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ライナスの毛布
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*怜雄の弟の話。本編から10年後くらいの設定。
チャイムの音で僕は玄関まで走った。
ジャンプして飛びつくとれーくんが両腕で抱きとめてくれる。
「元気だったか?雄貴(ユウキ)」
「うん」
返事にかぶさって、僕のお腹からぐううっと低い音が聞こえる。
「雄貴、もしかしてまだ夕飯食べてないのか?遅くなるから先に食べろって言ったろ」
優ちゃんが心配そうな顔で僕に問う。
「へへ」
僕がお腹を抑えて照れ笑いを浮かべると、仕方ないなあとばかりに、優ちゃんが俺の髪を柔らかく撫でた。
れーくんは僕のお兄ちゃんだけど、25歳も年上だ。れーくんの本当のお母さんはれーくんが小さい頃いなくなってしまったらしい。でもれーくんと僕のお母さんはとっても仲良しだから、何にも問題ないとお父さんが言っていた。
れーくんはお父さんとは仲が悪い。
しょっちゅう喧嘩するから2人が揃うと僕はハラハラしてしまうけど「これでも昔より仲がよくなったのよ」とお母さんは笑いながら言う。
優ちゃんとれーくんは男同士だけど恋人だ。日本の法律が変わったら結婚したいと思っているらしい。
僕は難しいことはわからないけど、2人とも大好きだから笑っていて欲しいと思う。
「雄貴、この前美味しいって言ってたアイス、買ってあるぞ」
僕の口に付いたシチューを親指で拭ってくれながられーくんが言う。
れーくんの瞳は金色と茶色が混ざっててすごく綺麗だ。優ちゃんは僕の薄茶の瞳も可愛いよって言ってくれるけど、僕は可愛いって言われても嬉しくない。れーくんみたいにかっこよくなりたいんだから。
「アイスだって。良かったな。雄貴」
僕を間に挟んで隣に座る優ちゃんが、微笑みながら言った。
優ちゃんは男だけどすごく綺麗で、いい匂いがしてたまに僕はそんな優ちゃんにドキッとしてしまう。でも似たようなことを言った他の親戚のおじさんにれーくんが「優は僕のものですから」と冷たく言っているのを見て、そういうことは言っちゃいけないのかなと思った。
ご飯を食べて、三人で一緒にお風呂に入ってお揃いのパジャマを着た。
「泊まっていってくれるの?」
期待を込めて優ちゃんに聞いたら、後ろかられーくんに抱きしめられた。
「そうだぞ、雄貴。今日は一晩中一緒だ」
「わあい」
お母さんもお父さんも仕事が忙しくて帰ってこれない日がある。そういう日はれーくんと優ちゃんが泊まりに来てくれる。
三人で僕を真ん中にして、広くないベッドにぎゅうぎゅうになって寝るのが好きだ。だから僕はお父さんとお母さんが帰ってこない日がそんなに嫌じゃない。むしろたまになら大歓迎だ。
「雄貴、この前の算数のテスト100点だったんだって?清香さんから聞いたぞ。すごいなあ」
俺の前髪を撫でながら、優ちゃんが言う。
「うん。僕、れーくんと優ちゃんの通ってた高校に行きたいから、勉強頑張ってるんだ」
そう言うと、隣で寝ていたれーくんがガバッと起き上がった。
「だめだ。あんなとこに雄貴を入学させたら、猛獣の檻に子ウサギ放り込むみたいなもんだ」
「そうだぞ、雄貴。あそこはろくな男がいない。付き合った初日からイチジク渡してくるようなデリカシーのない馬鹿ばっかり…」
優ちゃんの言葉に僕は目を輝かせた。
「イチジクー?僕イチジクのタルト大好き」
「いや、雄貴。そのイチジクじゃなくってさ…」
「優…お前誰の話してるんだ?」
れーくんが優ちゃんをじとっと見る。
「じょ、冗談だって」
ゆーちゃんが誤魔化すように笑うと、れーくんがため息をついて、微笑んだ。
「ほら、雄貴。進学のことは今度じっくり話そう。もう遅いから寝ないと」
僕の肩までれーくんが布団をかけてくれる。
「明日僕が起きる時まで2人ともいる?」
「もちろん」
優ちゃんが僕に笑顔でそう言う。
そのあとれーくんと優ちゃんは僕の目の前で軽く唇を合わせた。そして2人で僕の両頬にキスをする。
「おやすみ雄貴」
「おやすみ。れーくん、優ちゃん」
電気が消えて部屋が真っ暗になる。
両手をもぞもぞさせていると2人が手を繋いでくれた。
