スパダリかそれとも悪魔か

まめ太郎

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 怜雄の誕生日当日。俺は大学に向かう怜雄を送り出し、急いで支度を始めた。

 まず指輪を店に取りにいき、赤いリボンのついた白い箱を受け取る。
 そこからいつもなら素通りする家の近くの高級スーパーで値段も見ずに、次々と食材をかごにほおりこんだ。
 会計の時、合計金額を聞いて一瞬意識が遠のきかけたが、俺はこの日のために貯金してきたんじゃないかと自分を奮い立たせると、何枚かの万札をレジの人に手渡した。

 帰って来てからも、普段作り慣れない料理に俺は悪戦苦闘した。
 丸ごと一羽買ってきたチキンは岩塩、ローズマリー、オレンジなどで味付けしてオーブンへ。その間にカルパッチョと生ハムのサラダを作る。

 チキンが綺麗にこんがり焼けているのを確認した俺は、ほっと息をついた。

 怜雄の好きな白ワインも冷えているし、あとは簡単なつまみを何品か作れば完成だ。
 夕方誕生日ケーキを受取に行くのを忘れないようにしないと。

 怜雄には今日の夕飯は期待しておいてと言ったけど、喜んでくれるかなあと思いながら、怜雄のスマホに「今日、何時くらいに帰って来る?」とメッセージを送る。
 すぐに返信があり「授業終わったら急いで帰る。17時頃になるかな。飯、すげえ楽しみ。」と書いてあった。

 俺は文面を読むと嬉しくなって、スマホを両手で持って、それでぺしぺしと自分のおでこを叩いた。

「やべえ。17時ってもうすぐじゃん。急ごう。」
 俺はバックをとると駅前のケーキ屋に走った。
 買ってきたケーキの中に指輪を仕込むことも考えたが、誤って飲み込むと危険なのでそれはやめておいた。

 17時になる10分前には机の上に俺の自信作の料理の数々が並んだ。
 バイト先で安西さんから直々に教わったレシピなので、丸ごとローストチキンはきっとうまいはずだ。
 しかし形を崩したくないので味見できないのがちょっと怖い。
 俺は皿とナイフとフォークをセッティングし、怜雄の帰りを待った。
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