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#4 残酷な現実と救世主

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 まずこの国は、長い歴史を有するマッカローン王国といって、即位した当初より名君と称えられてきた現国王陛下がここ半年ほど体調を崩し病床に伏せっているらしい。

 それで我が儘な王太子が権力を振りかざし、自分の妃を娶るのに、自分の理想とする女性を召喚させていて、私が召喚されたのだという。

 召喚された女性は私を含め三人存在するらしいが、私はニ人目で、そのあと召喚された女性が王太子の妃になることが決まったらしい。

 驚くことに、現在『召喚魔法』は禁じられており、国の有事にのみ使用することと定められているらしく。

 その抜け道として、国の有事に備えて、驚異的な力を有する聖女を召喚させるという名目で、『召喚の儀』とやらが執り行われていたというから驚きだ。

 よって、私のように、王太子に無用だと言い渡された聖女は存在自体が厄介なので、一人目は他国に売り飛ばされ、私は追放されたらしい。

 驚異的な力を持ってすればどうとでもなりそうだが、その力も三者三様で人により能力も使い方も異なる上に、ここぞというときにしか使えないらしいので無用の長物でしかないのだそうだ。

 けれど、聖女には基本、『治癒魔法』という能力が備わっているらしく。

 聖女と契りを結んだ者にもその治癒魔法とやらの能力が備わる。

 ……という、まことしやかな言い伝えにより、王都の豪商らが他国や貴族に高く売り飛ばそうと、こぞって大金を叩き追放された聖女の行方を探っているのだという。

 そして最後に、私がどうしてこの精霊の森に住むルーカスさんの家にいるのかというと。

 男たちに追われて逃げ惑っているうちに王都からこの精霊の森に辿り着き力尽きて行き倒れていたのを、このルーカスさんが見つけて助けてくれたのだそう。

 精霊の森には、邪妖精や魔物が棲まうということで、人々から恐れられているらしいので、深追いするような命知らずな者はいなかったようだ。

 ルーカスさんの話を聞き終え、召喚された挙げ句に、男たちの野心のために追われる身となってしまった私は、一体この先、どうなってしまうのだろうかと酷く落胆していた。

 そんな私に向けて、心優しいルーカスさんは、やっぱり和やかな笑顔を絶やすことなく、優しい言葉をかけてくれていた。

 そしてその様子をずっと見守ってくれていた小妖精のフェアリー(昆虫の羽を持つ人形のような美しい女性)とピクシー(小さな男の人)は相変わらず楽しそうだ。

「この通り、小妖精はおりますが、気まぐれですので。女手がなくて困っておりますじゃ。聖女様さえよければ、みすぼらしい老いぼれを助けると思って、この樵めのお力になって頂けると有り難いのですが。なーに、ただの話し相手になってくれるだけでよいので、気に病むことはございません」

「ありがとうございます~!」

  遠慮していても行く当てもないため、ルーカスさんのご厚意に甘えることにした。

  夜の帳が降りた神秘的な雰囲気漂う精霊の森にあるルーカスさんの家には、小妖精のフェアリーとピクシーが、

「キャー、素敵~!」
「聖女様と一緒に暮らせるなんてわくわくする~!」

という無邪気にはしゃぐ声と心優しいルーカスさんに泣きながらお礼を繰り返す私の声らで賑わいでいたのだった。

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