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愛 玩 人 体〔138〕
しおりを挟む「オレ、自分の稼いだ金で病院を建てたい。どこか遠くの町に、小さくていいンだ。そこで、バージルは外科医で、ショウゴは内科医として働く。あいつ、図体はデカいけど面倒見が良いからさ。あと、ユンクってやつにその気があれば、住み込みで手伝ってもらうかな。そいつもたぶん、帰りたい場所なんてないだろうし。あれば別に無理やり働かせたりしないけどよ。そうだ、配電設備はレオンに相談して、受付業務はロイドに頼んでみようかな! 経営学はレインさんに教えてもらう……なんて、どうかな?」
そう口にしたエイジは、我ながらとんでもない願望だと思った。実現すれば、まさに理想の未来である。組織の運営は、多重に入り組んだ人間関係で構造をなしている。信頼できる仲間と支え合い、尚且、人助けが可能な病院設立は、あまりにも壮大で、単純すぎる計画だった。しかし、バージルは少年の夢を否定せず、まして、笑い飛ばしたりしない。その場で腕組みをすると、目を細めて考え込む。
(うわぁっ、云っちまったァ!! すげぇこと云っちまったーッ!!)
むしろ、冷静でいられなくなったのはエイジのほうで、キュウッと、下腹部が萎縮して恥ずかしい反応を示す。さいわい、気密容器の蓋は開いているため、ガバッと飛び出すと、仮眠室に置いてある愛玩人体用のシャツを取りに走った。
(なんだなんだ? なんだコレ!? 生殖器が痛ぇ!!)
極度の緊張と興奮のあまり、前立腺の血流が悪化して、下腹部に痛みを感じるエイジは、簡易ベッドの上で自分の一物を必死に宥めた。
(オレのド阿呆!! こんな大事なときに自慰なんかしてる場合か!? 落ちつけ、落ちつけ!!)
苦心して平静を取り戻したエイジは、愛玩服を着て仮眠室をでた。中央テーブルにバージルが用意した整腸剤が置いてある。なんとなく原因の水道水は飲みたくないため、冷蔵庫からペットボトルの天然水を取り出し、キャップを開けた。
「バージル、どこ行ったんだ?」
医師の姿が見当たらない。いつの間にか退出したようで、エイジは「ちぇっ」と、残念そうに口唇を尖らせた。
(……べつに、バージルを困らせたいわけじゃないけど、今回は、さすがにびっくりさせたかな。また、返事を保留にされちまった気分だ……)
エイジから思い切った発言が続くため、バージルの対応は注目されている。しかし、エイジが期待する回答は得られていない。ひたすら悩ましい時間だけが流れた。
+ continue +
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