愛のJACK POT!

水戸けい

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エピローグ

ふたりの体温が混ざり合い、ひとつになる。

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   * * *

 乗船してすぐに指輪をプレゼントされ、それだけでも充分すぎるほどなのに、琉偉はすばらしいランチのコースも予約してくれていた。

 ひさしぶりに目にする琉偉のハンサムな姿に、本当にこんなにステキな人が、私にプロポーズをしてくれたのかと不思議な気持ちになる。

 食事を終えて席を立つ前には、マーガレットの花束をプレゼントされた。花言葉は真実の愛だと聞かされて、心の奥がムズムズとする。

 こんなにしあわせでいいのかな。

 真面目に、おとなしく、目立たずまっすぐ生きてきた。だから幸運を引き当てられたのだ。真理子の母親はそう言って、自分の育て方は間違っていなかったと胸を張った。破天荒な妹が家庭に収まったのに、真理子にはそんな兆しがすこしもないことに、厳しく育てすぎたかもしれないと、多少の責任を感じていたらしい。

 客室に花瓶を用意してもらい、それを活けた真理子は置き場所をどうしようかと室内を見回した。琉偉がそっと両手で花瓶を取って、窓際のテーブルへ乗せる。光を受けたマーガレットと窓から見える青い空のコントラストが美しくて、真理子はほほえんだ。

「真理子」

 琉偉の胸に抱き寄せられる。顎に手をかけられて、上向かされた真理子はまぶたを閉じた。そっと琉偉の唇が落ちる。

 琉偉の匂い――。

 唇をついばまれ、琉偉の首に腕を回す。毎日声を聞いていた。そのたびに触れられないことがさみしかった。キスがしたくてたまらなかったと言えば、はしたないと思われるだろうか。

「んっ、ん……、ふ、ぅ……、琉偉」

「……ずっと、キスがしたかった」

 熱っぽくささやかれ、真理子はクスクス笑いながら琉偉の胸に額を擦りつけた。

「真理子?」

「ううん。――おんなじ気持ちだったんだなぁって、安心をしただけ」

 真理子の髪を、琉偉の指が梳く。ギュッと琉偉にしがみつけば、トントンと背中をあやすようにたたかれた。

「真理子」

「ん?」

「真理子の体中にキスしたい」

 ポッ、と真理子の体中に熱が広がる。

「イヤなら、夜までガマンする」

 ずるい、と真理子は口の中でつぶやく。聞こえなかった琉偉が、身をかがめた。

「そういう聞き方、ちょっとずるい」

「どうして?」

 恥ずかしくて、唇を尖らせた真理子の真っ赤な顔を見た琉偉は、クックッと喉を震わせながら真理子を抱き上げ、ベッドに下ろした。

「そんな顔をされたら、イヤだと言われてもガマンができないな」

「琉偉……」

「愛してる、真理子」

「……私も」

 うん、とうなずいた琉偉の唇が、やさしく真理子の唇を押しつぶす。甘いキスに自然と唇が開き、琉偉の舌が口内に侵入した。官能の前菜を味わう琉偉の舌を軽く吸うと、琉偉がうっとりと目を細めた。彼が感じているのだとわかって、真理子は琉偉の舌に舌を絡めた。

「ふっ、……んっ、ぅ……、ふぁ、んっ、うう」

 鼻にかかった甘い息が漏れる。琉偉の舌が真理子の鼻に触れて、ぱくりと噛まれた。

「きゃっ」

「はは……」

「もうっ」

 久しぶりのキスが、琉偉も照れくさいのかな。

 真理子は琉偉の胸に手を当てて、心臓の音を聞こうとした。

「真理子?」

「琉偉も、ドキドキしているのかなって思って」

「真理子は、ドキドキしているのか」

「――うん」

 すごく、ドキドキしている。

 瞳に乗せて伝えれば、まぶたにキスをされた。琉偉の手が真理子の服にかかり、真理子は琉偉の服に指を這わせた。キスをしながら互いの服を脱がし合う。素肌の胸に唇を当てられて、真理子はうめいた。琉偉の舌が真理子の胸の先を捉え、チロチロと刺激する。かと思うと唇で挟まれ、軽く噛まれて転がされ、ずっと彼を求め続けていた真理子の体は想いの強さを燃料として、炎のように燃え上がった。

