初恋のつづき、していいですか? 〜未練しかない幼馴染へ〜

ムラサキ

文字の大きさ
2 / 11

ラブレター

しおりを挟む
 雫と尚美はリビングであるアルバムを広げていた。中の写真には、振袖姿の雫が写っている。前撮り写真だ。

「もう二年経つんだね~。早いな~。あんたちょっと太った?」
「太ったんじゃなくて、この時が痩せてたの。」
「ふーん…。あー…。蓮に会えるからとか言ってこの年はダイエットしてたもんね。」
「そう。」

そう。成人式の年、雫は1年がかりの自分磨きをしていた。毎夕、大学から直帰しランニング。筋トレを欠かさず…いや、まあ一日くらいはサボったけど、とにかく普段では考えられないくらい『美』に勤しんでいた。悩みの肌荒れも遂に本気を出し、美容皮膚科へ。貯めたバイト代が風のように飛んでいったが、『美』のためには、否、蓮のためならば惜しむことはなかった。
 尚美はもう一冊のアルバムを取り出す。それは成人式のアルバムだ。

「おー、みんな大きくなったんだねぇ~。知らない子も多いけど。」
「みんな、大人っぽくなってて焦った。綺麗な子ばっかなんだもん…。」
「そういう私の娘も負けてないと思うんだけどな~。」
「親フィルターかかってるだけだと思うんよな~~~。」

尚美はページを次々とめくっていった。

「あれ、蓮と写ってるじゃん。…ぶっ!、あんたなんでこんなお地蔵さんみたいな顔してんの。悟り開いてんじゃん!」
「悟り開くのはお地蔵さんじゃなくて、『仏』!………あー、これね~。」

 そこに写っていたのはお地蔵さんと…あぁ…雫と迅と蓮。そして心愛ちゃん。この心愛ちゃん。雫にとっては本当に因縁の相手で。正直顔をも見たくないという感じ。なんでかって?それは中学一年生の頃に遡る。

ーーーーーー

 中学一年生の頃の雫は園芸部に入っていた。理由は小学校から仲の良かった未来ちゃんが園芸部に入ったから。だが、ここの園芸部に入ったのは未来ちゃんだけではなかった。まさかの蓮も入部したのだ。そのことを知ったのは部活動が本格的に始まってからだった。
 水やりは当番制。二人一組の組み合わせを一ヶ月ごとに回していた。一番最初に雫のペアになったのが他校区の小学校出身の心愛ちゃんだった。心愛ちゃんはとってもオシャレさん。誰にでも声をかけてくれる気さくな女の子で、入学して間も無く男子生徒からモテ始めていた。その反対、雫はオシャレに無頓着。お年頃の雫は特に男受けしそうなものがとにかく嫌いだった。いわゆるひねくれ女子だ。

「雫ちゃん、よろしくね。」
「うん。よろしく~。」

 二人が打ち解けたのはその水やり当番が被ってからだった。打ち解けられたのは他でもない、心愛ちゃんのコミュニケーションスキル。部活の中では雫にとって未来ちゃんの次に名前が挙げられるほどの仲になっていた。
 ある休日。園芸部の一年女子で食事会をしていた。そして話題になったのはまさかの雫と蓮の話。

「ねね!雫ちゃんって蓮くんにラブレター書いたの?」
「ぶっ!!!?え!!??なんでそれ知ってんの!?」

ラブレターの話。追って説明をしますが、実は雫、小学校の卒業式の次の日に蓮にラブレターを書いて送っていた。そのことだけ今は頭に入れといてくださいね。
 飲み物を飲んでいた雫にぶっ込んだのは心愛ちゃんだった。心愛ちゃんの大きな声にその場の全員が雫に目を向ける。心愛ちゃんは悪気はなさそうにキラキラと輝いている瞳で雫を見つめていた。未来ちゃんはその様子を心配そうに見ていた。

