元英雄でSSSSS級おっさんキャスターは引きこもりニート生活をしたい~生きる道を選んだため学園の魔術講師として駆り出されました~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第3章 おっさん、冒険をする

第40話 隠された権力

 俺とレーナは厨房を抜け出し、ハルカの居場所を探していた。

「こっちの部屋にはいません」
「こっちもダメだ」

 恐らくハルカはどこかで監禁されているのは間違いないだろう。
 探索魔術は大まかな位置が分かってもその詳細まで知ることはできない。
 面倒だがここから自分たちで見つけるしかないということだ。
 
「一体どこにいるのでしょうか……」
「恐らく人目につかない所……またはゲッコウのみが管理できる部屋が存在するとかだな」

 それにこの屋敷はとにかく広い。
 簡単に探すことができないことくらいは承知の上だった。
 ただ残り時間もそんなに多くはない。今日の夜更け、最低でも夜明けまでには決着をつけたい。

 俺たちが広々とした廊下を歩いていると、大きな蔵が見えてきた。

「レイナード、あの中はどうでしょう?」
「あれは何かの保管庫か? 見てみる価値はあるな」

 俺たちは他の目に触れぬようゆっくりと蔵に近づく。

「ん? 扉が開いているな」
「入ってみますか?」

 誰かが入っていった形跡がある。
 好都合だ。俺たちもそっと蔵の中に入っていく。

 すると中から子どもの声が聞こえてきた。

「痛い……やめてください親方様」
「黙れ、この奴隷風情が! どうやってこの蔵から出ることができた?」
「げ、ゲッコウ様に頼まれて……」
「貴様はまだそんな戯言を言うのか!? この蔵から勝手に出るということがどういうことか理解しているんだろうな?」

(あいつは……)

 先ほど門を開けてくれた女の子とゲッコウのいる部屋まで案内した中年の男がいた。
 その男は鞭らしきもので女の子の頭や身体をバシバシと叩き、何やら叫んでいる様子だった。

「レイナード……あれって……」
「ああ、あの姿……彼女は奴隷のようだな」
「ひどい……あんな小さな子に……」

 確かに痛々しくて見ていられない。
 先ほどあった時には素肌が見えないくらい大きな布で覆われていたが、今は裸にされていた。
 その身体を見ると全身傷だらけで鞭で叩かれてばかりのせいか肌の色が変色していた。

 まるで死人のようにやせ細っていて血の気があまり感じられないほどだった。

「もう見てられない……私が!」
「待てレーナ!」

 俺はレーナの肩をそっと叩き、落ち着くよう促す。

「で、でも……あんなの……」

 レーナの目に一滴の涙が落ちる。
 俺がそっとレーナに、

「俺に任せてくれ。レーナはここで誰かがこないように見張っていてくれないか」

 俺の顔が本気だということを察知したのかレーナは黙って頷く。

 俺は男にバレないよう後ろからそっと近づく。

「くそっ! まだ叩きたりねぇ! おいもう終わりか? 早く立てよ」
「うっ……」

 彼女は地面に這いつくばったまま動かない。

「ちっ……これじゃあ商品として売り出せないかもな。ゲッコウ様には悪いがこれは俺のおもちゃに……」

「おもちゃが……なんですか?」
「……!?」

 いきなり声を掛けられ男はビクッとする。
 
「だ、誰だ!?」

 すぐ後ろを振り向くと俺の姿を見てホッとする様子を見せる。

「な、なんだお前か……脅かすなよ」
「も、申し訳ございません。それで、貴方はここで何をしていたんですか?」
「え? ああ、奴隷の調教だ」
「奴隷の調教……?」
「そうだ。奴隷は労働者の低下に悩むこの国で高い価値を誇る。ゲッコウ様にしかできない商売さ」

 ゲッコウにしかできない商売だと……?

