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1話
しおりを挟む「突然で申し訳ないが、私は幼馴染のレイチェルと結婚することにした。お前とは婚約破棄だテレサ」
「ウィング様……何を言ってるんですか……? 婚約破棄ですって?」
私は話の流れに付いていけないでいた。婚約破棄と突然言われても困ってしまうのだけれど……。ウィングは侯爵令息で位が非常に高い人物だ。伯爵令嬢である私の婚約者でもある。
「私はレイチェルと結婚すると言っているんだ。お前との婚約は解消する」
「そ、そんな……酷いです。急に……今までの私達の苦労はどうなるんですか!?」
「ふん、そんなことは知ったことではないわ」
ウィングの属しているアラート侯爵家と私のミリオン伯爵家とは昔からの付き合いだった。今回、婚約することが決まったことで大きな事業が動いたのだ。私達のミリオン家が主導で行っていたレジャーランドの開発をアラート家に移すというものだった。それにより、そこから発生する収益の多くがアラート家に流れるように手筈を揃えたというのに……。
これも全ては私達の関係性を考慮してのことだった。ウィングはその辺を分かっているのかしら?
「簡単に婚約破棄と言いますけど、私達だけの問題では終わりませんよ? レジャーランド建設の件はどうするつもりですか? 他にも今回の婚約に当たって、利益を献上した案件があったと思いますが……」
婚約破棄するということは、それらが全てなくなることを意味する。今まで掛けた経費も多いし、元に戻すとなると……なかなか大変だった。
「なんだそんなことか。心配することはない、テレサ。譲り受けた事業はこのまま進めるさ。利益についても変更後のものを採用すれば問題ない。単純に私とお前との間での婚約破棄が成立するだけだ。なに、慰謝料位は払ってやるよ。今回の事業移管で発生する利益から十分賄えるしな」
「なっ……! そんなこと……!」
ウィングの言った言葉は到底信じられないことだった。レジャーランドの事業移管などは私がアラート家に嫁ぐことが前提の決まり事のはず……それがなくなったのでは、事業移管をするはずがない。莫大な利益を取られるだけになるからだ。
「父上に言って納得して貰うさ。お前はすぐに出て行ってくれ。レイチェルはヤキモチ妬きだからな。お前と一緒のところを見られると困るんだ。正式な婚約破棄は書面の上で行おう」
「ふざけないでください……! こんな無茶苦茶な婚約破棄がありますか!」
「うるさい奴だな……とにかく、これは決定事項だ。お前が騒いだところで何も変わらん。あまり抵抗しない方がいいと思うぞ? 執事には殴ってでも追放するように言ってあるからな」
「えっ……嘘……」
気付けば私の周りには屈強な男性陣が立っていた。ここで私がこれ以上抵抗すればどういう目に遭うか……しかもそれを正当防衛にしかねない状況だ。
その後の私は何も言うことを許されなかった。荷物を持ってアラート侯爵家の屋敷から出て行き……馬車で実家に帰る以外になかった。こんな無慈悲なことが起こるなんて……私の今後はどうなってしまうのだろうか……。
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