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第一章 定食屋で育って
新しい仲間
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結城さんの奥さん、茜さんがお店のスタッフに加わって、ランチの効率は劇的に上がった。
茜さんは要領が良いだけでなく、お客さんへの説明も丁寧な上に感じが良い。お客さんが「おばちゃーん」と呼ぶと、茜さんは「はいはーい」と元気よく答えていて活気があった。
父はキッチンでハイチェアに座って包丁メインの仕事をしている。
今までと違ってキッチンでも一部しか任されていないのはもどかしそうだ。
茜さんは11時に来て、13時に上がる。賄いは希望してもらえれば用意するようにしていて、お昼を食べてから帰ることもあった。
*
私は2日に1回程度、ナツさんのお店に行くようになっていた。
ナツさんには日曜日にあったことをかいつまんで報告したのだけれど、父が無事だったことを心から喜んでくれた。
「ナツさんは、日葵さんと付き合ってるんですか?」
「……いえ」
なんか間があった。なんで即答できなかったんだろう。
これはもしや、もうすぐよりを戻すとか、そういうことなのか……。
「日葵さん、すごい美人さんじゃないですか。彼氏とかいないんですか?」
「……さあ?」
絶対知っているくせに、知らないふりか……。これは、怪しい。
あーあ。ここまで露骨に話題を避けているところを見せられると、日葵さんがナツさんにとって特別な人だと確定したようなものだ。
ナツさんとようやく普通に話せるようになったのに、私とナツさんの距離は縮まらない。
「あ、そうだ。ブレンドコーヒーの豆を買っていきたいんです」
「はい、販売中ですよ。何グラム包みますか?」
「普通どの位ですか?」
「お2人で飲まれるのであれば、100gか200gでこまめに購入いただくのがお薦めですね。新鮮な方が美味しいので」
じゃあ、と100g買うことにした。どの位飲むか様子を見て、次回100gにするのか200gにするのかを選べばいい。2日に1回通っているのだから、こまめに買える。
「実は、お父さんの失神……食後に自律神経がうまく働かなくなるっていうのなんですけど、食後にコーヒーを飲むのが良いみたいなんです。コーヒーのカフェインが刺激するとかで」
「ああ、コーヒーは食後に飲むとか適度に飲むのは健康効果もありますからね。ブラックコーヒー限定ですけど糖尿病の予防とか、様々なエビデンスがありますよ」
これまで、コーヒーって身体にあまり良くないものだと思っていた。
そもそもカフェインは中毒性があるものだし、緑茶や紅茶の方が健康に良さそうではないか。まさかお父さんの身体のためにコーヒーを買うようになるなんて。
ナツさんは、例のブレンドコーヒーを100g分挽いてくれた。
それを店名が入った袋に詰めて封をして渡してくれる。
「そういえば、結城さんがお店に来ましたよ。隣で働き出したのでよろしくお願いしますって」
「茜さん、お店に来たんですか?」
「祥太くんから僕のことを聞いていたらしくて、一度来てみたかったって言ってました」
なるほど、祥太がナツさんの宣伝をして回っているのだろう。
噂のナツさんがどんな人なのか確かめに来たに違いない。
「茜さんのお陰で、お店が普通に回ってるんです。というか、普通以上に回っていて」
「お父さんも喜んでいるんじゃないですか? 自分の体調のせいでお客さんに提供するのが滞ったりしたら、きっとつらいですからね」
まさしくそれです、なんて話をした。
このまま茜さんの力を借りっぱなしで営業して良いものか、本当は迷いのようなものもある。
茜さんが昼間に料理教室をやりたくなったら、それを応援するのが私たちの本来の姿だから。
このまま茜さんに依存していたら、きっといつかバランスが崩れて、不幸な結果を生みそうな気がしていた。
茜さんは要領が良いだけでなく、お客さんへの説明も丁寧な上に感じが良い。お客さんが「おばちゃーん」と呼ぶと、茜さんは「はいはーい」と元気よく答えていて活気があった。
父はキッチンでハイチェアに座って包丁メインの仕事をしている。
今までと違ってキッチンでも一部しか任されていないのはもどかしそうだ。
茜さんは11時に来て、13時に上がる。賄いは希望してもらえれば用意するようにしていて、お昼を食べてから帰ることもあった。
*
私は2日に1回程度、ナツさんのお店に行くようになっていた。
ナツさんには日曜日にあったことをかいつまんで報告したのだけれど、父が無事だったことを心から喜んでくれた。
「ナツさんは、日葵さんと付き合ってるんですか?」
「……いえ」
なんか間があった。なんで即答できなかったんだろう。
これはもしや、もうすぐよりを戻すとか、そういうことなのか……。
「日葵さん、すごい美人さんじゃないですか。彼氏とかいないんですか?」
「……さあ?」
絶対知っているくせに、知らないふりか……。これは、怪しい。
あーあ。ここまで露骨に話題を避けているところを見せられると、日葵さんがナツさんにとって特別な人だと確定したようなものだ。
ナツさんとようやく普通に話せるようになったのに、私とナツさんの距離は縮まらない。
「あ、そうだ。ブレンドコーヒーの豆を買っていきたいんです」
「はい、販売中ですよ。何グラム包みますか?」
「普通どの位ですか?」
「お2人で飲まれるのであれば、100gか200gでこまめに購入いただくのがお薦めですね。新鮮な方が美味しいので」
じゃあ、と100g買うことにした。どの位飲むか様子を見て、次回100gにするのか200gにするのかを選べばいい。2日に1回通っているのだから、こまめに買える。
「実は、お父さんの失神……食後に自律神経がうまく働かなくなるっていうのなんですけど、食後にコーヒーを飲むのが良いみたいなんです。コーヒーのカフェインが刺激するとかで」
「ああ、コーヒーは食後に飲むとか適度に飲むのは健康効果もありますからね。ブラックコーヒー限定ですけど糖尿病の予防とか、様々なエビデンスがありますよ」
これまで、コーヒーって身体にあまり良くないものだと思っていた。
そもそもカフェインは中毒性があるものだし、緑茶や紅茶の方が健康に良さそうではないか。まさかお父さんの身体のためにコーヒーを買うようになるなんて。
ナツさんは、例のブレンドコーヒーを100g分挽いてくれた。
それを店名が入った袋に詰めて封をして渡してくれる。
「そういえば、結城さんがお店に来ましたよ。隣で働き出したのでよろしくお願いしますって」
「茜さん、お店に来たんですか?」
「祥太くんから僕のことを聞いていたらしくて、一度来てみたかったって言ってました」
なるほど、祥太がナツさんの宣伝をして回っているのだろう。
噂のナツさんがどんな人なのか確かめに来たに違いない。
「茜さんのお陰で、お店が普通に回ってるんです。というか、普通以上に回っていて」
「お父さんも喜んでいるんじゃないですか? 自分の体調のせいでお客さんに提供するのが滞ったりしたら、きっとつらいですからね」
まさしくそれです、なんて話をした。
このまま茜さんの力を借りっぱなしで営業して良いものか、本当は迷いのようなものもある。
茜さんが昼間に料理教室をやりたくなったら、それを応援するのが私たちの本来の姿だから。
このまま茜さんに依存していたら、きっといつかバランスが崩れて、不幸な結果を生みそうな気がしていた。
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