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8章 ダンジョンを守れ ~異種族間同盟~
ニューヴィーとテギル⑤
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「う~ん…………結構探してるんだけど………見つかんないね」
「そうね」
レクスの言葉にミーシャは同意するように頷く。あれから、十近くの酒蔵を回ったが、テギルは見つかっていなかった。
「テギルさん…………どこに行っちゃったの?」
ニューヴィーは泣きそうになっていた。
「大丈夫よ、テギルさんならきっと見つかるわ」
フィオナがそう言ってニューヴィーをあやす。
「見つかるかな?」
「うんうん、大丈夫。それに、男の子なら泣かない方がかっこいいと思うわよ」
「そうなの? じゃあ、泣かない!」
なんとも単純なニューヴィーであった。ニューヴィーはフィオナの言葉によって立ち直ったようだ。声は少し大きかったが。
「ここはどうだ?」
リオットは、次の酒蔵を開ける。その酒蔵の中は、特に目立ったものはなく普通の酒蔵だった。
「ん…………? なんか床、濡れてね…………?」
リオットの視界には、濡れた床が映っていた。しかも気のせいか、酒じゃない別の臭いが漂ってるような…………。
レクス達がテギルなる人物がいないか見渡してみると、酒樽付近に何やら縛り付けられ、身動き一つ取れない男性のドワーフ族が一人。その男性は、
「──────テギルさん!!」
「───────おお、ニューヴィー…………。無事だった、ようだな…………」
テギルの声には元気がなかった。しかも、床にはネムの言ってた通り─────あれがあった。そう、あれだ。
「テギルさん、その床の染みは?」
「………こ、これはな、その…………あれだ、毒だ」
「ど、毒!?」
「あ、ああ、でも……少量だし、平気だ…………」
ニューヴィー以外、誰もが嘘だと分かっていたが、ここはあえて何も言わなかった。まあ、おも─────したなんてこと、口が裂けても言いたくないだろうし。本人のために黙っておくのがいいだろう。
このままでは臭いも充満するし、テギルも可哀想になってきたので、浄化してやることにした。
「我が魔力よ…………集いてこの一帯を清潔に……『浄化』」
レクスがそう唱えると、酒蔵を中心に大規模な浄化魔法が展開された。久し振りの魔法行使だった事もあって、魔法の調節が上手くできなかったようだ。
だが、ちゃんと機能はしたようで、床にあった染みも、臭いもきちんと消えていた。
「すげぇな…………詠唱付きとはいえ、ここまで広範囲の魔法を発動するなんて」
リオットは素直に感心したのか、つい口に出してしまった。リオットはハッとした表情で口をふさいだ。そして、レクスの顔を睨み付ける。
「………………?」
レクスは、リオットに睨まれるような理由も思い当たらないので、首を傾げるしかない。まあ、多分先の件で嫌われているのだろう。あ、理由がないことはなかった。
「テギルさん!」
ニューヴィーは床の染みがなくなったのを確認して、テギルの元へ。
「テギルさん! 良かった、本当に無事で良かった…………」
「…………すまんな。心配をかけて」
テギルはニューヴィーを受け止め、その頭を撫でてやった。ニューヴィーは涙を流していた。やっとテギルに会えた事で、ついに涙腺が緩んだようだ。
「うう…………うわああぁぁぁぁぁん…………!」
ニューヴィーは周りに構わず大声で泣き始めた──────が、それを止める者は誰もいなかった。ここで止めるのは野暮というものである。
「まあ、今ぐらいはいいか…………」
邪魔が入って来たら、申し訳ないけど気絶してもらおう。
リオットはそんなことを思ったのだった。
「そうね」
レクスの言葉にミーシャは同意するように頷く。あれから、十近くの酒蔵を回ったが、テギルは見つかっていなかった。
「テギルさん…………どこに行っちゃったの?」
ニューヴィーは泣きそうになっていた。
「大丈夫よ、テギルさんならきっと見つかるわ」
フィオナがそう言ってニューヴィーをあやす。
「見つかるかな?」
「うんうん、大丈夫。それに、男の子なら泣かない方がかっこいいと思うわよ」
「そうなの? じゃあ、泣かない!」
なんとも単純なニューヴィーであった。ニューヴィーはフィオナの言葉によって立ち直ったようだ。声は少し大きかったが。
「ここはどうだ?」
リオットは、次の酒蔵を開ける。その酒蔵の中は、特に目立ったものはなく普通の酒蔵だった。
「ん…………? なんか床、濡れてね…………?」
リオットの視界には、濡れた床が映っていた。しかも気のせいか、酒じゃない別の臭いが漂ってるような…………。
レクス達がテギルなる人物がいないか見渡してみると、酒樽付近に何やら縛り付けられ、身動き一つ取れない男性のドワーフ族が一人。その男性は、
「──────テギルさん!!」
「───────おお、ニューヴィー…………。無事だった、ようだな…………」
テギルの声には元気がなかった。しかも、床にはネムの言ってた通り─────あれがあった。そう、あれだ。
「テギルさん、その床の染みは?」
「………こ、これはな、その…………あれだ、毒だ」
「ど、毒!?」
「あ、ああ、でも……少量だし、平気だ…………」
ニューヴィー以外、誰もが嘘だと分かっていたが、ここはあえて何も言わなかった。まあ、おも─────したなんてこと、口が裂けても言いたくないだろうし。本人のために黙っておくのがいいだろう。
このままでは臭いも充満するし、テギルも可哀想になってきたので、浄化してやることにした。
「我が魔力よ…………集いてこの一帯を清潔に……『浄化』」
レクスがそう唱えると、酒蔵を中心に大規模な浄化魔法が展開された。久し振りの魔法行使だった事もあって、魔法の調節が上手くできなかったようだ。
だが、ちゃんと機能はしたようで、床にあった染みも、臭いもきちんと消えていた。
「すげぇな…………詠唱付きとはいえ、ここまで広範囲の魔法を発動するなんて」
リオットは素直に感心したのか、つい口に出してしまった。リオットはハッとした表情で口をふさいだ。そして、レクスの顔を睨み付ける。
「………………?」
レクスは、リオットに睨まれるような理由も思い当たらないので、首を傾げるしかない。まあ、多分先の件で嫌われているのだろう。あ、理由がないことはなかった。
「テギルさん!」
ニューヴィーは床の染みがなくなったのを確認して、テギルの元へ。
「テギルさん! 良かった、本当に無事で良かった…………」
「…………すまんな。心配をかけて」
テギルはニューヴィーを受け止め、その頭を撫でてやった。ニューヴィーは涙を流していた。やっとテギルに会えた事で、ついに涙腺が緩んだようだ。
「うう…………うわああぁぁぁぁぁん…………!」
ニューヴィーは周りに構わず大声で泣き始めた──────が、それを止める者は誰もいなかった。ここで止めるのは野暮というものである。
「まあ、今ぐらいはいいか…………」
邪魔が入って来たら、申し訳ないけど気絶してもらおう。
リオットはそんなことを思ったのだった。
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