「っ、は、ああ……、琉偉、あ、ああ」

「真理子……、ああ、ひさしぶりの真理子だ」

「んっ、琉偉……」

 真理子は琉偉のがっしりとした肩に手を乗せて、彼の熱い肌を手のひらで味わった。間違いなく、琉偉がここにいる。触れられる距離に、彼がいる。

「ああ――っ!」

 よろこびに震える真理子の胸を、琉偉の大きな手のひらが包む。やわやわと揉まれ、先端を指や唇で愛されて、真理子の胎内が熱くとろける。

「は、ぁあ……、琉偉、ああ、ああ、琉偉……、琉偉」

「ここにいる、真理子。俺はここにいる……、こうして君に触れて、ああ……、真理子」

 琉偉の感嘆の声に、真理子の体は幸福に膨らんだ。心の底から愛した人に、こんなにも愛されているなんて――。

「琉偉……、ああ」

 女の花がわななき、琉偉を求める。琉偉は丹念すぎるほど丁寧に、真理子の肌を味わっている。もどかしいほど緩慢な愛撫に震えつつ、真理子はすみずみまで彼の唇に食べられるよろこびに、すすり泣きに似た嬌声を上げた。

「ああ……、あっ、は、ぁあ……あっ、あ、あ……」

 欲望が体の奥で渦巻いている。性急に琉偉を求めそうになる自分を、真理子は必死で抑え込んだ。――もっとじっくり、彼に愛されたい。離れていた時間を埋めるように、ゆっくりと私の隅々まで味わってほしい。

「んんっ、んぁ、は……、ああ、琉偉、ふぁ」

 肌が過敏になっている。琉偉の指が、唇が触れた箇所にパッと情熱の火花が散って、体中を熱くする。

「真理子……、愛してる」

「私も……、琉偉、ああ……、っは、ぁあ」

 琉偉の指がそっと恥丘に触れた。下生えをくすぐられ、もどかしさに腰が揺れる。琉偉の指は愛に湿る真理子の肉花を指紋で撫でた。淡すぎる刺激に、真理子の鼻からうっとりと甘えた息が漏れた。

「ふぁ、あ……、は、ぁんっ、琉偉」

 そっと脚を開けば、琉偉の指が内側に沈んだ。真理子のそこは愛液でたっぷりと濡れている。クチュクチュとかき混ぜられて、真理子は膝を立てて腰を浮かせ、もっと深くと仕草で求めた。

「ああ……、琉偉、もう……」

 これ以上、焦らさないでと腕を伸ばすと、指先を軽く噛まれた。たったそれだけの刺激に胎内が震えて、愛液がさらにあふれる。それほど真理子の体は、過敏になっていた。

「真理子」

 かすれた琉偉の声に、彼もまた苦しいくらいにうずいているのだとわかった。琉偉の腰が真理子の脚の間を進み、熱く硬いものが女陰に触れた。

 待ちかねた息を真理子は吐き出す。はやく埋めてほしいと琉偉を見つめれば、キスをされた。唇を重ねたまま、琉偉がゆっくりと真理子に沈む。

「んっ、んぅ……、ふ、ぅ、あ、ああ……、あ」

 真理子の内側が、ゆっくりと琉偉に開かれる。苦痛に似た表情の琉偉に、真理子は首を伸ばしてキスをした。彼の質量に、どれほど琉偉が情動を堪えているのかを知った。欲望のままに揺さぶられてもいいと、真理子は思う。腰を揺らして琉偉を促すと、首を振られた。

「愛している」

 琉偉のささやきに、真理子の胸ははち切れそうになった。貪欲なよろこびが互いを支配している。それをあっさりと食い散らかしてしまうのは惜しいと、琉偉は思っているのだ。

「真理子……、愛している。愛を交わす、ということを俺に教えてくれたのは、真理子。――君だ」

「……琉偉」

「ずっと、俺の傍にいてくれ」

 よろこびと快楽に喉をふさがれ、言葉が出てこない。真理子はうれし涙を瞳いっぱいにたたえてうなずいた。ポロリとこぼれ落ちたそれを、琉偉の唇が拾ってくれる。

「ああ……、琉偉、……すごく、しあわせ……、こんなにしあわせで、怖いくらい」

「俺もだ、真理子」

 琉偉のすべてが真理子に包まれた。琉偉は動きを止めて、うっとりと息を吐く。しっかりと琉偉の腕に抱き止められた真理子は、彼が全神経を集中して愛を味わっているのだと感じた。真理子も深呼吸をして、琉偉の背中に腕を回す。