「う、うん。まぁ…。振られたけど…。」
「「「「えーーー!キュンキュンする!!恋バナ~~~!」」」」

雫の返事に女子たちは餌を与えられた鯉のごとく口を開けはしゃぎ始めた。心愛ちゃんは嬉しそうに笑顔を向ける。

「今でも、好きなの?」

心愛ちゃんはいつものように優しく問いかける。

「え……。まあ、振られてるし。」
「そっか…。」
「うん、」
「もし雫ちゃんがまだ頑張りたいなら、心愛、応援するね!!」

この時、何とも言えない感情が雫の中に芽生えていた。まだまだ幼かった雫にとって初めての感情。その時の感情の名前は今でも知らない。でもとにかく何かに直感的に焦ったのは本当だった。

「……なんで、心愛ちゃんがそれ知ってるの?」
「蓮くんがこの前の野外学習の時に言ってたんだって。普通言わないよね~。ひどいと思うけど、雫ちゃんの好きな人だもんね。…私はああいう子苦手だな。」

心愛ちゃんの言っていることといつもの口調に整合性があまりにもなくて気持ちが悪かった。それ以前に、あの蓮が、口数の少ない蓮が…わざわざ…?…。ショックと気持ち悪さで言葉が出なかった。心愛ちゃんはそんな雫に目を留めることなく、他の女子と恋バナの続きをし始める。あの時に感じたものに従えば良かったと今なら思う。この子は危ない子だと言う警戒心に。しかしまだ人の悪意に触れたことのない雫にとってそれはできなかった。
 次の日の学校の帰り道。雫は背伸びをして買った大きな自転車で急な坂を登っていた。あれからずっとモヤモヤが拭いきれない。何のために蓮は雫のことを話したんだろうか。本人に聞きたいのに、振られた分際で声なんかかけていいのだろうか。そんなことをぐるぐるとエンドレスで考える。
 その時、目の前に蓮の姿が見えた。雫と同様に自転車を漕いでいる。雫は考えなしにギアをマックスまで上げ、普段なら降りてしまうような急な坂を必死になって登っていた。

「蓮!!」

雫は咄嗟に声をかけてしまった。蓮はゆっくり振り向き、雫と分かると顔を背けてしまった。

「…何?」
「何って……。えっと……」
「………。」
「あの、ラブレターのこと、誰かに言ったりしたの?」
「…だったら?」

今思うと、雫がお年頃なら蓮だってお年頃。男子中学生なんてものはツンケンしてるくらいが正常みたいなところもある。だが、その時の雫にとっては優しかった蓮が変わり果ててしまったような気がした。それに加えて、雫はラブレターで振られた人。もしかしたら他の人よりも嫌われているかもしれない。

(何この変わりよう…都会に呑まれやがった……。) ※田舎の中学です。

上り坂が終わり、下り坂になった途端、蓮はブレーキをかけた。それに続いて、雫も急ブレーキをかける。

「あのさ……。雫、もっと周り見たら?」
「え?」

蓮のこの言葉。大学生になった自分にも未だに分からない。「クラスと部活、どっちも馴染めてないよ。」「浮いてるよ。」「俺に近づかないでくれる?察せよ。」…。色々考えんでは病んだが、何も分からなかった。

「あと、足。」
「あし……?うわっ!!」

雫の足を置いたところには鹿の糞。何でこのタイミングなん…。雫が鹿の糞に気を取られている間に蓮は颯爽とその場を去っていった。

 二週間後。雫の心愛ちゃんへの警戒心は答え合わせを迎える。再び心愛ちゃんと水やり当番が被った頃、心愛ちゃんが雫の心に手錠と足枷をつけた。

「ねぇ。雫ちゃん。」

いつもとは違う深刻そうな顔の心愛に雫はそっと寄り添って話を聞き始めた。

「なんかあったの?」
「…私ね。蓮くんのこと好きになっちゃった……。」
「……。」
「雫ちゃんの気持ち知ってて本当に最低だと思うんだけどね…。この前水やり当番一緒にした時に、素敵だなって思っちゃったの。」
「…そっか。」
「ねえ、雫ちゃん。」

