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8.どうやらカモがネギしょって歩いていた、らしい
しおりを挟む「ぐっ……ところで君は一人で来たの?」
(妙な色気のある子だな)
思わずギャップのある大人っぽい少年の表情にドキリとしてしまい、誤魔化すようにコルトは質問した。
「それを聞きたいのはこっちだ。お前こそ一人で来ているのか?」
「? そうだけど」
コルトが素直に答えれば、銀髪の少年は大きなため息をついた。
「見た感じ腕は立ちそうだから、一人でも危険はないと単独で観光をしているといったところか。……格好の餌食だな」
「餌食?」
「ああそうだ。先程のも、わざと壊した皿を通行人のせいにして売りつける詐欺の手法だ。まんまと嵌められたな」
「ええええ??!!」
(人攫いでは? と危惧はしたけど、まさかそんな……。たまたま通りかかったときにお皿が割れたという不幸な偶然が重なっただけではなく?)
「いや、でも、それだと詐欺に会っていたのは君ってことだよね? まさかこんな小さい子に高額な商品を買わせようとするなんてことは……」
「奴が狙ってたのは私ではなく私の保護者だ。このくらいの年齢の子どもなら簡単に騙せるし、現場を見ていない者相手なら、子どものせいにするのはたやすい」
「なる、ほど……?」
「しかも、お前が常識知らずのボンボンだと察したんだろう。法外な値段を吹っかけてきやがった。大体このあたりの露店は1000ルギーもするような商品を店頭になんて並べない」
「えっ?!」
(屑魔石……確かに十個以上は買ったけど7000ルギー……)
安くないとは思ったが、もしかしてあの老魔女にもぼったくられたんだろうか。いやでも一個単価にすれば1000ルギー以下だし……。そういえば、気前がいい男が好きだ、とか言っていなかったか? それってつまり……。
「その顔だと他でもカモられてるな」
動きの止まってしまったコルトに銀髪の少年は呆れた表情を向ける。
「あ、でも護衛がいた店だし……」
「そりゃ高価な品だって隠して持っているし、売り上げもそれなりにある。護衛くらいは雇うさ。店頭に並べないってのは盗難防止って意味もあるが、ここは海風が強いから塩や砂で傷みやすいんだ。商品に傷でもついてみろ、価値が下がる」
「たしかに……!」
呆れ顔で説明する少年の話をコルトは真剣な顔で聞くと大きくうなずいた。
(うっ、エリックが心配してた俺が箱入りってこういうことか……すまん)
リンドの実に噛り付き、シャリシャリと最後まで食べ終えた少年は再び大きくため息をついた。
「どうせ王都あたりに住んでいる貴族なんだろ? 悪いことは言わない。腕に覚えがあるんだとしたら、護衛でなく商談に長けた従者でも連れ歩け」
「面目ない」
しょんぼりと肩を落として素直に反省を示したコルトに、銀髪の少年はグッと言葉を詰まらせる。
「いや、その、なんだ、私こそ少し言い過ぎたな。……今回のことは私の不手際でもある。助けってもらったこと、礼を言う。巻き込んですまなかった」
銀髪の少年はコルトに向き合うと、しっかりと頭を下げた。
(?? 本当にこの子、幾つなんだろう?)
あまりにも堂々とした少年の様子に、コルトは銀色の丸々とした頭をしばし無言で見つめてしまった。
「申し訳ない」
「あ、いや、大丈夫だから謝らないで頭を上げて! 俺が勝手にやったことだし、むしろ余計なことをして、こちらこそごめんね」
再び少年から発せられた謝罪の言葉に、コルトは大慌てで返事をする。
コルトの言葉に少年は顔を上げた。
意志の強そうな新緑色の瞳がコルトを見据える。よくよく見れば右眉に傷があった。大きくはないが刃物傷というより、何か鋭い爪をもつ動物に引っ掻かれた痕だろう。
(しっかりしてるからって、このままにするわけにはいかないよな)
いくら大人びて見えても子どもは子どもである。頭が良かろうと、それこそ強引に連れ攫われでもしたら小さな体で抗うのは不可能だ。
「えっと、それで話を戻すけど、君は一人でこの市場に来たの?」
コルトの問いかけに銀髪の少年は少しばかり躊躇したものの、静かにうなずいた。
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