 ふたりの体温が混ざり合い、ひとつになる。

「ああ……、真理子」

「琉偉」

 呼び合い、見つめる。互いの瞳に劣情の嵐が吹き荒れていた。むさぼるようにキスをして、体を揺らす。自制など、もうできなかった。

「っ、ふ……、あっ、ああ、琉偉、ああ、もっと……、もっと、ねえ、琉偉、ああ」

 真理子は髪を振り乱し、琉偉にしがみついて身もだえた。荒れ狂う情熱の炎が琉偉を求めて真理子を溶かす。彼の熱を包む隘路は欲望のままに蠢動し、より深く激しくと、琉偉を促す。

「っ、はぁ、あ……、あっ、ああ、あっ、琉偉、ああ、もっと、琉偉……、琉偉」

 淫靡な悲鳴を上げて、真理子はひたすら琉偉を求めた。琉偉の動きが激しくなり、振り落とされまいと彼の腰に脚を絡める。

「ああ、真理子」

「ふ、ぁ……、ああ、琉偉、ふっ、ああ、ちょうだい……、琉偉を、深いところに」

「もちろんだ……、受け止めてくれ、真理子」

「うん、うん……、だから、はやく、あっ、ああ、あっ、あ、あぁあああ――っ!」

 甘美な遠吠えを放ち、真理子は体を弓なりにしならせた。悦楽の爆発がふたりを襲い、真理子と琉偉は同時に弾ける。細く長い声を上げる真理子と、短く鋭いうめきを発した琉偉は、めくるめく快感に体を震わせ、いとおしさを噛みしめた。

「は、ぁ――、ああ」

 陶然とした息が喉から漏れて、ぐったりとベットに身を沈める。琉偉は真理子を抱きしめたまま、真理子の頬に頬を重ねて荒い息を整えていた。痛いほどに激しい鼓動が、だんだんと落ち着いていく。汗ばむ肌から立ち上る愛しい人の香りを胸深く吸い込みながら、荒々しく吹き荒れた愛の余韻を受け止める。

「――真理子」

 耳元でささやかれ、顔を向けるとキスをされた。幸福にとろけた琉偉の笑顔に、真理子も気だるい瞳で情愛の笑みを返した。

「怖いくらいしあわせだ」

「私も」

 額を重ねて、またキスをした。琉偉を内側に抱きしめたまま、真理子は繰り返される琉偉のキスに応える。じゃれあうキスはすぐに、愛と欲望に満ちたものに育った。果てたばかりの琉偉の熱が、たくましさを取り戻す。真理子はビックリして琉偉を見つめた。

「離れていた時間が長すぎた。――もっともっと、真理子を味わいたい」

 淫靡に濡れた琉偉の瞳に、真理子は劣情の炎をよみがえらせた。

「……おねがい、琉偉」

 キスをして、体を揺らす。今度は湧き上がる欲望のままに、ふたりは踊った。

「あっ、あああ、あっ……、琉偉、あ、ああ――」

「真理子、ああ」

 荒々しい呼気の合間にキスを交わして、むさぼりあった。

 湧き上がる愛おしさのまま全身全霊をかけて相手を求め、自らを捧げる。自分の息なのか相手の息なのかわからなくなるほど、深く舌を絡めながら勇躍し、2度目の絶頂に悲鳴を上げた。

「っあ、あぁああ――っ!」

 高く細い悦楽の悲鳴は、途中で琉偉の唇にふさがれた。くぐもった悲鳴の余韻が終わるまで、真理子の唇は琉偉におおわれていた。

「――ふ、ぅ」

 余韻の痙攣が去って、けれどまだ胸をあえがせたまま、真理子は幸福に頬を上気させて琉偉を見つめた。

「真理子……、しあわせにする。――いや、しあわせになろう。ふたりで」

「うん、――うん」

 大きすぎる幸福に、真理子は泣きながらほほえんだ。

 そんなふたりを、窓辺のマーガレットが静かに見守っている。
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みんなの感想(1件)

しろ
2019.05.06 しろ

カッッコイィ(*☻-☻*) 真理子もめっちゃ綺麗なイメージしか無い。

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1 / 5

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