心愛は雫の手を取り、潤んだ瞳で見上げるように見つめる。さながら悲劇のヒロインだ。

「私のこと、許してくれる?」
「…え。」
「私たち、友達でしょ?」
「………私のは、もう終わってるし。…応援するよ。」
「本当!?嬉しい!雫ちゃん、大好き!」

 それから心愛ちゃんは本性を包み隠さず出すようになった。先輩とも仲が良かった心愛は根回しによりほとんどの水やり当番を蓮と過ごした。本当はくじ制なのだが。しかしそれだけではなかった。悪気もなさそうに心愛は雫に蓮の話を幾度とした。蓮と話したことや蓮の好きなところを話した。雫は小さい頃から変に生真面目で、その時も『友達だから』と我慢しながら聞いていた。そして決定的なことが起きた。

「ねぇ、雫ちゃん。私、蓮にラブレター書きたい。」
「…え。あー。いいと思うよ。」
「…雫ちゃん、書いてくれないかな。」
「…は?」
「ほら、私、手紙とか書いたことないから。…雫ちゃんは書いたことあるんでしょ?」
「え、でもそういうのはさ…」
「お願い!…友達でしょ?」
「…わかった。」

 その日の夕方。雫は蓮のラブレター用に買っていた便箋の残りを取り出し、腕を組んで唸っていた。

「うーん。」

雫が蓮に書いたラブレターはラブレターとは言えないものだった。どんなものだったかというと…

『拝啓 蓮 様。この度はご卒業おめでとうございます。私、若宮 雫は長年からあなたに恋をしていました。理由といたしましては、一・大人なところ。一・優しいところ。一・努力家なところ。以上になります。できることならばお付き合いしたいと思っています。お返事はいつでも構いません。下記のご住所にお送りください。』

え…?ラブレター?ってなんだっけ。 当時、尚美からは…

「げっ。業務連絡かよ…。」

と言われたこを未だに鮮明に覚えている。
 そんなラブレターしか書いたことない雫にとって他人のラブレターを頼まれるなんて全くのお門違いだ。別にボケたくて『そんな』ラブレターを書いたわけじゃない。ただ気持ちのまま書いてしまったら気持ち悪いと思われそうで、嫌だった。それだけだった。でも、もしまた書き直すことができるのなら。今度は気持ちのままに書けるのなら。雫はゆっくりとペンをとり、気持ちのままに書き進め始めた。
 後日。雫は書き終えたラブレターの見本?を心愛ちゃんに渡した。心愛ちゃんがそれを見本にしたのかは分からない。だが、そのまた後日。学年が一つ上がる頃、二人は付き合うことになった。二人の交際記念日は今でも覚えている。蓮の誕生日だったからだ。二人と同じクラスになった雫は、そこから毎日二人の『恋人たちのやりとり』を眺めていた。
 しかし、そこから時は経ち、心愛ちゃんに心境の変化が訪れる。心愛ちゃんにはまた別の好きな人ができたのだ。いわゆる浮気だ。それでも神経図太い系女子・心愛ちゃん。それも包み隠さず雫に告げていた。雫はもはや自分の気持ちが分からなくなっていた。どんな顔して話を聞けばいい?怒った顔?傷ついた顔?…雫は心愛ちゃんの思うように利用されるしかなかった。そして事件は起きる。
 月一の席替えがあった頃だった。心愛ちゃんはその頃、雫や他の女子に対して蓮についてよく話していた。主に出てくるワードが『倦怠期』『蛙化』。雫の心はもはや無心。すでに馬の耳に念仏状態。摩訶般若心経を心の中で唱えられるほどになっていた。しかし、その日は違った。心愛の席が蓮の横に決まった時だった。心愛は蓮の横に席を移し、こう言った。