それで僕はようやく安心して、目を瞑ることができたんだ。
おやすみなさい。
チャイムの音で僕は玄関まで走った。
ジャンプして飛びつくとれーくんが両腕で抱きとめてくれる。
「元気だったか?雄貴(ユウキ)」
「うん」
返事にかぶさって、僕のお腹からぐううっと低い音が聞こえる。
「雄貴、もしかしてまだ夕飯食べてないのか?遅くなるから先に食べろって言ったろ」
優ちゃんが心配そうな顔で僕に問う。
「へへ」
僕がお腹を抑えて照れ笑いを浮かべると、仕方ないなあとばかりに、優ちゃんが俺の髪を柔らかく撫でた。
れーくんは僕のお兄ちゃんだけど、25歳も年上だ。れーくんの本当のお母さんはれーくんが小さい頃いなくなってしまったらしい。でもれーくんと僕のお母さんはとっても仲良しだから、何にも問題ないとお父さんが言っていた。
れーくんはお父さんとは仲が悪い。
しょっちゅう喧嘩するから2人が揃うと僕はハラハラしてしまうけど「これでも昔より仲がよくなったのよ」とお母さんは笑いながら言う。
優ちゃんとれーくんは男同士だけど恋人だ。日本の法律が変わったら結婚したいと思っているらしい。
僕は難しいことはわからないけど、2人とも大好きだから笑っていて欲しいと思う。
「雄貴、この前美味しいって言ってたアイス、買ってあるぞ」
僕の口に付いたシチューを親指で拭ってくれながられーくんが言う。
れーくんの瞳は金色と茶色が混ざっててすごく綺麗だ。優ちゃんは僕の薄茶の瞳も可愛いよって言ってくれるけど、僕は可愛いって言われても嬉しくない。れーくんみたいにかっこよくなりたいんだから。
「アイスだって。良かったな。雄貴」
僕を間に挟んで隣に座る優ちゃんが、微笑みながら言った。
優ちゃんは男だけどすごく綺麗で、いい匂いがしてたまに僕はそんな優ちゃんにドキッとしてしまう。でも似たようなことを言った他の親戚のおじさんにれーくんが「優は僕のものですから」と冷たく言っているのを見て、そういうことは言っちゃいけないのかなと思った。
ご飯を食べて、三人で一緒にお風呂に入ってお揃いのパジャマを着た。
「泊まっていってくれるの?」
期待を込めて優ちゃんに聞いたら、後ろかられーくんに抱きしめられた。
「そうだぞ、雄貴。今日は一晩中一緒だ」
「わあい」
お母さんもお父さんも仕事が忙しくて帰ってこれない日がある。そういう日はれーくんと優ちゃんが泊まりに来てくれる。
三人で僕を真ん中にして、広くないベッドにぎゅうぎゅうになって寝るのが好きだ。だから僕はお父さんとお母さんが帰ってこない日がそんなに嫌じゃない。むしろたまになら大歓迎だ。
「雄貴、この前の算数のテスト100点だったんだって?清香さんから聞いたぞ。すごいなあ」
俺の前髪を撫でながら、優ちゃんが言う。
「うん。僕、れーくんと優ちゃんの通ってた高校に行きたいから、勉強頑張ってるんだ」
そう言うと、隣で寝ていたれーくんがガバッと起き上がった。
「だめだ。あんなとこに雄貴を入学させたら、猛獣の檻に子ウサギ放り込むみたいなもんだ」
「そうだぞ、雄貴。あそこはろくな男がいない。付き合った初日からイチジク渡してくるようなデリカシーのない馬鹿ばっかり…」
優ちゃんの言葉に僕は目を輝かせた。
「イチジクー?僕イチジクのタルト大好き」
「いや、雄貴。そのイチジクじゃなくってさ…」
「優…お前誰の話してるんだ?」
れーくんが優ちゃんをじとっと見る。
「じょ、冗談だって」
ゆーちゃんが誤魔化すように笑うと、れーくんがため息をついて、微笑んだ。
「ほら、雄貴。進学のことは今度じっくり話そう。もう遅いから寝ないと」
僕の肩までれーくんが布団をかけてくれる。
「明日僕が起きる時まで2人ともいる?」
「もちろん」
優ちゃんが僕に笑顔でそう言う。
そのあとれーくんと優ちゃんは僕の目の前で軽く唇を合わせた。そして2人で僕の両頬にキスをする。
「おやすみ雄貴」
「おやすみ。れーくん、優ちゃん」
電気が消えて部屋が真っ暗になる。
両手をもぞもぞさせていると2人が手を繋いでくれた。
それで僕はようやく安心して、目を瞑ることができたんだ。
おやすみなさい。
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