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はじまりの夜 ♯1 ✱微
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海辺のチャペルで結婚式を挙げたあとは、披露宴会場となる近くのリゾートホテルへと場所を移した。
このリゾートホテルは、祖父母の代からの付き合いのある、私たち家族にとって思い出深い場所だ。
ホテルのバンケットルームで、両家の親族はもちろん、友人をはじめ大学の恩師に同期や同僚らに祝福してもらった。
新婚旅行はシンガポールでの生活が落ち着いてからにしようということになっている。
シンガポールへ発つのは四日後。
それまではこのリゾートホテルでゆっく過ごす予定だ。
なので披露宴が終わったら両親を始め友人や同僚らともうしばらくは会えないのだと思うと、少しセンチな気持ちにもなった。
けどシンガポールでの生活に慣れるまでは、光石総合病院に籍を置く内科医としてリモート診療をすることになっている。
そのため彩とも同僚ともこれでお別れという訳ではない。
そういう点で言うと、一からスタートを切ることになる窪塚の方が不安な気持ちでいるのかもしれない。
窪塚はそんな心情を微塵も見せないが、これからは夫婦として支えていかないといけないんだし頑張らないと。
私は改めて心に固く誓ったのだった。
✻✻✻
披露宴が終わりゲストを見送った窪塚と私は、スイートルームの窓から月夜に照らされた夜の海を眺めているところだ。
スイートルームのラグジュアリーな雰囲気は、非日常を演出してくれていた。
シャワーを浴び終えバスローブ姿の私と窪塚は、窓辺に設えてあるふたりがけのアンティーク調のカウチで寄り添い合っている。
耳に心地いい潮騒をBGMに眺める大海原は穏やかに凪いでいる。
けれども夫婦になった窪塚と一緒に過ごすこれからの夜を思うと、私の鼓動はドキドキと高鳴っていた。
それもそのはず。窪塚とは結婚とシンガポール行きに向けての準備があったので、二ヶ月ほどこういうことから遠ざかっていたせいだ。
そこにぶっきらぼうに放たれた窪塚の声が届いた。
「なんか、照れるな?」
その声で、窪塚も同じ心境なんだと思うと自然と緊張感が解けていく。
そのせいか素直な言葉がすんなりと口から出ていた。
「そうだね。でも、やっと圭と二人きりになれて嬉しい」
窪塚の逞しい胸にそうっと頬を擦り寄せると、ふっと優しい笑みを零した気配がした。
かと思えばすぐに私の肩をしっかりと引き寄せ、ぎゅうっと抱きしめてくれる。
そしてすかさず同じ想いでいると教えてくれる。
「俺も。こんなに綺麗な鈴のこと独り占めできてメチャクチャ嬉しい」
さっきまで妙に緊張していたのが嘘だったかのように、甘やかな空気がふたりを包み込む。
「鈴、愛してる」
「私も、愛してる」
互いに愛を囁きあい、互いに引き寄せられるようにして甘やかな口づけを交わしていた。
はじめは互いの唇の感触を味わうようにそうっと優しく。
そのうち互いの体温を確かめあうようにして、口づけが徐々に深まっていった。
「んっ……ふぅ……ンッ」
夢中になって互いの咥内を熱い舌で探るように歯列をなぞりあい、口蓋を撫でられ、しだいに身体からくたりと力が抜けていく。
それを窪塚が逞しい腕で腰を引き寄せてしっかりと支えてくれていた。
いつしか窪塚の熱くてねっとりとした舌でおろそかになっていた私の舌は貪るようにして搦め捕られてしまっている。
窪塚の腕の中ですべてを委ねるようにして身をもたげ、窪塚との甘やかなキスに酔いしれていた。
まだキスだけだというのに身体の中心が熱を帯び、足の裂け目の最奥がズクズクと切ないほどに疼いてしまう。
その感覚に、羞恥が込み上げる。
無意識に両膝を擦り合わせてしまうのだった。
その様をいち早く察知したのだろう。
「こーら、隠すな」
「////ーーッ!?」
