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第2章 再会
第8話
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それからグレイとリディを中庭で見かけることはなかった。
何の情報も入らないから、グレイが訪ねてきているのか、リディと会っているのかもわからなかった。
カーティスを説得することは今はほとんど諦めていた。
それでもフリージアは毎日閉ざされた部屋の中で必死に文献を読み漁っていた。
力のことは一生つきまとう。
フリージアのわがままで周りの人に迷惑をかけるようなことはしてはならない。
だからどこで生きるにしても、力のことは把握しておかねばならなかった。
どんな力なのか。どんな影響があるのか。どう制御したらいいのか。過去に聖女と呼ばれた乙女はどのようにしていたのか。
それがわかったら、家を出るつもりだった。
どうせ結婚もせず家の役にも立たないのだから、ここにいてもいなくても同じだから。
時折気まぐれに鷹のような大型の鳥が窓をつつき、かまってほしそうにしていたが、窓を開けることはしなかった。
リーンはカーティスに捕まってしまったのかもしれない。そう思っていたから。
寿命だったのかもしれない。他の理由の可能性だってある。
けれど、今のカーティスならやりかねないと思ってしまった。
その可能性がある以上、フリージアに巻き込んでしまうわけにはいかない。
フリージアになついてくれたようなのは嬉しかったが、これほど大型の鳥では、窓を開けて戯れていたら嫌でも目についてしまう。
だからただの一度でも、窓を開けるわけにはいかなかった。
そうして力についてはっきりしたことは一つもわからぬまま、ただいたずらに日々は過ぎた。
カーティスを納得させられるだけの代替案も言葉も浮かばない。
そして今日という日がやってきてしまった。
一か月の謹慎が解かれた侍女たちも二日前に帰ってきて、せわしなく『フリージア』の支度を進めている。
会場である新郎の家へと向かうために。
今日は『フリージア』の結婚式。
戻って来た侍女たちは今朝、フリージアの部屋へとやってきて「何もできず申し訳ありません」と目を潤ませた。
「謝ることはないわ。何も悪いことなんてしていないのだから」
しかしそう言ったフリージアの笑みに力はない。
白かったフリージアの肌はいまや青白いと言えるほどで。
食事はきちんと摂っている。睡眠もとっている。そうでなければ何もいい考えなど浮かばないから。
なのに、きちんと日の光を浴びていないせいなのか、フリージアは目に見えてやつれていた。
邸の者たち総動員でリデイの支度を進める中、不意にドアをノックする者があった。
「フリージア。入るよ」
カーティスだった。だがノックはいつものように荒々しくない。
その声もどこか穏やかだった。
答えを待たずにドアが開き、笑みを浮かべたカーティスがつかつかと部屋に踏み入った。
「リディの支度ができたよ。花嫁の姿をフリージアも見ておくといい」
機嫌のよさそうな声だった。
だがそれは、終わりを告げる声。
これでグレイはリディのもの。
二度とフリージアの手には入らない。
そう告げたのだ。
もはやフリージアはカーティスに対して何の感情も見せたくはなかった。
悲しむ姿も、悔しがる姿も。意地で隠し通し、無表情を貫いた。
それでもカーティスはご機嫌な笑みを崩さなかった。
これですべて片が付くからだろうか。
もう外に出たがるフリージアと言い争いをしなくて済むからだろうか。
フリージアの中に自分でも知らぬ怒りのようなものが沸きあがってくるのがわかった。
「やっとだな……」
それを知らぬカーティスは、笑みをたたえたままそっとフリージアの頬に手を伸ばした。
触れる寸前、思わずフリージアはその手を強く払っていた。
初めてのことだった。
だがどうしてもカーティスには触れられたくなかった。
カーティスは払われた手をそのままに呆然とフリージアを見ていた。
それから少しだけ瞳がかげる。
カーティスのそんな反応は意外だった。
何故あれほどまでに冷たくしておきながら、自分が冷たくされれば傷ついたような顔をするのか。
勝手だ。勝手すぎる。
怒り、虚しさ、疑問、様々なものがもやもやと胸に沸いた。
カーティスは何かを一つ諦めたようにゆっくりと瞬きをすると、ただ静かに声をかけた。
「行こう」
立ち上がろうとして足に力が入らずよろける。
カーティスがそれを支えようと手を伸ばしたのをかわすように、フリージアは自らの足で歩いた。
カーティスはいつでも支えられるようにそばを歩いた。
自分で閉じ込めておきながらこんなときだけ優しさを見せる。
ちぐはぐで、でもそんなところは以前のカーティスと変わっていなくて、やるせなくなった。
