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第17話【元勇者、依頼を受ける】
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「いくつかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
彼女は手帳から目を放すとこちらに顔を向けてそう聞いてきた。
「良いですよ。ただ、答えられることならば……ですが」
俺が許可を出すと彼女は手帳にメモをとるような格好で質問をしてきた。
「えっと彼女か奥さんは居ますか?」
「はっ? い、いや居ないけど……」
「今、おいくつですか?」
「えっ? と、歳は28だがそれがどう……」
「にじゅうはち……。若い女性に興味はありますか?」
(いやいや、それって今回の依頼と関係ないなくないか?)
「好きか嫌いかでいえば好きだが、それって重要なことなのか?」
どうもよくわからない質問ばかりされているうちに僕は思わず質問に疑問を返していた。
「重要……。そう、とても重要なことですよ」
俺の女性関係や好みがどう重要なのかさっぱり分からないが彼女は手に持った手帳になにやら一所懸命に書き記していた。
「では、次に若い女性のどこに魅力を……」
その後も彼女からの質問は俺の女性関係についてのものが大半を占めていて護衛に関するものはほとんど出てこなかった。
「……いや、ギルドマスター。これは護衛依頼の顔合わせだったと思うが、この質問群を疑問に思うのはのは俺の方がおかしいのか?」
よくわからないままに彼女の質問に全て答えた俺は隣にいたマッハにそう確認をしてみる。
「別におかしくないぞ。質問も実に適格なものばかりだったと思うが?」
「そう……なのか?」
どうやらこの質問群は変ではなかったらしい。よく理解出来ないが……。
「まったく、よく考えてみな。若い女性が親子ほどとは言わないが一回りは違う年上の男性と長旅を一緒に過ごすんだ、相手の事を少しでも知っておきたいと思うのは当然の事だとは思わないか? 本当に信用出来るかどうかなんて会ったその日にわかる訳が無いのが当たり前だが、こうやって話せばそいつが誠実かどうか程度はわかるだろう。まあ、そういうことだ」
(そんなものなのか?)
「よ、よくわからないが結局のところ俺はどう判断されたんだ?」
どうも俺の理解が追いつかない次元の話になってしまっているようで戸惑いながらもそう聞くと彼女は少し顔を赤らめながら答えてくれた。
「問題ありませんのでよろしくお願いします」
彼女はそう言うと俺に握手を求めてきてそれに応えると嬉しそうに笑った。
「決まったようだな。それじゃあ詳しい手続きは担当の者と代わるからそいつと調整してくれ。ああ、ギルドの信用問題になるからくれぐれも依頼者に手を出したりするんじゃないぞ」
「出しませんよ!!」
「ははは。まあ冗談だ」
マッハはそう言うとソファから立ち上がり部屋の端に控えていた受付嬢に目配せすると部屋から出ていった。
「では、依頼と報酬についての確認をいたしますのでこちらを読んで署名をお願いします」
受付嬢はそう言って俺たちの前に書類を広げて説明を始めた。
「あっ」
書類の確認を始めた時、突然彼女が思い出したように声をあげる。
「そう言えば私、まだ自己紹介もしてませんでした」
彼女はそう言うとソファから立ち上がりお辞儀を一度してから話し始めた。
「私はマリエルといいます。親しい人にはマリーと呼ばれていましたのでそう呼んでもらえたら嬉しいです。えっと、歳は……もうすぐ17になります」
「マリエルさん……いえマリーさんですね。俺のことはアルフと呼んでください。依頼としてはマイルーン農業国の王都までの護衛で良かったんですよね? その他になにか要望とかはありますか?」
若いとは思っていたがそれほどとは思わなかった俺だったがあえてそれには触れないようにした。
「えっと、実はアルフさんに会うまでに少しばかり時間がかかってしまったのでお支払いするべき報酬額の金貨が不足してしまって……。ただ、商品として売る物はあるのでマイルーン農業国に向かう道すがら町や村に立ち寄って商売をして稼いだお金でお支払いをさせて頂きたいのです」
マリーは申し訳ないとばかりにしゅんとした表情でうつむき加減にそう話した。
「その程度のことなら別に構いませんよ。どうせ俺も一緒にマイルーンへ行くことになるのですから向こうに着いた時点で報酬を貰えれば問題ありませんよ」
「本当ですか! ありがとうございます」
(もしかして最初に手帳を必死に見ていたのは残りのお金の計算でもしていたのか?)
「では、依頼の手数料のみギルドに納めて頂いて残りは依頼の達成時に現地にてお支払いと契約書に記載させて頂きますね。ただ今回は他国での依頼完了となりこちらには戻らないつもりとの意向があるので完了時の最終支払いに関してはおふたりの自己責任にてお願いします」
ギルドの受付嬢はそう言って契約書に必要事項を書き加えた。
「これで契約は完了ですのでマリエルさんはギルドに規定の依頼手数料を納めてください。出発の時間などはおふた方で調整してもらって結構です。この後に話をされるのであればこのお部屋を使ってもらっても良いですが退出される際には受付に一言お願いします」
受付嬢はそう言うと書類を持ってお辞儀をすると部屋から出て行った。
彼女は手帳から目を放すとこちらに顔を向けてそう聞いてきた。
「良いですよ。ただ、答えられることならば……ですが」
俺が許可を出すと彼女は手帳にメモをとるような格好で質問をしてきた。
「えっと彼女か奥さんは居ますか?」
「はっ? い、いや居ないけど……」
「今、おいくつですか?」
「えっ? と、歳は28だがそれがどう……」
「にじゅうはち……。若い女性に興味はありますか?」
(いやいや、それって今回の依頼と関係ないなくないか?)
