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5話
しおりを挟む「これは……! ライマ王子殿下……! ようこそいらっしゃいました……!」
「ああ、アトラス殿。お邪魔させてもらう。済まないな」
「いえ、とんでもないことでございます! どうぞお入りくださいませ!」
「ああ、ありがとう」
ライマ様はお父様に案内されて応接室の扉をノックした。そのまま用意されていた椅子に座るライマ様。その対面には私とお父様が座った。
「本日はどのようなご用件なのでしょうか? ライマ王子殿下」
「いや、単純にフィリアの婚約を祝しにやって来たのだが……それはどうやら敵わないと聞いてな」
「な、なるほど……そういうことでしたか。それではもう、婚約破棄のこともフィリアから聞いているのですね?」
「ああ、もう既に聞いているよ。その話をしに来たわけだな」
「左様でございましたか」
流石のお父様もいきなりの王子殿下登場に驚きを隠せないようだった。メイド達に持ってこさせるはずの飲み物ももたつているようだし。まあ、無理もないけれどね。
「ライマ王子殿下、既に宿の手配は完了されているのでしょうか?」
「そのことなんだが、本来の宿はキャンセルしようと思う。迷惑でなければこちらに泊めてもらえないだろうか?」
「え、ええ……我々としては願ってもないことですが……よろしいのですか? キャンセルされても?」
「それについては問題ないさ。既に許可はいただいているのでな」
早い……ここに辿り着く前に宿泊予約のキャンセルを済ませていたのね。抜け目ないと言うかなんというか……流石は強引なライマ王子殿下だった。
「それでは本日はこちらにお泊りになるということでよろしいのでしょうか?」
「うむ、よろしく頼む。アトラス殿」
「はい。こちらこそよろしくお願いいたします!」
「ははは、1年振りだな」
「左様でございますね」
ライマ様はお父様と厚く握手を交わしていた。こういう場合は男の友情とでも言えばいいのかしら? 年齢差はけっこう開いているけれどね。お父様の方が大分歳上になる。
「それでは、泊っていただく場所はフィリアの部屋ということで……」
「な、なに言ってるんですか! お父様!」
あまりのお父様の発言に私はびっくりしてしまった。私とライマ様が同じ部屋? いやいや、あり得ないから!
「冗談だよ。本気にするな」
「わ、わかってますけど……笑えない冗談です! ライマ王子殿下にも失礼ですよ!」
私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。でも……ライマ様はあまり気にしている様子はなくて。
「なんだ冗談だったのか。私は一向に構わなかったのだが……」
「ライマ王子殿下……」
そんな冗談が飛び交う一時となっていた。いえ、楽しいからいいんだけれど……なんだかもやもやしてしまうわね。
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