リディの支度部屋をノックし、「どうぞ」と答えがあるのを待ってから、カーティスが扉を開く。
鏡台の前には、真っ白な花嫁衣裳を着せられたリディが静かな笑みを湛えて座っていた。
「お義兄様、準備は整いましたわ」
そう告げたのは、リディだ。
下町から連れて来られたはずの少女は、今はもうそうとはわからない。
きっと、フリージアが部屋に閉じ込められている間にリディも今まで以上に厳しく監視され、追い込みとばかりに教育を受けさせられていたのだろう。
今はどこからどう見てもフリージアにしか見えない。
仕草も、口調も、その表情すらも。
愕然とその姿を見るフリージアに、リディの視線がちらりと向いた。
その目は以前のような溌溂とした目でも、勝ち誇るような目でもなかった。
ただ静かにフリージアを見ている。
「完璧だな。あの男にはもうお前はフリージアにしか見えまい」
「何を仰っているんですか? 私はこの邸に来たときからずっと『フリージア』です。フリージアではなかったことなんて、片時もありませんでしたわ」
フリージアに成り代わる。
それはリディとしての人生を捨てるということだ。
「ほう。それは皮肉か? お前も侯爵夫人になることを望んでいただろう」
「はい。心からの望みです。ですが、すべて一人の男の言いなりなのだと考えたら、時々胸がクソ悪くなるときがありますわ」
何を言われても今日のカーティスは苛立つことがないようで、怒るどころか、声を上げて笑った。
「はっはっは! 何とでも言うがいい。今日がすべて。今日が終われば、もうあの男に煩わされることはないのだから」
カーティスは大きく息を吸い、万感の思いを込めるように、そっと吐き出した。
「この家には前のような平穏な日々が帰ってくる。フリージアとお茶をし、他愛もない話に笑い合う。やっと。やっとだ」
その言葉にフリージアは眉を顰めた。
カーティスが変わってしまったのは、フリージアの力が発覚したことがきっかけだった。
だからリディがグレイの元へ嫁いでしまっても、まだカーティスの態度は変わらないだろうと思っていたのに。
何故今日が終わればいいのだろうか。
「本当、卑劣で小さい男ね……」
リディがぽつりと呟いた時だった。
にわかに廊下が騒がしくなり、それがだんだんとこちらへ近づいてくるのがわかった。
「……なんだ? 何事だ」
カーティスが確認に向かおうと踵を返したその時。
コンコン、とためらいのないノックの音が響いた。
カーティスが「誰だ」と問えば、答えよりも先にドアが開けられた。
「失礼します。花嫁をお迎えにあがりました」
現れたのは花婿の衣装に身を包んだ、グレイだった。
何の情報も入らないから、グレイが訪ねてきているのか、リディと会っているのかもわからなかった。
カーティスを説得することは今はほとんど諦めていた。
それでもフリージアは毎日閉ざされた部屋の中で必死に文献を読み漁っていた。
力のことは一生つきまとう。
フリージアのわがままで周りの人に迷惑をかけるようなことはしてはならない。
だからどこで生きるにしても、力のことは把握しておかねばならなかった。
どんな力なのか。どんな影響があるのか。どう制御したらいいのか。過去に聖女と呼ばれた乙女はどのようにしていたのか。
それがわかったら、家を出るつもりだった。
どうせ結婚もせず家の役にも立たないのだから、ここにいてもいなくても同じだから。
時折気まぐれに鷹のような大型の鳥が窓をつつき、かまってほしそうにしていたが、窓を開けることはしなかった。
リーンはカーティスに捕まってしまったのかもしれない。そう思っていたから。
寿命だったのかもしれない。他の理由の可能性だってある。
けれど、今のカーティスならやりかねないと思ってしまった。
その可能性がある以上、フリージアに巻き込んでしまうわけにはいかない。
フリージアになついてくれたようなのは嬉しかったが、これほど大型の鳥では、窓を開けて戯れていたら嫌でも目についてしまう。
だからただの一度でも、窓を開けるわけにはいかなかった。
そうして力についてはっきりしたことは一つもわからぬまま、ただいたずらに日々は過ぎた。
カーティスを納得させられるだけの代替案も言葉も浮かばない。
そして今日という日がやってきてしまった。
一か月の謹慎が解かれた侍女たちも二日前に帰ってきて、せわしなく『フリージア』の支度を進めている。
会場である新郎の家へと向かうために。
今日は『フリージア』の結婚式。
戻って来た侍女たちは今朝、フリージアの部屋へとやってきて「何もできず申し訳ありません」と目を潤ませた。
「謝ることはないわ。何も悪いことなんてしていないのだから」
しかしそう言ったフリージアの笑みに力はない。
白かったフリージアの肌はいまや青白いと言えるほどで。
食事はきちんと摂っている。睡眠もとっている。そうでなければ何もいい考えなど浮かばないから。