「好きか嫌いかでいえば好きだが、それって重要なことなのか?」
どうもよくわからない質問ばかりされているうちに僕は思わず質問に疑問を返していた。
「重要……。そう、とても重要なことですよ」
俺の女性関係や好みがどう重要なのかさっぱり分からないが彼女は手に持った手帳になにやら一所懸命に書き記していた。
「では、次に若い女性のどこに魅力を……」
その後も彼女からの質問は俺の女性関係についてのものが大半を占めていて護衛に関するものはほとんど出てこなかった。
「……いや、ギルドマスター。これは護衛依頼の顔合わせだったと思うが、この質問群を疑問に思うのはのは俺の方がおかしいのか?」
よくわからないままに彼女の質問に全て答えた俺は隣にいたマッハにそう確認をしてみる。
「別におかしくないぞ。質問も実に適格なものばかりだったと思うが?」
「そう……なのか?」
どうやらこの質問群は変ではなかったらしい。よく理解出来ないが……。
「まったく、よく考えてみな。若い女性が親子ほどとは言わないが一回りは違う年上の男性と長旅を一緒に過ごすんだ、相手の事を少しでも知っておきたいと思うのは当然の事だとは思わないか? 本当に信用出来るかどうかなんて会ったその日にわかる訳が無いのが当たり前だが、こうやって話せばそいつが誠実かどうか程度はわかるだろう。まあ、そういうことだ」
(そんなものなのか?)
「よ、よくわからないが結局のところ俺はどう判断されたんだ?」
どうも俺の理解が追いつかない次元の話になってしまっているようで戸惑いながらもそう聞くと彼女は少し顔を赤らめながら答えてくれた。
「問題ありませんのでよろしくお願いします」
彼女はそう言うと俺に握手を求めてきてそれに応えると嬉しそうに笑った。
「決まったようだな。それじゃあ詳しい手続きは担当の者と代わるからそいつと調整してくれ。ああ、ギルドの信用問題になるからくれぐれも依頼者に手を出したりするんじゃないぞ」
「出しませんよ!!」
「ははは。まあ冗談だ」
マッハはそう言うとソファから立ち上がり部屋の端に控えていた受付嬢に目配せすると部屋から出ていった。
「では、依頼と報酬についての確認をいたしますのでこちらを読んで署名をお願いします」
受付嬢はそう言って俺たちの前に書類を広げて説明を始めた。
「あっ」
書類の確認を始めた時、突然彼女が思い出したように声をあげる。
「そう言えば私、まだ自己紹介もしてませんでした」
彼女はそう言うとソファから立ち上がりお辞儀を一度してから話し始めた。
「私はマリエルといいます。親しい人にはマリーと呼ばれていましたのでそう呼んでもらえたら嬉しいです。えっと、歳は……もうすぐ17になります」
「マリエルさん……いえマリーさんですね。俺のことはアルフと呼んでください。依頼としてはマイルーン農業国の王都までの護衛で良かったんですよね? その他になにか要望とかはありますか?」
若いとは思っていたがそれほどとは思わなかった俺だったがあえてそれには触れないようにした。
「えっと、実はアルフさんに会うまでに少しばかり時間がかかってしまったのでお支払いするべき報酬額の金貨が不足してしまって……。ただ、商品として売る物はあるのでマイルーン農業国に向かう道すがら町や村に立ち寄って商売をして稼いだお金でお支払いをさせて頂きたいのです」
マリーは申し訳ないとばかりにしゅんとした表情でうつむき加減にそう話した。
「その程度のことなら別に構いませんよ。どうせ俺も一緒にマイルーンへ行くことになるのですから向こうに着いた時点で報酬を貰えれば問題ありませんよ」
「本当ですか! ありがとうございます」
(もしかして最初に手帳を必死に見ていたのは残りのお金の計算でもしていたのか?)
「では、依頼の手数料のみギルドに納めて頂いて残りは依頼の達成時に現地にてお支払いと契約書に記載させて頂きますね。ただ今回は他国での依頼完了となりこちらには戻らないつもりとの意向があるので完了時の最終支払いに関してはおふたりの自己責任にてお願いします」
ギルドの受付嬢はそう言って契約書に必要事項を書き加えた。
「これで契約は完了ですのでマリエルさんはギルドに規定の依頼手数料を納めてください。出発の時間などはおふた方で調整してもらって結構です。この後に話をされるのであればこのお部屋を使ってもらっても良いですが退出される際には受付に一言お願いします」
受付嬢はそう言うと書類を持ってお辞儀をすると部屋から出て行った。
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