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第一部 名も無き島の小さな勇者とお姫様

第49話 お姫様は猫科肉食生物

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「まだ、買うの?」
「まだって、何よ~? ちょっとしか、買ってないわ。次よ、次♪」
「ええ……分かったよ。リーナが楽しそうだから、僕も嬉しいよ」

 肌着売り場でたくさんの下着を買ったのでレオの両手は既にふさがっている。
 彼には荷物持ちで来てもらった訳ではない。
 それなのにこれは自分の仕事だからと意外と頑固なところがあるのよね。
 勇者の仕事とは思えないのですけど……。

「水着も買うんだ?」
「だからぁ。ここがきつくなったって、言ったでしょ?」
「う、うん」

 わざと胸元を広げて見せて、谷間を見せると目を逸らせようと頑張っているけど、釘付けになっているのが、視線で分かってしまう。
 あまりにも分かりやすいので逆に微笑ましいくらい。
 レオにしか見せていないし、のだから、もっと堂々と見てもいいのよ?

「これなんて、どうかしら?」
「前に着ていた赤いのより……小さくない?」
「そういうデザインなのよ。胸のサイズは合っているわ」

 レオが難色を示しているのはレオパルト柄のビキニ。
 結構、攻めたデザインで布面積は小さい。
 レオが言っている温泉で来た赤いビキニに比べたら、大胆そのもの。
 だから、逆に着るのですけど?

「レオも見たいでしょ?」

 今日の髪もレオにセットしてもらった。
 両サイドをポニーテールのようにまとめて、流したスタイルなのでレオパルト柄と合わせたら、猫科に見えるかもしれない。
 それを意識して、サイドのテールをわざと手で払って見せた。

「う、う、うん」

 落ちたわ。
 まだ、本格的に仕掛けてはいない。
 試着室で本番のつもりだったんですもの。

「レオはどれがいいの?」
「え? 僕が選んでいいの?」
「うん。だって、レオに見せたくて、着るのよ?」

 そして、一緒に選ぶことで変なのが彼に寄ってくるのも防げるわ!
 レオがかわいいから、いけないのよね。

「これはどうかな」
「ふ、ふぅ~ん」

 彼が選んだ水着は何と、シュティア柄でしたの……。
 えぇ? それを選びますのね?
 レオは意外とおませさんになってきたのかしら?

「牛さんはかわいいよね。リーナもかわいいから、いいんじゃないかな」
「そ、そう。そうよね」

 大口を開けて、太陽のような笑顔を向けてくれる君はそういう子だったわね。
 ひょっとしたら、わたしの方が色々と毒されているのかもしれないわ。
 ロマンス小説を読むのを控えた方がいいのかしら?

「これもリーナに似合いそうだよ」
「何か、レオ君がわたしのことをどう思っているのか、分かった気がするわ……」
「え? 何か、リーナ、怒ってない?」
「怒ってないわよ?」

 レオが次に選んだのがティーガー柄だった。
 わたしの口が引き攣ったのは気のせいではないと思うの。

 わたしが最初に選んだのはレオパルト柄で猫科ですわ。
 自分でも猫目できつい印象を与える顔立ちということも理解しているつもりよ。

「虎さんもかわいいよね」
「そ、そう。かわいいんだ、君の中では」

 まぁ、かわいいと思ってくれるのなら、まだ……。
 試着室の中で勝負よ♪
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