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「あいつ甘いもの好きなのに珍しいな。まだ殴られたところが痛むのかもしれねえけど、感じ悪いよな」
俺がオーブンを覗きこみながら言うと、星が目を細めた。
「違うでしょ。僕と月が海にくっついているのが嫌なんだよ。嫉妬なんてしちゃって馬鹿みたい」
「僕たち全員、藤崎さんのものなのにね」
月の言葉に星は嬉しそうににっこりと微笑むと頷いた。
俺達が皆、藤崎のものなら、一体藤崎は誰のものなんだろう。
「海。もうクッキーいれていい?」
俺の思考は上目遣いの月の言葉にかき消された。
三人で焼き上がったクッキーを齧る。初めて作ったわりによくできたそれは香ばしく、甘さ控えめで美味かった。
俺達の顔が描かれたものはもったいないので、食べずに、帰ってきた藤崎に見せると、奴は目を見開き次の瞬間、破顔した。
「月が作ったのか?すげえな」
それから迷うことなく自分の顔のクッキーを手に取り眺める。
「俺、こんなに眉間に皺寄せてねえだろ」
苦笑しながら、一つ一つのクッキーを手に取り、幸せそうに微笑んだ。
そして月と星、ついでに俺の頭を撫でると言った。
「さあ、飯にしよう。硝を呼んで来い」
今日はクッキーを作っていたせいで、夕飯の準備も碌にできなかった。
蕎麦に大根おろしとなめこを乗せただけの手抜きの夕飯に藤崎は文句は言わなかった。
ただ食べ終わった時に「今日もやるから準備しておけ」とだけ言って、浴室に消えた。
セックスが二日続けてとなるのは珍しい。
藤崎は怖い男だが、主人としては一流で、逆らわなければペットを傷つけることなど絶対にない。健康管理も完璧で、俺達の体調を考え、二日続けて体を繋げようとすることもなかった。
それも昨日の今日だ。
顔を上げると、嬉しそうに笑う硝と目が合う。
俺、本当に殺されんじゃねえの。
俺は内心の恐怖を押し殺し、硝を睨みつけた。
俺がオーブンを覗きこみながら言うと、星が目を細めた。
「違うでしょ。僕と月が海にくっついているのが嫌なんだよ。嫉妬なんてしちゃって馬鹿みたい」
「僕たち全員、藤崎さんのものなのにね」
月の言葉に星は嬉しそうににっこりと微笑むと頷いた。
俺達が皆、藤崎のものなら、一体藤崎は誰のものなんだろう。
「海。もうクッキーいれていい?」
俺の思考は上目遣いの月の言葉にかき消された。
三人で焼き上がったクッキーを齧る。初めて作ったわりによくできたそれは香ばしく、甘さ控えめで美味かった。
俺達の顔が描かれたものはもったいないので、食べずに、帰ってきた藤崎に見せると、奴は目を見開き次の瞬間、破顔した。
「月が作ったのか?すげえな」
それから迷うことなく自分の顔のクッキーを手に取り眺める。
「俺、こんなに眉間に皺寄せてねえだろ」
苦笑しながら、一つ一つのクッキーを手に取り、幸せそうに微笑んだ。
そして月と星、ついでに俺の頭を撫でると言った。
「さあ、飯にしよう。硝を呼んで来い」
今日はクッキーを作っていたせいで、夕飯の準備も碌にできなかった。
蕎麦に大根おろしとなめこを乗せただけの手抜きの夕飯に藤崎は文句は言わなかった。
ただ食べ終わった時に「今日もやるから準備しておけ」とだけ言って、浴室に消えた。
セックスが二日続けてとなるのは珍しい。
藤崎は怖い男だが、主人としては一流で、逆らわなければペットを傷つけることなど絶対にない。健康管理も完璧で、俺達の体調を考え、二日続けて体を繋げようとすることもなかった。
それも昨日の今日だ。
顔を上げると、嬉しそうに笑う硝と目が合う。
俺、本当に殺されんじゃねえの。
俺は内心の恐怖を押し殺し、硝を睨みつけた。
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