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08.地獄の幕開け
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「ほらほら行くぞー」
当然のように肩を組まれマンションをあとにした二人は、遼佑が予約している店にそのまま向かうことになった。
連れられて行ったのはイタリアン料理の店で、完全個室の綺麗な場所だった。
元は先約があった女性と行くための場所だったのだろうが、そんなことも気にならないくらい会話が弾む。
女性が好みそうなイタリアン料理は皿に小さく盛られていて、お腹が減っていた志貴には物足りない。
肉料理ばかり頼んでいれば、遼佑が苦笑し明日はもっと美味いものを食べに行こうと当たり前のように提案してくる。
勿論その発言に一も二もなく志貴は飛びついた。明日も当然のように一緒にいられる確約を遼佑から貰えたことが嬉しくて堪らない。
いつもここまで嬉しく思っていただろうかとふと疑問が湧き上がったが、志貴はそれも見ないふりをした。
旅行先での話を聞いても、普段通りの反応ができているから何も問題はない。
それにセフレの話を聞いても、湧き上がる悲しみはどこにも存在しなかった。
ただ自分からするスキンシップが減っていたくらいでーー
「なぁ、なんか距離遠くないか?」
「えっ、そうかなー」
横並びに座る席。ずいっと壁側に押し込められるように遼佑に詰め寄られて心臓が跳ねる。
「そうだろう? いつも女達に擦り寄るのと同じ感じでくっついてきてたじゃん」
「そんなにくっついてたー? うそだぁ」
気づかれていないかと思っていたがそうではなかったようで、内心冷や汗が滴れる。
へらりと笑ってかわそうとしたのに遼佑はどこか不機嫌そうに眉を顰めると、さらに距離を詰めてきた。
「俺なんかした?」
「えぇー? りょーちゃんなんもしてないよ?」
「じゃあ俺が旅行に行ってる間、何かあった?」
その問いに脈が早まり、気がつけば目が泳いでしまう。
何かあったなんてものじゃない、あの出来事は志貴にとっては途轍もない衝撃をもたらしたのだから。
志貴の反応に片眉を跳ね上げた遼佑は、さらに距離を詰めてくる。
気がつけば志貴の背中はピタリと壁についてしまっていた。
「新しいセフレでもできたか? ……にしては反応がいつもと違いすぎるしな……」
志貴の反応を少しも逃すまいとするように、じっと見つめてくる遼佑の視線が痛い。
どんなにセフレができようが、今のような反応を遼佑がしてくることなんてなかったというのに。
「セフレ以上の女ができたか、もしくはーー他の男と寝たとか?」
遼佑の声音は先程までよりずっと低く、まるで志貴を咎めているようだった。
いつもと違う雰囲気を纏う遼佑が怖くて、勝手に体がびくりと跳ね、背後は壁だというのに体が後ろへ逃げようとしてしまう。
その行動はまるで、遼佑の予想を肯定するかのように見えたのだろう。
「へぇ、なるほど。その男とは今後も付き合うのか? それとも一度だけか?」
すっかりと怯えが芽生えた志貴は、固まったまま動けない。
それをどう捉えたのか、さらに遼佑の機嫌が悪くなったような気がした。
今までセフレと言う存在はお互いに腐るほどにいたし、一夜だけの女性も沢山いる。
なのになぜここまで怒っているのか志貴にはわからなかった。
「そんなのいないってば」
「どうだかなぁ」
やっと絞り出せた言葉も遼佑には届いていないようだ。
これではまるで浮気を咎められてるみたいだと感じたが、自分達はそんなことを咎める間柄ではない。
そもそも遼佑には婚約者がいるじゃないかとツッコミを入れたかった。
けれどもしそれを肯定されてしまったらこの関係があっけなく終わってしまう気がして、志貴は結局口を閉ざしてしまうのだった。
当然のように肩を組まれマンションをあとにした二人は、遼佑が予約している店にそのまま向かうことになった。
連れられて行ったのはイタリアン料理の店で、完全個室の綺麗な場所だった。
元は先約があった女性と行くための場所だったのだろうが、そんなことも気にならないくらい会話が弾む。
女性が好みそうなイタリアン料理は皿に小さく盛られていて、お腹が減っていた志貴には物足りない。
肉料理ばかり頼んでいれば、遼佑が苦笑し明日はもっと美味いものを食べに行こうと当たり前のように提案してくる。
勿論その発言に一も二もなく志貴は飛びついた。明日も当然のように一緒にいられる確約を遼佑から貰えたことが嬉しくて堪らない。
いつもここまで嬉しく思っていただろうかとふと疑問が湧き上がったが、志貴はそれも見ないふりをした。
旅行先での話を聞いても、普段通りの反応ができているから何も問題はない。
それにセフレの話を聞いても、湧き上がる悲しみはどこにも存在しなかった。
ただ自分からするスキンシップが減っていたくらいでーー
「なぁ、なんか距離遠くないか?」
「えっ、そうかなー」
横並びに座る席。ずいっと壁側に押し込められるように遼佑に詰め寄られて心臓が跳ねる。
「そうだろう? いつも女達に擦り寄るのと同じ感じでくっついてきてたじゃん」
「そんなにくっついてたー? うそだぁ」
気づかれていないかと思っていたがそうではなかったようで、内心冷や汗が滴れる。
へらりと笑ってかわそうとしたのに遼佑はどこか不機嫌そうに眉を顰めると、さらに距離を詰めてきた。
「俺なんかした?」
「えぇー? りょーちゃんなんもしてないよ?」
「じゃあ俺が旅行に行ってる間、何かあった?」
その問いに脈が早まり、気がつけば目が泳いでしまう。
何かあったなんてものじゃない、あの出来事は志貴にとっては途轍もない衝撃をもたらしたのだから。
志貴の反応に片眉を跳ね上げた遼佑は、さらに距離を詰めてくる。
気がつけば志貴の背中はピタリと壁についてしまっていた。
「新しいセフレでもできたか? ……にしては反応がいつもと違いすぎるしな……」
志貴の反応を少しも逃すまいとするように、じっと見つめてくる遼佑の視線が痛い。
どんなにセフレができようが、今のような反応を遼佑がしてくることなんてなかったというのに。
「セフレ以上の女ができたか、もしくはーー他の男と寝たとか?」
遼佑の声音は先程までよりずっと低く、まるで志貴を咎めているようだった。
いつもと違う雰囲気を纏う遼佑が怖くて、勝手に体がびくりと跳ね、背後は壁だというのに体が後ろへ逃げようとしてしまう。
その行動はまるで、遼佑の予想を肯定するかのように見えたのだろう。
「へぇ、なるほど。その男とは今後も付き合うのか? それとも一度だけか?」
すっかりと怯えが芽生えた志貴は、固まったまま動けない。
それをどう捉えたのか、さらに遼佑の機嫌が悪くなったような気がした。
今までセフレと言う存在はお互いに腐るほどにいたし、一夜だけの女性も沢山いる。
なのになぜここまで怒っているのか志貴にはわからなかった。
「そんなのいないってば」
「どうだかなぁ」
やっと絞り出せた言葉も遼佑には届いていないようだ。
これではまるで浮気を咎められてるみたいだと感じたが、自分達はそんなことを咎める間柄ではない。
そもそも遼佑には婚約者がいるじゃないかとツッコミを入れたかった。
けれどもしそれを肯定されてしまったらこの関係があっけなく終わってしまう気がして、志貴は結局口を閉ざしてしまうのだった。
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