婚約者と妹が酷過ぎるわけでして……

マルローネ

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11話

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 信じられない……こんなことがあって良いのかしら……。


「バルサーク様、この屋敷は……?」

「ああ、その……なんだ。まあ、私が特別に作らせた代物ではある」

「それは承知しておりますが……」


 どうして、お父様から譲り受けたローザハウスと外観が酷似しているのだろうか? そこが最大の謎だった。

「どうしてローザハウスと外観がそっくりなのですか……?」

「そうだな……私としても、君が住んでいた屋敷とそっくりに作ってしまったのは申し訳ないと思ってはいたのだ」

「はい……」

「ローザ嬢のことが気になっていたと言っただろう? この屋敷もその名残りのようなものかな」


 バルサーク様はとんでもないことを言っているような気がする……エリーゼさんとヨハンさんはついに吹き出して笑い始めていた。なるほど、ストーカーというのはそういうワケか。


「気を悪くさせてしまったか? 正直に答えてほしい」

「いえ、どちらかというと、エリーゼさんやヨハンさんと同じ気持ちかもしれませんね」

「あの二人と同じ気持ち? どういうことだろうか……?」


 バルサーク様は私の気持ちに気付いていないようだった。まあ、私もエリーゼさん達の気持ちが分かるわけではないので、その辺りは適当な答えだったのだけど。つまりは悪い気分ではなかったということだ。なんというか、逆に笑えてしまっていた。


「いえ……何といえば良いのでしょうか。バルサーク様がローザハウスと同じ外観の屋敷を、この貴族街に作っていらっしゃったことが面白かったのです」

「面白かったのか……? そ、そうか……」

 バルサーク様はもしかしたら、私が引いてしまうのではないかと怖がっていたのかもしれない。引くというよりは、面白さがはるかに勝ってしまっていた。まさに、エリーゼさんやヨハンさんの気持ちと同じというか。

 なぜこんな気持ちになっているのかは、自分でも良く分からないけれど……単純に私のことを好いてくれていると言ってくれたバルサーク様だからこそなのかもしれない。


「外観は似せて作ることが出来たが、内部は全く違うから安心してくれ」

「それはわかっております」

 流石にそこまでそっくりだったら、引いてしまうけれど……それはないようで安心だった。それにしても、バルサーク・ウィンドゥ大公殿下がこんなにも大胆なお方だったなんて思いもしなかった。

 貴族の長い歴史の中でも、こんな告白? をした殿方は皆無なんじゃないだろうか、と思えるほどに色んな方向でぶっ飛んでいる気がする。

 貴族が「ぶっ飛んでいる」という言葉を使うのもどうかとは思うけれど、それだけ驚きで溢れていたのだ。


「バルサーク様、このお屋敷を私に見せていただいた理由は、ローザハウスと似ているということをおっしゃりたかったのですか?」

「まあ、そういうのもあるが……つまりなんだ。本来ならもっと先に提案する予定だったのだが、この屋敷を君に進呈しようと思ってな」

「ええっ!?」


「ちょうど、リシェルにローザハウスを奪われたのだ。その代わりにしてもらって構わない」


 急展開、とはまさにこのことを言うのかもしれない。まさか、ローザハウスを奪われたその日に新しい屋敷を譲り受けられるチャンスが到来してくるなんて……。
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