「最悪…。きも。」

その言葉が聞こえたのだろう。蓮はその場で顔を突っ伏し、眠りについたふりをした。しかし、耳が赤い。雫はすぐに気づいた。泣いてる。もしくは泣きそうになっている。周りはいつものように変わらずだったが、雫だけはそれに気づいていた。雫は自然と拳を握る。

(…この、雌豚クソ野郎………。)

しかし、拳を握った後、それを心愛に振るう勇気はなかった。蓮に気の利いた声をかけることもできなかった。ただ何もできない自分への不甲斐なさと溢れて止まらない怒りを抑えるのに必死だった。

「…そんなに嫌なら、別れたら……?」
「雫ちゃん…?」

雫は怒りが籠りすぎて震えた声を放った後、トイレに駆け込んだ。それ以来、雫は心愛ちゃんとは言葉を交わすことは無くなった。それが心愛ちゃんにとっては気に障ったのだろう。卒業時まで、何かと難癖をつけては心愛ちゃんやその取り巻きの男子たちに嫌がらせを受けたり、友達がいじめられたりなどで中学時代はあまりいい思い出はなかった。これが心愛ちゃんが因縁の相手になったきっかけだ。でも、正直いえば心愛ちゃんへの嫌悪だけではない。心愛ちゃんを介して知った自分の不甲斐なさや煮え切らなさに後ろめたさを思い出すから、極力、顔は見たくなかった。
 しかし、時は飛んで成人式。迅が照れすぎてしまった雫に気を効かせて蓮と三人で写真を撮ろうとした時、神経図太い系女子、再来。「イェーイ」と言いながら三人の中に入ってきたのだ。これがお地蔵化事件の全貌である。その後も心愛ちゃんは何食わぬ顔で蓮と話を始め、その流れで雫に話しかけようとしたが、再びカッとなってしまい、ガン無視。しかし、蓮の前で最低な態度を取ってしまったと思い反省。その後の中学同窓会もあまり楽しくなかったので一時間で帰ったのだ。

ーーーーーー

「あー、そんなことがあったのね。」
「まぁねぇ~~~。」

 雫は尚美に話を終えるとソファに寝転んだ。

「でも、今度は小学校の同窓会あるんでしょー?」
「…うん。ただ人が集まるかどうかでさ。」
「えー、誘ったらくるんじゃない?未来ちゃんとか、」
「それがさ…」

未来「…彼氏が許さないかも……。」
玲那「……うーん、大学がなぁ…。」
須美「え~。迅が幹事とか大丈夫なん…?」

「って感じで~~~。」
「あらら。じゃあ、三人が来ないなら気まずいね。」
「いや。私がどうしても蓮に会いたいからって頼んだら渋々了承してくれた。」
「…あんたの辞書には恥じらいって言葉はないの?」
「ないね。そんなこと言ってたら蓮に会えないし。…ただ三人があんな感じだと他の子達も同じかなって。流石にその子たちにまで同じ頼み方はできないし。」
「うん、しないほうがいい。」

尚美は二冊のアルバムを本棚にしまった。

「…本当に蓮が運命の相手なら、自ずと事はうまく運ぶよ。」
「…運命、ね~。」

尚美は寝転がる雫の頭を撫でると、リビングを出ていった。

(…蓮、会いたいなぁ。)

雫はソファにうつ伏せ、足をばたつかせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね

江崎美彩
恋愛
 王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。  幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。 「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」  ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう…… 〜登場人物〜 ミンディ・ハーミング 元気が取り柄の伯爵令嬢。 幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。 ブライアン・ケイリー ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。 天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。 ベリンダ・ケイリー ブライアンの年子の妹。 ミンディとブライアンの良き理解者。 王太子殿下 婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。 『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

処理中です...