キスを中断した窪塚が私のおでこにコツンと自身の額を重ねつつ咎めてくる。
けれど言い返すことなどできなかった。
なぜかというと。情事限定の意地悪な表情に途轍もない色香を滲ませていて、魅入られたように動けなくなってしまったから。
その間にも私の腰と後頭部を支えてくれていたはずの手は、いつしかバスローブの裾を割って太股の表皮をそうっと撫で上げていた。
身体はこの先への期待感からかゾクゾクと泡立っていく。
窪塚の節くれ立った指が、辿り着いた足の裂け目の秘裂を下着の上から探るように撫で上げる。
「キスだけで下着まで濡らすなんて、俺の奥さんはずいぶんエロいんだな」
「////……ち、ちがっ」
耳元に意地の悪い声で囁かれ、カアッと全身が熱く滾っていく。
思わずムッとして、微かにぼやけてしまっている目でキッと睨むと。
「そんな怒るなよ。可愛いって意味なんだからさぁ。それに、俺、ずっと鈴に触れられなかったから余裕なくて悪い。でも、鈴が嫌だって言うなら、必死に抑えるつもりだから安心して欲しい。やっぱ、優しく抱かれたいよな? 初夜だしな、そうだよな」
すぐに宥めてきた窪塚からは、意外な言葉が返ってきた。
さっきまでいつものドSっぷりを遺憾なく発揮していたのが夢か幻かのような豹変ぶりだ。
変わり身の速さにも驚いたが、そんなことを気にしていたなんて夢にも思わなかった。
そういえば、プロポーズされたあの夜、どうしてこんなに苛められなきゃいけないの。そう思ってしまったんだっけ。
まさかあの夜から、ずっとそのことを気にしていたってこと?
いや、でもあの後確か、私は自分がドMだってことを確信して、ドSである窪塚との相性がピッタリだということに喜んだんだった。
でも、そのことは口にはしていない。
ということは、あのときの私の言葉のせいだ。
なら窪塚のことを一刻も早く安心させてあげないと。
私の心は、そんな想いで埋め尽くされていた。
「もう、ヤダ。圭ってばそんなこと気にしてたんだ。別に、そんなのいいのに。私はどんな圭のことも好きだよ。それに私、ドMみたいだし。だから、夫婦揃って相性ピッタリで問題なしってこと。わかった?」
このリゾートホテルは、祖父母の代からの付き合いのある、私たち家族にとって思い出深い場所だ。
ホテルのバンケットルームで、両家の親族はもちろん、友人をはじめ大学の恩師に同期や同僚らに祝福してもらった。
新婚旅行はシンガポールでの生活が落ち着いてからにしようということになっている。
シンガポールへ発つのは四日後。
それまではこのリゾートホテルでゆっく過ごす予定だ。
なので披露宴が終わったら両親を始め友人や同僚らともうしばらくは会えないのだと思うと、少しセンチな気持ちにもなった。
けどシンガポールでの生活に慣れるまでは、光石総合病院に籍を置く内科医としてリモート診療をすることになっている。
そのため彩とも同僚ともこれでお別れという訳ではない。
そういう点で言うと、一からスタートを切ることになる窪塚の方が不安な気持ちでいるのかもしれない。
窪塚はそんな心情を微塵も見せないが、これからは夫婦として支えていかないといけないんだし頑張らないと。
私は改めて心に固く誓ったのだった。
✻✻✻
披露宴が終わりゲストを見送った窪塚と私は、スイートルームの窓から月夜に照らされた夜の海を眺めているところだ。
スイートルームのラグジュアリーな雰囲気は、非日常を演出してくれていた。
シャワーを浴び終えバスローブ姿の私と窪塚は、窓辺に設えてあるふたりがけのアンティーク調のカウチで寄り添い合っている。
耳に心地いい潮騒をBGMに眺める大海原は穏やかに凪いでいる。
けれども夫婦になった窪塚と一緒に過ごすこれからの夜を思うと、私の鼓動はドキドキと高鳴っていた。
それもそのはず。窪塚とは結婚とシンガポール行きに向けての準備があったので、二ヶ月ほどこういうことから遠ざかっていたせいだ。
そこにぶっきらぼうに放たれた窪塚の声が届いた。
「なんか、照れるな?」
