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第2章
89話 嬉しい
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夜の帳も降りて、すっかり暗くなっている廊下を二人、黙って歩いていた。
黙々と歩く彼をまた、チラリと横目に見ると、また、パチリと目が合って。
「あ、あの。この度は本当にありがとうございました。あんなに元気な様子の第4側妃様は久々に拝見出来ましたから……。」
「いえ……。ロレンツォ殿下……泣いておられましたね。あの殿下が涙されるなんて…よっぽどの事でしょうね。」
僕は思わず苦笑する。
対するサフィルも控えめに笑った。
「えぇ。初めて見ました。いつも殿下には……正直手を焼かされていましたから。最近は特に、どんどん顔色が悪化していた第4側妃様のご様子を耳にされて、とても荒れておられていましたし。とは言え、あの倉庫裏でのあの様な発言、我が主人ながら、本当に申し訳ございませんでした。」
「それだけ……殿下の焦燥が顕著になっていたのでしょう。これで少しは貴方の待遇が良くなればいいのですが。」
ハハ、と僕は軽く笑って見せた。
「いえ、私の事などより。クレイン公子様、貴方は殿下の……いえ、我々の恩人です。本当に……本当にありがとうございました。」
サフィルはそう言うと、カレンをその手に抱えたまま、足を止め、僕に頭を下げた。
そして、顔を上げると、僕の目を見て。
「このご恩は絶対に忘れません。今後、クレイン公子様に何かございましたら、絶対に助力させて頂く事をお約束致します。」
真摯に言ってくれる彼に、僕は目元をフッと緩める。
「そのお言葉だけでも、充分に嬉しいです。ありがとう。」
「いえ、言葉だけでは…」
「フフッ、ありがとうございます。…頼りに、していますね。現に今も頼ってますしね。」
僕はそう言って、彼の腕の中でぐぅぐぅ眠るカレンを見やった。
こうして、彼と穏やかに話せる関係になれたのも、このカレンとカイトのお陰だ。
そうして、テオの後から遅れて戻って来た僕らは、迎えられた宮女達に盛大に迎えられた。
サフィルはカレンを宮女達に任せると、彼女の室内を後にして。
そして、すぐ隣の僕の部屋まで送ってくれた。
「お疲れでしょうに、こちらまですみません。ありがとうございました。」
「あ、あのっ……」
フッと笑う僕に、サフィルは何か言いたげに手を伸ばして来たが。
その手は宙に浮いたまま、下がっていく。
首を傾げる僕に、彼は。
「……また、お会い出来ますか?」
彼の方が僕より背が高いのに。
そんな僕を見上げる様に、俯きながら視線だけはこちらに寄越してくる彼に。
何だか落ち着かない心地がした。
「巫子達が復活したら、また色々救済に回る予定ですから。殿下とご一緒に来て下さるのでしょう?」
ぎこちなく笑う僕に、彼は何やら言いたげな様子で。
でも、口にしてくれないから、僕はどうしたらいいのか、分からない。
けれど、言いたい事があるのは、僕も同じなんだ。
どうしようかと、逡巡したが。
こうして、二人だけで話せる事は、そうそう無いだろうから。
僕は思い切って口にした。
「……せっかく出来たご縁です。これからも、どうか親しく…して、下さいますか?」
思ったよりたどたどしくなってしまった。
けれど、これで終わりたくなくて。
意を決して口にしたら。
彼の顔がパァッと明るくなって、僕はホッとした。
「も、もちろんです。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!」
とても嬉しそうに笑ってくれたから、それだけで僕も嬉しかったけれど。
彼はもっと言ってくれて。
黙々と歩く彼をまた、チラリと横目に見ると、また、パチリと目が合って。
「あ、あの。この度は本当にありがとうございました。あんなに元気な様子の第4側妃様は久々に拝見出来ましたから……。」
「いえ……。ロレンツォ殿下……泣いておられましたね。あの殿下が涙されるなんて…よっぽどの事でしょうね。」
僕は思わず苦笑する。
対するサフィルも控えめに笑った。
「えぇ。初めて見ました。いつも殿下には……正直手を焼かされていましたから。最近は特に、どんどん顔色が悪化していた第4側妃様のご様子を耳にされて、とても荒れておられていましたし。とは言え、あの倉庫裏でのあの様な発言、我が主人ながら、本当に申し訳ございませんでした。」
「それだけ……殿下の焦燥が顕著になっていたのでしょう。これで少しは貴方の待遇が良くなればいいのですが。」
ハハ、と僕は軽く笑って見せた。
「いえ、私の事などより。クレイン公子様、貴方は殿下の……いえ、我々の恩人です。本当に……本当にありがとうございました。」
サフィルはそう言うと、カレンをその手に抱えたまま、足を止め、僕に頭を下げた。
そして、顔を上げると、僕の目を見て。
「このご恩は絶対に忘れません。今後、クレイン公子様に何かございましたら、絶対に助力させて頂く事をお約束致します。」
真摯に言ってくれる彼に、僕は目元をフッと緩める。
「そのお言葉だけでも、充分に嬉しいです。ありがとう。」
「いえ、言葉だけでは…」
「フフッ、ありがとうございます。…頼りに、していますね。現に今も頼ってますしね。」
僕はそう言って、彼の腕の中でぐぅぐぅ眠るカレンを見やった。
こうして、彼と穏やかに話せる関係になれたのも、このカレンとカイトのお陰だ。
そうして、テオの後から遅れて戻って来た僕らは、迎えられた宮女達に盛大に迎えられた。
サフィルはカレンを宮女達に任せると、彼女の室内を後にして。
そして、すぐ隣の僕の部屋まで送ってくれた。
「お疲れでしょうに、こちらまですみません。ありがとうございました。」
「あ、あのっ……」
フッと笑う僕に、サフィルは何か言いたげに手を伸ばして来たが。
その手は宙に浮いたまま、下がっていく。
首を傾げる僕に、彼は。
「……また、お会い出来ますか?」
彼の方が僕より背が高いのに。
そんな僕を見上げる様に、俯きながら視線だけはこちらに寄越してくる彼に。
何だか落ち着かない心地がした。
「巫子達が復活したら、また色々救済に回る予定ですから。殿下とご一緒に来て下さるのでしょう?」
ぎこちなく笑う僕に、彼は何やら言いたげな様子で。
でも、口にしてくれないから、僕はどうしたらいいのか、分からない。
けれど、言いたい事があるのは、僕も同じなんだ。
どうしようかと、逡巡したが。
こうして、二人だけで話せる事は、そうそう無いだろうから。
僕は思い切って口にした。
「……せっかく出来たご縁です。これからも、どうか親しく…して、下さいますか?」
思ったよりたどたどしくなってしまった。
けれど、これで終わりたくなくて。
意を決して口にしたら。
彼の顔がパァッと明るくなって、僕はホッとした。
「も、もちろんです。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします!」
とても嬉しそうに笑ってくれたから、それだけで僕も嬉しかったけれど。
彼はもっと言ってくれて。
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