底辺術師の錬成無双〜オンボロ刀しか錬成出来ない俺は、それでも奇跡に縋り剣を振るう〜

夢見月まひわ

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 箝口令かんこうれい。キサラギがそう口にすると、ニブルヘンリの口元が少し緩んだ様に見えた。

「承知しました。またミョルニルの魂の器である、リゼット=ロロー様も彼の素性を知る故、早急にその旨を知らせましょう」
「うむ。頼んだぞ」
「はっ!」
「それとアイカセツナの身は一時的にではあるがアカデミー、錬成セレマ学園の学園長に任せるとしよう」

 キサラギへの報告はこうして終わり、セツナとニブルヘンリの二人は防衛機構イージスを出て再びアカデミーへと足を運んだ。
 すると、その学園の門の前に赤と白の奇抜な装いにも関わらず落ち着いた雰囲気を纏う一人の少女が下を向いて佇んでいた。

ーーー可笑しな格好・・・ここじゃ流行ってんのか?

 そう思いながらセツナはその少女をじっと見ていた。見続けていた。
 セツナの意識に関係なく、頭で理解するよりも本能的に、セツナはその少女の姿に目を奪われていた。
 その事にさえ気付かずにセツナはしばらくその場に立ち尽くしていた。

 その少女が顔を上げるまで。

「ーーー待っていたよ」

 まるでお人形のような端正な顔立ちをしたその少女は、セツナと目が合うとその顔に笑みを浮かべてそう言った。
 セツナは我に返り慌てて目線を外す。

「おっと、驚かせちゃったかな? そんなつもりはなかったんだけどね。それはそうと、ようこそアカデミーへ! 君」
「ーーーーーえ・・・!?」

ーーーこの人、どうして俺の名前を?

 セツナが驚きのあまり阿保みたいに口を開けていると、その少女は更に声を上げて笑った。

「あはは! いやいや、本当に驚かせるつもりはなかったんだよ。ここの人たちは私が君たちの名前を知っていたって何も驚かないからね。それが当然になっていたんだ」

 ニコニコしながら少女はセツナに近づいてくる。

「だから私にとってはその反応は新鮮なんだ。でも笑ってしまった事は謝るよ、ごめんね」
「あの・・・貴女は?」
「失敬失敬。そうだよね、初対面の人には名乗るべきだよね。ここ長らく忘れていたよ。私の名前はーーー布都御魂フツノミタマ、だよ。一応はここの学園長をしている。まぁ半分お飾りだけどね」

 キサラギが話していたアカデミーの学園長。彼女、フツノミタマと名乗る少女がそれに該当するという。

ーーー冗談だろ・・・?

「あ、それ信じてない顔だー! だけど、ざーんねん! 事実だよ!」

 そう胸を張る少女はやはり幼く見える。その容姿もその言動も。

ーーー術師は実力主義だとか・・・血統が関係しているとか・・・もしくは全て嘘なのか?

 詰まる所、術師の世界を知らないからなのだろうと思い、セツナは隣のニブルヘンリに視線を移した。
 しかし、結果からいえばそこにニブルヘンリはいなかった。

 たった十数秒前までそこに存在を確認していたはずで、だからそこにいると思い、救けを求めていたのだからーーーいないはずはなかった。
 ましてやーーーーー。

「ーーーどこだよ、ここ・・・?」

 見知らぬ部屋にいるなんて絶対にあり得ない。
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