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しおりを挟むまったくもう、と拗ねた口調でメルウィンは呟いた。
「反抗来な弟子を持つと、師匠は苦労するよ」
「優柔不断で女癖が悪くてイタズラ好きで我儘で弟子の言うこともまともに聞かない師匠を持つと、弟子は苦労する」
「そ、そこまで言わなくても……」
「まだ言えるぞ」
「ごめんって……」
謝罪をしながら、メルウィンが肩を竦める。どちらが師匠なのか、もはやわかったものではない。
「……ま、話を戻すとして。結論としては、ミサちゃんはもとの世界に帰りたい。それで、いいかな?」
「はい……」
「よぅし、じゃあこれで次の目的地は決まったね」
「どこに行くんだ」
ラックの問い掛けに、メルウィンは東の方角を指さしながら答える。
「ここから東にしばらく行くと、キレッドという大きな街がある。そこは巨大な図書館があることでも有名でね。ひとまずは、そこを目指そう」
「その図書館で情報収集をする、ということか?」
「そういうこと」
ふたりの会話を聞きながら、ミサは不安に感じた部分を吐露した。
「でも……別の世界から来た人間の情報なんて……見つかるんでしょうか……」
「そればかりは、行ってみないとなんともねぇ。でも、あそこの図書館は城みたいに大きいから、図書館の者でさえ保管している本のすべてを把握してはいないんだよ」
ラックが眉根を寄せて尋ねる。
「そんなところで、本当に目的の本を探せるのか? 実際にあるのかどうかもわからないんだろう」
「普通に探してたら、おじいちゃんになっても見つからないだろうねぇ」
「じゃあ、どうやって――」
言いかけたミサの唇を、メルウィンは指で塞いで黙らせた。
彼はニッコリと微笑む。
「そこを魔法でなんとかするのが、魔術師ってもんさ。とくに僕は自分で言うのもアレだけど、けっこう面倒くさがり屋でねぇ。そういった魔法の創造は、他の誰にも負けない自信がある」
「つまり、横着から生まれたどうでもいい魔法を数多く知っているということか?」
「どうでもよくはないよ。新たな魔法を創造するのだって、簡単じゃないんだから」
これを聞いたラックが、深い深いため息を吐き出した。
「もう少し魔術師らしい魔法の発明に精を出してほしいものだが」
「あっ、この前は、女の子の胸を大きくする魔法を開発したよ。お店でこれを言うと女の子達が集まってきてね、すっごくチヤホヤしてくれるんだ」
反射的に、ミサは「えっ」と声を出していた。
ミサの胸は決して大きいとは言えず、それが気になる場面もこれまでに何度かあった。故に、彼の発言はどうにも聞き流せなかったのだ。
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