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堕ちるキス6
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イッた余韻でお互い荒い息を吐いていると、突然俺の腹がぐぐうと鳴った。
怜雄が吹き出す。
「貰い物のプリンが冷蔵庫に入ってるから食っていいぜ」
「プリン?やった。食う食う」
俺はいそいそと下着とズボンを身に着け、冷蔵庫に向かった。
扉を開けた途端、食材がいくつも転がり落ちてくる。
「わっ。何だよ、これ」
「ああ。ファンクラブの奴らが適当に入れてくんだよ。食わねえし、料理しないから止めろって言ってんのに聞きやしねえ」
追いかけてきた怜雄が背後でため息をついた。
俺は床に落ちた鶏むね肉のパックを手に取る。
「おい。これ、賞味期限今日までだぞ」
「ああ。じゃあ、捨てるか」
怜雄は事も無げに言うと、俺からパックを奪った。
俺は鶏肉を奪い返すと言った。
「怜雄。親子丼食べれる?」
鶏肉の味付けをしている俺を後ろから抱きしめ、怜雄が目を輝かせる。
「すげえ」
「すごくないって。ただの普通の親子丼だから。期待すんなよ」
怜雄は俺の言葉には何も返さず、機嫌よさげに俺のつむじにキスをした。
「ほら、できたぞ」
俺が食卓のテーブルに座る怜雄の前に、湯気のたっている丼を置いた。
卵は半熟でふるりと震え、玉ねぎはわざと半生だ。
我ながら美味そうで良くできたと思う。
自分の丼を持って怜雄の前に座ろうとすると、怜雄が隣の席を叩いた。
「こっち座って」
「普通向かい合わせじゃね?」
「普通とかどうでもいい。近くに座って欲しい」
そう素直に言われると、嫌とは言えなかった。
「分かった」
照れた俺はぶっきらぼうにそう言うと、怜雄の隣に腰かけた。
「いただきます」
怜雄が箸を持つと、丁寧に頭を下げる。
俺はその所作の美しさに目を奪われた。
卵とご飯を口に入れ、怜雄が満面の笑みになる。
「美味い。最高」
「褒めすぎだって」
そう言って俺も一口食べる。
自分でもなかなかうまくいったと思われる味に頷く。
それからしばらくお互い無言で親子丼を頬張った。
「俺が優を好きだと思うのはこういうとこ」
怜雄がぽつりと言った。
「えっ、親子丼が作れるところってこと?」
「いや、なんていうか優は俺の顔色伺っていちいちびくびくしたりしないだろ?お互い言いたいこと言い合って、腹が減ったら一緒に隣で飯食って。優と居ると自然体でいられて楽しいよ」
怜雄は微笑んで俺にそう言った。
俺は怜雄の言葉が嬉しくて食べる手を止めて、ぼうっと怜雄を見つめた。
でも同時にそんな自分を心の中で叱った。
どうせこんな芸能人みたいなやつと長く付き合えるわけないんだ。本気になって痛い目見るのはこっちだぞ。
「優。飯、ありがとうな。美味かった」
怜雄はそう言うと、ゆっくりと俺に顔を近づけた。
こいつに堕ちちゃダメなんだ。
そう思いながらも、目を閉じ受ける怜雄のキスは怖いくらい甘美だった。
怜雄が吹き出す。
「貰い物のプリンが冷蔵庫に入ってるから食っていいぜ」
「プリン?やった。食う食う」
俺はいそいそと下着とズボンを身に着け、冷蔵庫に向かった。
扉を開けた途端、食材がいくつも転がり落ちてくる。
「わっ。何だよ、これ」
「ああ。ファンクラブの奴らが適当に入れてくんだよ。食わねえし、料理しないから止めろって言ってんのに聞きやしねえ」
追いかけてきた怜雄が背後でため息をついた。
俺は床に落ちた鶏むね肉のパックを手に取る。
「おい。これ、賞味期限今日までだぞ」
「ああ。じゃあ、捨てるか」
怜雄は事も無げに言うと、俺からパックを奪った。
俺は鶏肉を奪い返すと言った。
「怜雄。親子丼食べれる?」
鶏肉の味付けをしている俺を後ろから抱きしめ、怜雄が目を輝かせる。
「すげえ」
「すごくないって。ただの普通の親子丼だから。期待すんなよ」
怜雄は俺の言葉には何も返さず、機嫌よさげに俺のつむじにキスをした。
「ほら、できたぞ」
俺が食卓のテーブルに座る怜雄の前に、湯気のたっている丼を置いた。
卵は半熟でふるりと震え、玉ねぎはわざと半生だ。
我ながら美味そうで良くできたと思う。
自分の丼を持って怜雄の前に座ろうとすると、怜雄が隣の席を叩いた。
「こっち座って」
「普通向かい合わせじゃね?」
「普通とかどうでもいい。近くに座って欲しい」
そう素直に言われると、嫌とは言えなかった。
「分かった」
照れた俺はぶっきらぼうにそう言うと、怜雄の隣に腰かけた。
「いただきます」
怜雄が箸を持つと、丁寧に頭を下げる。
俺はその所作の美しさに目を奪われた。
卵とご飯を口に入れ、怜雄が満面の笑みになる。
「美味い。最高」
「褒めすぎだって」
そう言って俺も一口食べる。
自分でもなかなかうまくいったと思われる味に頷く。
それからしばらくお互い無言で親子丼を頬張った。
「俺が優を好きだと思うのはこういうとこ」
怜雄がぽつりと言った。
「えっ、親子丼が作れるところってこと?」
「いや、なんていうか優は俺の顔色伺っていちいちびくびくしたりしないだろ?お互い言いたいこと言い合って、腹が減ったら一緒に隣で飯食って。優と居ると自然体でいられて楽しいよ」
怜雄は微笑んで俺にそう言った。
俺は怜雄の言葉が嬉しくて食べる手を止めて、ぼうっと怜雄を見つめた。
でも同時にそんな自分を心の中で叱った。
どうせこんな芸能人みたいなやつと長く付き合えるわけないんだ。本気になって痛い目見るのはこっちだぞ。
「優。飯、ありがとうな。美味かった」
怜雄はそう言うと、ゆっくりと俺に顔を近づけた。
こいつに堕ちちゃダメなんだ。
そう思いながらも、目を閉じ受ける怜雄のキスは怖いくらい甘美だった。
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