのは……絶対に嫌。
 ニコライド様との婚約よりも、レオ様と別れるだなんて何が何でも嫌。

「あの、ニコライド様……何をおっしゃっているのですか? 僕はアニエルをあなたに渡すつもりもありませんし、別れるつもりもありませんよ」
「お前の意見など聞いていない。俺がそうしろと言ったらそうしろ。これは命令であり決定事項なのだからな。分かったな、アニエル」」
「…………」
「返事はどうした!?」

 私はビクッと身体を振るわせて、レオ様の背中に隠れる。
 高圧的で命令を下すその姿。
 何も変わっていない。
 やっとこの人の呪縛から解き放たれたと考えていたのに……なんで今更こんなことを?

「レオ!」
「……レイチェル?」

 今度はレイチェル様が玄関先から登場した。
 もう何が起こっているのか分からず、頭がグチャグチャになる。

「あんたの家に行ったら今日ここに来るって聞いて来たんだけど……ってそれよりあんた、その女と婚約したんですって?」
「あ、ああ……そうだけど、それがどうかしたのか?」
「だったら今すぐに別れなさい。もう一度私と婚約するわよ。いいわね?」
「……君は何を言っているんだ? あんな一方的に僕を振っておいて、今更なんだ?」
「あんた、そんな小さいこと気にする男だったかしら? 違うわよね? いつでも私の言う通りにしてきたじゃない。だから今回も私の言うことを聞いておけばいいのよ。分かった?」

 呆れ返るレオ様は額に手を当て嘆息している。
 その様子を見たレイチェル様はカチンときたのか、彼に向かって怒鳴り付けた

「何よ!? 私がもう一度婚約してやるって言ってのだから、素直に応じなさい!」
「……それはできないよ、レイチェル」
「はぁ!?」

 場の空気がピリピリと肌に刺さるように痛い。
 別れなければ絶対に許さないという二人の態度……私たち、どうなってしまうの?
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

ソロキャンする武装系女子ですが婚約破棄されたので傷心の旅に出たら——?

ルーシャオ
恋愛
ソロキャンする武装系女子ですが婚約破棄されたので傷心の旅に出たら——? モーリン子爵家令嬢イグレーヌは、双子の姉アヴリーヌにおねだりされて婚約者を譲り渡す羽目に。すっかり姉と婚約者、それに父親に呆れてイグレーヌは別荘で静養中の母のもとへ一人旅をすることにした。ところが途中、武器を受け取りに立ち寄った騎士領で騎士ブルックナーから騎士見習い二人を同行させて欲しいと頼まれる。 そのころ、イグレーヌの従姉妹であり友人のド・ベレト公女マリアンはイグレーヌの扱いに憤慨し、アヴリーヌと婚約者へとある謀略を仕掛ける。そして、宮廷舞踏会でしっかりと謀略の種は花開くことに——。

悪役令嬢の私、計画通り追放されました ~無能な婚約者と傾国の未来を捨てて、隣国で大商人になります~

希羽
恋愛
​「ええ、喜んで国を去りましょう。――全て、私の計算通りですわ」 ​才色兼備と謳われた公爵令嬢セラフィーナは、卒業パーティーの場で、婚約者である王子から婚約破棄を突きつけられる。聖女を虐げた「悪役令嬢」として、満座の中で断罪される彼女。 ​しかし、その顔に悲壮感はない。むしろ、彼女は内心でほくそ笑んでいた――『計画通り』と。 ​無能な婚約者と、沈みゆく国の未来をとうに見限っていた彼女にとって、自ら悪役の汚名を着て国を追われることこそが、完璧なシナリオだったのだ。 ​莫大な手切れ金を手に、自由都市で商人『セーラ』として第二の人生を歩み始めた彼女。その類まれなる才覚は、やがて大陸の経済を揺るがすほどの渦を巻き起こしていく。 ​一方、有能な彼女を失った祖国は坂道を転がるように没落。愚かな元婚約者たちが、彼女の真価に気づき後悔した時、物語は最高のカタルシスを迎える――。

婚約破棄したくせに「僕につきまとうな!」とほざきながらストーカーするのやめて?

百谷シカ
恋愛
「うぅーん……なんか……うん、……君、違うんだよね」 「はっ!?」 意味不明な理由で婚約破棄をぶちかましたディディエ伯爵令息アンリ・ヴァイヤン。 そんな奴はこっちから願い下げよ。 だって、結婚したって意味不明な言掛りが頻発するんでしょ? 「付き合うだけ時間の無駄よ」 黒歴史と割り切って、私は社交界に返り咲いた。 「君に惚れた。フランシーヌ、俺の妻になってくれ」 「はい。喜んで」 すぐに新たな婚約が決まった。 フェドー伯爵令息ロイク・オドラン。 そして、私たちはサヴィニャック伯爵家の晩餐会に参加した。 するとそこには…… 「おい、君! 僕につきまとうの、やめてくれないかッ!?」 「えっ!?」 元婚約者もいた。 「僕に会うために来たんだろう? そういうの迷惑だ。帰ってくれ」 「いや……」 「もう君とは終わったんだ! 僕を解放してくれ!!」 「……」 えっと、黒歴史として封印するくらい、忌み嫌ってますけど? そういう勘違い、やめてくれます? ========================== (他「エブリスタ」様に投稿)

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

reva
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

水川サキ
恋愛
家族にも婚約者にも捨てられた。 心のよりどころは絵だけ。 それなのに、利き手を壊され描けなくなった。 すべてを失った私は―― ※他サイトに掲載

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

婚約を解消してくれないと、毒を飲んで死ぬ? どうぞご自由に

柚木ゆず
恋愛
 ※7月25日、本編完結いたしました。後日、補完編と番外編の投稿を予定しております。  伯爵令嬢ソフィアの幼馴染である、ソフィアの婚約者イーサンと伯爵令嬢アヴリーヌ。二人はソフィアに内緒で恋仲となっており、最愛の人と結婚できるように今の関係を解消したいと考えていました。  ですがこの婚約は少々特殊な意味を持つものとなっており、解消するにはソフィアの協力が必要不可欠。ソフィアが関係の解消を快諾し、幼馴染三人で両家の当主に訴えなければ実現できないものでした。  そしてそんなソフィアは『家の都合』を優先するため、素直に力を貸してくれはしないと考えていました。  そこで二人は毒を用意し、一緒になれないなら飲んで死ぬとソフィアに宣言。大切な幼馴染が死ぬのは嫌だから、必ず言うことを聞く――。と二人はほくそ笑んでいましたが、そんなイーサンとアヴリーヌに返ってきたのは予想外の言葉でした。 「そう。どうぞご自由に」

【短編】王太子の婚約破棄で逆ところてん式に弾き出された令嬢は腹黒公爵様の掌の上

あまぞらりゅう
恋愛
王太子の王位継承権剥奪によって、第二王子が王太子に繰り上がった。 王太子の元々の婚約者は残留で、第二王子の婚約者だったディアナ伯爵令嬢は弾き出されてしまう。 そんな彼女に犬猿の仲のアルベルト公爵が求婚してきて……!? ★他サイト様にも投稿しています!

処理中です...