なのに、きちんと日の光を浴びていないせいなのか、フリージアは目に見えてやつれていた。
邸の者たち総動員でリデイの支度を進める中、不意にドアをノックする者があった。
「フリージア。入るよ」
カーティスだった。だがノックはいつものように荒々しくない。
その声もどこか穏やかだった。
答えを待たずにドアが開き、笑みを浮かべたカーティスがつかつかと部屋に踏み入った。
「リディの支度ができたよ。花嫁の姿をフリージアも見ておくといい」
機嫌のよさそうな声だった。
だがそれは、終わりを告げる声。
これでグレイはリディのもの。
二度とフリージアの手には入らない。
そう告げたのだ。
もはやフリージアはカーティスに対して何の感情も見せたくはなかった。
悲しむ姿も、悔しがる姿も。意地で隠し通し、無表情を貫いた。
それでもカーティスはご機嫌な笑みを崩さなかった。
これですべて片が付くからだろうか。
もう外に出たがるフリージアと言い争いをしなくて済むからだろうか。
フリージアの中に自分でも知らぬ怒りのようなものが沸きあがってくるのがわかった。
「やっとだな……」
それを知らぬカーティスは、笑みをたたえたままそっとフリージアの頬に手を伸ばした。
触れる寸前、思わずフリージアはその手を強く払っていた。
初めてのことだった。
だがどうしてもカーティスには触れられたくなかった。
カーティスは払われた手をそのままに呆然とフリージアを見ていた。
それから少しだけ瞳がかげる。
カーティスのそんな反応は意外だった。
何故あれほどまでに冷たくしておきながら、自分が冷たくされれば傷ついたような顔をするのか。
勝手だ。勝手すぎる。
怒り、虚しさ、疑問、様々なものがもやもやと胸に沸いた。
カーティスは何かを一つ諦めたようにゆっくりと瞬きをすると、ただ静かに声をかけた。
「行こう」
立ち上がろうとして足に力が入らずよろける。
カーティスがそれを支えようと手を伸ばしたのをかわすように、フリージアは自らの足で歩いた。
カーティスはいつでも支えられるようにそばを歩いた。
自分で閉じ込めておきながらこんなときだけ優しさを見せる。
ちぐはぐで、でもそんなところは以前のカーティスと変わっていなくて、やるせなくなった。
リディの支度部屋をノックし、「どうぞ」と答えがあるのを待ってから、カーティスが扉を開く。
鏡台の前には、真っ白な花嫁衣裳を着せられたリディが静かな笑みを湛えて座っていた。
「お義兄様、準備は整いましたわ」
そう告げたのは、リディだ。
下町から連れて来られたはずの少女は、今はもうそうとはわからない。
きっと、フリージアが部屋に閉じ込められている間にリディも今まで以上に厳しく監視され、追い込みとばかりに教育を受けさせられていたのだろう。
今はどこからどう見てもフリージアにしか見えない。
仕草も、口調も、その表情すらも。
愕然とその姿を見るフリージアに、リディの視線がちらりと向いた。
その目は以前のような溌溂とした目でも、勝ち誇るような目でもなかった。
ただ静かにフリージアを見ている。
「完璧だな。あの男にはもうお前はフリージアにしか見えまい」
「何を仰っているんですか? 私はこの邸に来たときからずっと『フリージア』です。フリージアではなかったことなんて、片時もありませんでしたわ」
フリージアに成り代わる。
それはリディとしての人生を捨てるということだ。
「ほう。それは皮肉か? お前も侯爵夫人になることを望んでいただろう」
「はい。心からの望みです。ですが、すべて一人の男の言いなりなのだと考えたら、時々胸がクソ悪くなるときがありますわ」
何を言われても今日のカーティスは苛立つことがないようで、怒るどころか、声を上げて笑った。
「はっはっは! 何とでも言うがいい。今日がすべて。今日が終われば、もうあの男に煩わされることはないのだから」
カーティスは大きく息を吸い、万感の思いを込めるように、そっと吐き出した。
「この家には前のような平穏な日々が帰ってくる。フリージアとお茶をし、他愛もない話に笑い合う。やっと。やっとだ」
その言葉にフリージアは眉を顰めた。
カーティスが変わってしまったのは、フリージアの力が発覚したことがきっかけだった。
だからリディがグレイの元へ嫁いでしまっても、まだカーティスの態度は変わらないだろうと思っていたのに。
何故今日が終わればいいのだろうか。
「本当、卑劣で小さい男ね……」
リディがぽつりと呟いた時だった。
にわかに廊下が騒がしくなり、それがだんだんとこちらへ近づいてくるのがわかった。
「……なんだ? 何事だ」
カーティスが確認に向かおうと踵を返したその時。
コンコン、とためらいのないノックの音が響いた。
カーティスが「誰だ」と問えば、答えよりも先にドアが開けられた。
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