「それはどういう?」

 俺は情報を得るため問い詰める。

「あまり大きな声では言えんが、ゲッコウ様は各国の奴隷商人との人脈が強くてな。国に頼まれて色んなとこから奴隷を調達しているのさ」
「国に頼まれている……ですか」
「ああ、本当に凄いお方だよ。ゲッコウ様のおかげで労働者は増えていく一方、国のデメリットをカバーしているのさ。これには幕府様も顔が上がらんとのことだ」

 幕府……国の長のことか。こっちで言う国王だな。
 国の長でもゲッコウには頭が上がらない……他の家系の人間が口を出せないのも納得だ。
 もっともこの情報はゲッコウに関わる一部の人間しか知らないようだった。
 
 隠れた権力者とはこのことだな。

 とりあえず権力のことについては大体把握した。 
 だが問題はもう一つ。そう、伝統についてだ。
 自分の子に結婚を強いる理由は一体なんだ? この情報だけじゃ推測だできない。

 俺はさらに問い詰めてみる。

「あ、あの……もう一つ聞いてもよろしいですか?」
「ん? なんだ?」
「その……スメラギ家では自分の娘や息子を30の年までに結婚をさせなければならないという伝統があるとお聞きしたのですが、それは……?」
「ああ、世襲制のことか」
「世襲制ですか?」
「そうだ。ゲッコウ様は跡取りをご所望でな、しかも自分より有能な力を持つ者を」

 有能な力を持つ……か。
 話によればゲッコウは自分の跡取りを必要としているらしく自分の娘や息子に子を産ませ、その赤子が有能な潜在能力ポテンシャルを秘めていれば跡取りとして育て、そうでない場合はまた子を産ませてのループでそれがかれこれ何百年も続いているという。

 ハルカはゲッコウの何千人目かの娘らしく、未だに跡取りが現れていないことからゲッコウに少しばかり焦りが見えているとのことだ。

 というか、何百年って……いくつなんだあいつは? とりあえず人間ではないな。

「ま、俺たちはゲッコウ様に言われたことを果たすだけだからな。余計なことを考えるな」
「そ、そうですね。すみません」

 よし、これでほとんどの大まかな情報は掴むことができた。
 思ったよりかなりの収穫だ。

 と、いうわけでこいつにはもう用はない。
 退場してもらうとするか。

「色々教えていただいてありがとうございました」
「ああ、気にするな。お前も使用人となったのだ、ある程度の情報は知っておかないとな」
「ああ……ホントにバカだな、お前は」
「……?」

 俺はギュッと拳を握りしめ、瞬時に相手の懐へ。

「……なっ!?」
「全てが終わるまで寝ていろ。外道が」

 俺の拳は一瞬で相手の腹部へ。そのまま相手は蔵の壁まで盛大に吹っ飛ばされる。

「ふぅ……」
「レイナード!」
「ああ、終わったぞ。あと一週間は目覚めないだろうな」
「それよりあの子を!」
「そうだな」

 俺は女の子を抱きかかえる。

「おい、大丈夫か? 返事をしろ!」
「……う……う」

 衰弱しきった身体は限界をとうに超えていた。
 言葉を発せないレベルまで身体は廃れていたのだ。

「レーナ、この子を頼む」

 俺はレーナに彼女を抱きかかえてもらい、治癒魔術をかける。

「くっ……間に合うか」

 生と死の狭間でギリギリ生きているという状況だった。
 死んでしまっては治癒魔術は効果を発揮しない。

「ちっ……普通の治癒魔術じゃ効果はないか。なら!」

 俺は最高位治癒魔術≪アンリミテッド・ヒーリング≫を行使した。

 すると驚異的な速さで傷が癒えていく。

「す、スゴイ……こんな治癒魔術みたことがない」

 正直人前で最高位魔術を使いたくはなかったが、仕方がなかった。
 あのままだったら彼女は死んでいたが故の行動だ。
 それに……レーナを悲しませることもしたくない。
 そういう意味もあった。

 ほんの数分で傷が全て癒え、彼女は目を覚ました。

「大丈夫か?」

 そういう俺の顔見るなり女の子は、

「お、お父さん……?」

 
 は?

 
 予想もしない第一声に即座に言葉が出てこなかった。
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