約束してね。恋をするって

いずみ

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第三章 自覚

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 結局、そのまま木暮は藍を連れていってしまった。残された陽介も、もう星を眺める気分でもなく、さんざんな気持ちで家に帰るしかなかった。

 次の日、陽介は登校するとすぐに藍のクラスへと向かった。だが、始業時間になっても藍は現れなかった。気もそぞろで授業を受け、休み時間になるとすぐに自分のクラスを飛び出す。

 陽介がクラスを覗き込むと、すぐに平野が気付いて近づいてきた。



「宇津木君。藍?」

「ああ。藍、来ているか?」

「来ているけど、今保健室」

 それを聞いて、陽介はがくりと肩を落とす。

 朝、藍がこないのをやきもきしながら待っていて、いっそ保健室に行こうとも思ったが、木暮と何を話したらいいのかわからず気おくれしていたのだ。



「風邪でもひいたのかな」

「わかんないけど、少し遅刻してきたよ」

「そっか。ありがと」

「あ、宇津木君」

 保健室に行こうとした陽介を、平野が呼び止めた。



「宇津木君、もしかして藍とつきあってる……てカンジ?」

 一瞬、動きを止めたあと、陽介は苦笑しながら首を振った。

「残念ながら」

 否定した陽介の言葉に、平野は少しだけ意外そうな顔をした。



「そう。……あのさ、余計なお世話かもしれないけど」

 思案したような平野の表情に、また皐月のように藍の噂話かと陽介は身構える。



「あの子、いろいろ噂になっているけど、本当はそんな子じゃないから」

「え?」

「誘われればすぐついてっちゃうけどさ、あれ、男子が期待するような気持ちじゃないのよ。私と遊ぶのと同じ感覚で、男子とも二人で出かけちゃうの。ほら、小学校の頃ってみんな男女の関係なく仲良かったじゃない? それが成長するにつれて、男子は男子と、女子は女子と遊ぶようになってきて。藍って、そういうとこまるで小学生のまんまなのよ」

「ああ……わかる、それ」 



 それは、以前陽介も感じたことだ。藍は、まるで身内にするように他人に甘える。

 夕べの藍も、最初陽介が話した時には好きだという感情について、ぴんと来ない顔をしていた。そんな態度は、小学生みたいという平野の言葉はぴったりとくる。むしろ小学生の中には、藍よりよほどませている子だっているのではないだろうか。



「ちょっと、宇津木君と似てるかな」

「そうか?」

「うん。よく昔から女子に誤解させてたじゃない」

「え? 俺が?」

 そう言われても、陽介本人には心当たりがない。

 不得了な顔をしている陽介に、平野が苦笑する。



「そういうとこ。だからって言うのも変だけど、宇津木君なら、藍の気持ちわかってくれるんじゃないかな、って期待してる。わりと男子ってその気持ちがわからなくて、それでいつもトラブルになっちゃうから」

「あー、なるほど」

 先日の一件を思い出して、陽介は納得する。

 平野は、にっこりと陽介を見つめた。



「ああ見えて藍って、いろいろ言われることに傷ついているんだよ。だから、もし宇津木君が藍の事気に入っているなら、あの子いい子だから、大事にしてあげて」

 言われなくてもそのつもりの陽介は、笑顔でうなずいた。

「俺も、そうしたいんだ」



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