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15話 覆面の下 その2

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「こ、こんなことが……!」


 スティーブン様は目の前の光景が理解できていない様子だった。確かにその気持ちは分からないでもない。ジョージ様の護衛……護衛自体も居たのは確かだけれど、覆面の護衛に混ざって議員の方々が混ざっていたのだから。

 スティーブン様からすれば寝耳に水状態……完全に想定外の出来事だろう。まあ、洞察力の働くお方であれば、ジョージ様と覆面の方々との会話は見逃さなかったはずだから、自業自得ではあるんだけどね。

「こんなバカな……なぜ、議員の方々がこんな場所に……? オウガート議長殿まで……!」


 スティーブン様は予想通りだったけれど、相当に取り乱していた。議員の方々の身分も侯爵前後と非常に高い。それに加えてケルヴィン・オウガート公爵閣下の姿まであったのだから。


 ケルヴィン・オウガート公爵閣下の身分は当然、スティーブン様よりも上になる。当主という立場を考慮すれば、公爵令息であるジョージ・ハモンド様よりも上だと言えるだろう。


 実際、オウガート公爵家の身分は非常に高く、その権力は王族にも匹敵すると言われている。議会の議長を務めている反動と言えるのかもしれない。


 そんなオウガート議長がスティーブン様に話しかけた。


「スティーブン・ジオス侯爵……」

「は、はい……!」


 流石のスティーブン様も非常に緊張しているようだった。明らかに遅い態度だけれどね。


「アンネリー嬢への身勝手な婚約破棄、慰謝料の不払い、別荘地の建設費用の要求、ピエール湖の開発を議会に通しているという嘘……これらは全て犯罪行為にも近いと言えるでしょう。いくら侯爵殿とはいえ……無事に済むとは思われないことだ」

「そ、そんな……! 私は軽い気持ちで……! それでも罪になってしまうのですか……!?」


「当たり前でしょう。なんですか、その軽い気持ちというのは? つまりはシムルグ殿やアンネリーに行ったことも、全て冗談半分だったと言うのですか?」

「そ、それは……!」


 ジョージ様の怒りに満ちた言葉にスティーブン様は完全に言葉を失ってしまっていた。当たり前のことだけれど……そもそも最初から、スティーブン様が反撃出来る手札なんて存在しないのだから。

「ジョージ殿、後は我々議会にお任せください。スティーブン・ジオスへの罰は……私達でしっかりと判定致します」

「お手数をお掛け致しますが、よろしくお願いいたします」

「いえいえ。とんでもないことでございますよ」

「これで、とりあえずは一件落着……と言えるだろうか?」

「はい、お父様。完全に一件落着かはともかく、それに限りなく近づいたと思います」


 色々と不安が大きかった私とお父様だったけれど、ここに来てようやく笑顔を見せることが出来た。これも全て、ジョージ様と議員の方々のおかげと言えるわね。
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