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10話 カルロス達との会話 その3
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「とにかく、カルロス殿。あなたはもうフローラとは何の関係もないはずです。付き纏いにも近い行為は避けた方が無難かと思われますが? あなたの家にとってもね」
「グラン殿、伯爵令息の立場でよくそんなことが言えますな。なかなか勇気のある行動だと言えるでしょう」
「それは……」
自分は侯爵令息という立場だから、グランよりも上だと言っているようにしか見えない。シングマ侯爵令息ってこんな人だったっけ? グランは少し無言になってしまっていた。
「話を戻そうか、フローラ」
「は、話を戻す……? どういう意味ですか?」
「フローラ、私はとても悲しんでるんだよ。君がそんなに簡単に私のことを忘れてしまったことをね」
「いえ、忘れたというか……シングマ侯爵令息は、お隣のリディア様と婚約されましたよね?」
「シングマ侯爵令息……」
面倒臭い反応というのは、こういうことを言うのかもしれない。彼は明らかに、自分がカルロスと呼ばれないことを意識しているようだった。怒っているという程ではないかもしれないけれど、あまり良い気分でないことは確かなのだろう。
この反応はとても面倒かもしれない……だからといって「カルロス様」と呼ぶわけにもいかないし、グランに対しても申し訳ない気がしてしまうから。
「リディア嬢との婚約は、互いの国の仲を良くする為のもの……いわゆる国益を優先した、というものだ。その点に関しては、フローラにもちゃんと伝えているだろう?」
「それは聞いておりますが……」
「良かったよ。まあ、聡明な君のことだから、こんな短期間の間に忘れるなんて思ってはいなかったがね」
シングマ侯爵令息はとても満足気な表情をしている。今の会話を聞いているはずのリディア嬢も、特に嫌な顔をしている様子はない。彼女からしてみれば、シングマ侯爵令息がこういう態度を取ることは、想定内ということなのかしら?
私だったらすごく嫌だけど、リディア嬢とシングマ侯爵令息とは完璧な政略結婚なのだから、恋愛模様に関しては寛容なのかもしれない。
それにしても、シングマ侯爵令息の言葉は異常な気がするけれど……出来れば、リディア嬢に制止してもらいたい程だ。
「いいかい、フローラ」
「は、はい……なんでしょうか?」
「君は私のところへ戻って来るべきなんだよ」
「は?」
私は思わず素の声が出てしまった。こういうパーティーでの会話の場合、ある程度声色を作るものだけれど、それを忘れてしまったのだ。
「本来なら私ではなく、君の方からこういう話を持ち掛けてくるのが普通なのに。これではまるで、私が未練がましい男みたいに映るじゃないか。そういう風に映るのは女性の役目……伯爵令嬢であるフローラの役目だろ?」
「ええ……」
シングマ侯爵令息は何を言っているのだろうか……彼は私が引いていることに気付いていないのか。
「本当にそうですわね、カルロス様。ここはしっかりとおっしゃった方がよろしいのではなくて? グラン様の前で言うのは少々、失礼に当たるかもしれませんが」
「なに心配はいらないよ。私の方が地位は高いのだから。フローラ」
「なんでしょうか……?」
引いてしまっている私に、シングマ侯爵令息は追い打ちを掛けるようだ。もうあまり聞きたくはないんだけれど……こんな人を好きになっていたのかという幻滅が凄いし。
「私とヨリを戻して欲しいんだ。もう君を悲しませることはしないからさ、約束するよ」
ほらやっぱり幻滅が凄い……シングマ侯爵令息は、さっきまでの話を何も聞いていなかったわけね。
何から話せばいいのかすら分からなくなってしまう……はあ、と大きく溜息が漏れてしまっていた。
「グラン殿、伯爵令息の立場でよくそんなことが言えますな。なかなか勇気のある行動だと言えるでしょう」
「それは……」
自分は侯爵令息という立場だから、グランよりも上だと言っているようにしか見えない。シングマ侯爵令息ってこんな人だったっけ? グランは少し無言になってしまっていた。
「話を戻そうか、フローラ」
「は、話を戻す……? どういう意味ですか?」
「フローラ、私はとても悲しんでるんだよ。君がそんなに簡単に私のことを忘れてしまったことをね」
「いえ、忘れたというか……シングマ侯爵令息は、お隣のリディア様と婚約されましたよね?」
「シングマ侯爵令息……」
面倒臭い反応というのは、こういうことを言うのかもしれない。彼は明らかに、自分がカルロスと呼ばれないことを意識しているようだった。怒っているという程ではないかもしれないけれど、あまり良い気分でないことは確かなのだろう。
この反応はとても面倒かもしれない……だからといって「カルロス様」と呼ぶわけにもいかないし、グランに対しても申し訳ない気がしてしまうから。
「リディア嬢との婚約は、互いの国の仲を良くする為のもの……いわゆる国益を優先した、というものだ。その点に関しては、フローラにもちゃんと伝えているだろう?」
「それは聞いておりますが……」
「良かったよ。まあ、聡明な君のことだから、こんな短期間の間に忘れるなんて思ってはいなかったがね」
シングマ侯爵令息はとても満足気な表情をしている。今の会話を聞いているはずのリディア嬢も、特に嫌な顔をしている様子はない。彼女からしてみれば、シングマ侯爵令息がこういう態度を取ることは、想定内ということなのかしら?
私だったらすごく嫌だけど、リディア嬢とシングマ侯爵令息とは完璧な政略結婚なのだから、恋愛模様に関しては寛容なのかもしれない。
それにしても、シングマ侯爵令息の言葉は異常な気がするけれど……出来れば、リディア嬢に制止してもらいたい程だ。
「いいかい、フローラ」
「は、はい……なんでしょうか?」
「君は私のところへ戻って来るべきなんだよ」
「は?」
私は思わず素の声が出てしまった。こういうパーティーでの会話の場合、ある程度声色を作るものだけれど、それを忘れてしまったのだ。
「本来なら私ではなく、君の方からこういう話を持ち掛けてくるのが普通なのに。これではまるで、私が未練がましい男みたいに映るじゃないか。そういう風に映るのは女性の役目……伯爵令嬢であるフローラの役目だろ?」
「ええ……」
シングマ侯爵令息は何を言っているのだろうか……彼は私が引いていることに気付いていないのか。
「本当にそうですわね、カルロス様。ここはしっかりとおっしゃった方がよろしいのではなくて? グラン様の前で言うのは少々、失礼に当たるかもしれませんが」
「なに心配はいらないよ。私の方が地位は高いのだから。フローラ」
「なんでしょうか……?」
引いてしまっている私に、シングマ侯爵令息は追い打ちを掛けるようだ。もうあまり聞きたくはないんだけれど……こんな人を好きになっていたのかという幻滅が凄いし。
「私とヨリを戻して欲しいんだ。もう君を悲しませることはしないからさ、約束するよ」
ほらやっぱり幻滅が凄い……シングマ侯爵令息は、さっきまでの話を何も聞いていなかったわけね。
何から話せばいいのかすら分からなくなってしまう……はあ、と大きく溜息が漏れてしまっていた。
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