誰も愛さない

まめ太郎

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 翌日、駅から少し離れたイタリアン。
 店の庭は広く、店内の雰囲気も騒がしくなくていい。
 従業員に案内され奥の個室の扉を開けると、待っていたのは四人のオメガだった。

「わあ、二人ともかっこいい。洋子から誘ってもらえて僕、ラッキーだったな」
 ジーンズにロングTシャツ、チェックのネルシャツを腰に巻いた細身のオメガの男性がこちらにやって来て、俺の腕に自然に触れた。
「僕、目白一(メジロ ハジメ)って言います。よろしく」
 上目遣いに見上げる目白君に体を擦りつけられ、俺は思わず後ずさった。

「おい、大崎。これどういうことだよ」
 背後の大賀が不機嫌な声を上げると、一人の小柄な女の子が奥の席から立ち上がった。
「えっ、だって話しやすいオメガの子と飲みたいって、合コンセッティングしろってことじゃないの?」
「違うに決まってんだろ。ちょっと来い」
 大賀が険しい表情で大崎さんを引っ張り、部屋の奥に連れて行く。
 二人で立ったままぼそぼそと会話を始めた。

「お名前なんて言うんですか?」
 俺は大賀が気になりつつも、目白君に隣に座って欲しいと言われ、席に着いた。
 メニューを手渡され、俺は注文を考えながら答えた。
「成澤唯希です」
「唯希さん。私、品川美穂(シナガワ ミホ)って言います。よろしくお願いします」
 目の前に座る初対面の品川さんに下の名前で呼ばれ、驚きつつ『よろしく』とだけ返した。
 すると品川さんはにっこり笑って、俺の隣に席を移した。

「私もメニュー見ていいですか?」
 問いかけられ、頷くと品川さんが俺の方に身を乗りだした。

「ちょっと。メニューなら、美穂の席にもあるだろ」
 目白君が俺に話す時よりだいぶ低い声で言う。
「えっ、そうだったっけ?あっ、唯希さん、ここピザが美味しいみたいですよ。頼んでシェアしません?」
 頷こうとした俺の肩が叩かれる。
 顔を上げると仏頂面の大賀だった。
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