私の婚約破棄で腹違いの王子が激怒してくれた件

マルローネ

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3話

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「彼女がリリス・カインリー伯爵令嬢か……」

「そのようですわね」

「アグラ様も大変だな。あんな娘のことでネック侯爵家の名に傷を付けてしまったんだからな」

「まあ、大丈夫でしょうネック侯爵家なら……カインリー伯爵家程度のことでは大きな問題にはならないわ」

「それもそうか。はははははは」


 私は以前から予定していたパーティーに出席していた。お父様も付いて来てくれたけれど、今は挨拶回りで私しかいない。予想通りだけれど……アグラが出したと思われる噂が大きく広がっているようだった。


「あれが……リリス様」

「リリス様だね……」

「アグラ様の話では婚約破棄にせざるを得ない程の人物だということだが……ふむ」


 周囲の貴族は男爵、子爵、伯爵、侯爵家もいることだろう。私に対して言いたい放題だった。流石に私の家系がそこそこ上なこともあってか、直接文句を言って来る人はいなかったけれど……まあ、周囲で噂話を信じて話す人はより性質が悪いとも言えるわね。

 こんな噂話を聞くと悲しくなってくる……私はアグラ・ネック侯爵と婚約したわけだ。こんな噂話を流されるために婚約わけじゃない。私を選んでくれた……侯爵家との繋がりは必ずカインリー伯爵家にとって良い方向へ向かうと思って婚約したのに。結果的に見てみればマイナスになってしまったわけだ。

 お父様はネック侯爵家に復讐……それに近いことをしようと考えているのだろうけれど、おそらくそれは無理だろうと思えた。このパーティーでの噂話がその答えだ。


「誰も私の味方になってくれない……」


 アグラ・ネック侯爵家よりも上の家系は2家系しかない公爵家くらいのものだ。あとはシャングリラ王家だけ……つまり、ほとんど私の味方になってくれる存在はいないわけで……。子爵家や男爵家の中には私のことを信じてくれる人がいるかもしれないけれど、それは焼け石に水でしかなかった……ありがたいのだけれどね。

「私の味方なんて……いるわけがない」

 悔しくて悲しかった……こんなに惨めな想いは生まれて初めてだと思う。同時に貴族としての立場がこんなにも影響するなんて思わなかった。お父様は抵抗してくれると約束してくれたけれど……それも焼け石に水になる可能性が高かった。

 いえ、逆に私達の家系にとって不利益になる可能性もある……このまま何もしないのが正解なのか。

「あ、王子殿下だわ!」

「おお! このパーティーに参加なされていたのか!」


 そんな時、パーティー会場の入り口付近に多数の護衛と共に王子殿下が現れた。今の私にとってはどうというわけではないけれど……あの方は確か第二王子殿下のイクサ・シャングリラ様だったかしら?
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