その声で、窪塚も同じ心境なんだと思うと自然と緊張感が解けていく。
そのせいか素直な言葉がすんなりと口から出ていた。
「そうだね。でも、やっと圭と二人きりになれて嬉しい」
窪塚の逞しい胸にそうっと頬を擦り寄せると、ふっと優しい笑みを零した気配がした。
かと思えばすぐに私の肩をしっかりと引き寄せ、ぎゅうっと抱きしめてくれる。
そしてすかさず同じ想いでいると教えてくれる。
「俺も。こんなに綺麗な鈴のこと独り占めできてメチャクチャ嬉しい」
さっきまで妙に緊張していたのが嘘だったかのように、甘やかな空気がふたりを包み込む。
「鈴、愛してる」
「私も、愛してる」
互いに愛を囁きあい、互いに引き寄せられるようにして甘やかな口づけを交わしていた。
はじめは互いの唇の感触を味わうようにそうっと優しく。
そのうち互いの体温を確かめあうようにして、口づけが徐々に深まっていった。
「んっ……ふぅ……ンッ」
夢中になって互いの咥内を熱い舌で探るように歯列をなぞりあい、口蓋を撫でられ、しだいに身体からくたりと力が抜けていく。
それを窪塚が逞しい腕で腰を引き寄せてしっかりと支えてくれていた。
いつしか窪塚の熱くてねっとりとした舌でおろそかになっていた私の舌は貪るようにして搦め捕られてしまっている。
窪塚の腕の中ですべてを委ねるようにして身をもたげ、窪塚との甘やかなキスに酔いしれていた。
まだキスだけだというのに身体の中心が熱を帯び、足の裂け目の最奥がズクズクと切ないほどに疼いてしまう。
その感覚に、羞恥が込み上げる。
無意識に両膝を擦り合わせてしまうのだった。
その様をいち早く察知したのだろう。
「こーら、隠すな」
「////ーーッ!?」
キスを中断した窪塚が私のおでこにコツンと自身の額を重ねつつ咎めてくる。
けれど言い返すことなどできなかった。
なぜかというと。情事限定の意地悪な表情に途轍もない色香を滲ませていて、魅入られたように動けなくなってしまったから。
その間にも私の腰と後頭部を支えてくれていたはずの手は、いつしかバスローブの裾を割って太股の表皮をそうっと撫で上げていた。
身体はこの先への期待感からかゾクゾクと泡立っていく。
窪塚の節くれ立った指が、辿り着いた足の裂け目の秘裂を下着の上から探るように撫で上げる。
「キスだけで下着まで濡らすなんて、俺の奥さんはずいぶんエロいんだな」
「////……ち、ちがっ」
耳元に意地の悪い声で囁かれ、カアッと全身が熱く滾っていく。
思わずムッとして、微かにぼやけてしまっている目でキッと睨むと。
「そんな怒るなよ。可愛いって意味なんだからさぁ。それに、俺、ずっと鈴に触れられなかったから余裕なくて悪い。でも、鈴が嫌だって言うなら、必死に抑えるつもりだから安心して欲しい。やっぱ、優しく抱かれたいよな? 初夜だしな、そうだよな」
すぐに宥めてきた窪塚からは、意外な言葉が返ってきた。
さっきまでいつものドSっぷりを遺憾なく発揮していたのが夢か幻かのような豹変ぶりだ。
変わり身の速さにも驚いたが、そんなことを気にしていたなんて夢にも思わなかった。
そういえば、プロポーズされたあの夜、どうしてこんなに苛められなきゃいけないの。そう思ってしまったんだっけ。
まさかあの夜から、ずっとそのことを気にしていたってこと?
いや、でもあの後確か、私は自分がドMだってことを確信して、ドSである窪塚との相性がピッタリだということに喜んだんだった。
でも、そのことは口にはしていない。
ということは、あのときの私の言葉のせいだ。
なら窪塚のことを一刻も早く安心させてあげないと。
私の心は、そんな想いで埋め尽くされていた。
「もう、ヤダ。圭ってばそんなこと気にしてたんだ。別に、そんなのいいのに。私はどんな圭のことも好きだよ。それに私、ドMみたいだし。だから、夫婦揃って相性ピッタリで問題なしってこと。わかった?」
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