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秋な私の呉越同舟編
第289話 早くも新長官、年貢の納め時伝説
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イカルガの今度デビューする新人男性チームを見てきたのだ。
一人はトリットさん。
「まあ、まだデビューは先なんだけどねー。歌とダンスのレッスンしてるよ」
「えっ!? 新グループは歌と踊りを!?」
「配信者って大変だねえ」
どっちも私はやってませんねえ!
もう一人は、公正な運任せオーディションで受かったラッキーボーイ。
本人は二刀流で前線でバリバリ戦いたかったのに、宇宙さんから「君は道士の才能があるね! 現代魔法麻雀と合わせて鍛えようか!」ということになってしまった男子大学生。
大学一年生らしいから、ビクトリアとファティマさんと同い年かあ。
最後の一人は私もよく知ってる人。
『おうおう! その魔力の気配はきら星はづきではないか! 元気しておったか! 我だぞ我!!』
「バングラッドさんが現実に出てきてるー!!」
甲冑に四本腕、動く鎧みたいな魔将バングラッド氏が、ノシノシとイカルガを歩き回っていたのだ。
ちなみに大きさとか形はある程度自由らしくて、腕を二本にして人間サイズまで縮むのもお手の物らしい。
「バングラッドさん、いつうちでデビューすることに……」
『うむ、話せば長いことながら、我のフレンドの多くがイカルガに所属していてな。その縁だ』
短い!
そしてゲームが結んだ縁!
うちはついに魔将までスカウトしてデビューさせちゃうんだなあ。
兄も自慢げに、
「欲しかった低音パートがこれで補われたぞ。バングラッドは声量も豊かだし、空洞になった体に音を響かせることでオペラみたいなことも可能だと分かった。今新しい技ができないか試しているところなのだ」
なんと楽しそうなのか。
魔将をデビューさせることで世の中でどう反応されるかとか全然考えてない。
前しか向いてない、この潔さ!
「お前が迷宮省とバチバチやってくれるお陰で、こちらは社の運営に注力できる。感謝しているぞ」
「バチバチやってるつもりはないんだけど!」
それでも、迷宮省のケアができなくなった部分を、私が逆凸とかして補ってるのはあるかなあ。
お陰で全国の配信者の人たち、ちょいちょい強化されたり、あるいは私を通じて繋がり始めたりしてる。
迷宮省の存在感はめちゃめちゃ小さくなったかなあ。
「あれ? 緊急の記者会見が」
ちょうど通りかかったたこやきが、スマホを見ている。
「みんな、大変だ。迷宮省の人事に関して発表があるらしい。まだ新人事になって一ヶ月経ってないのに」
「一ヶ月! じゃあ、もう九月も終わりなんですねえー」
色々な人のサポートをしまくってたから、時間の流れが早かった!
たこやきが見てるチャンネルを、私も見てみる。
ははー。
中林長官が頭下げてる。
へー、辞任するんだなあ。
前に見たときよりも、ずっとげっそりしてる気がした。
苦労したんだろうなあー。
でもまあ、辞任することだけ分かればいいや。
私はニュースチャンネルを閉じた。
「次は党内の穏健派の議員が長官をやるってさ。大京元長官がやって来た事を踏襲して、前例通りに動くし前例に無いことがあった場合、配信者を集めて有識者会議を開催、ザッコ上で迅速に決断するって言ってる」
「優秀な人じゃないか」
兄が感心した。
どうやら、迷宮省を巡るドタバタはこれで決着がつきそうだ。
「今回のことで、迷宮関連は通常の政治と同じように対処できないことがよく分かっただろう。おかしなツッコミが入ることは無くなると思いたいな。さて、俺は新人たちの教育で忙しい……。行くぞバングラッド!」
『うむ! お主ら人間は、同種族なのにややこしいやり取りが必要なのだなあ。我らリビングメイルは楽なものだぞ? 意識を持った個体など一握りだからな』
「バングラッドさんはちょっと天然さんかも知れない」
「イカルガにはそういう人多いかもね。始まりの一人目がそうだし」
おいたこやきー!
「な、なんですとー」
私が反応したので、たこやきが笑いつつピューッと逃げていった。
全くもう。
ちなみに後で聞いた話によると、中林長官は迷宮省を私物化したり、外部から大罪勢と目される人物を勝手に招いたりしたということで裁判に掛けられることになるらしい。
そんな事をしていたのかー。
よろしくない。
散り散りになっていた元職員さんたちも集まってきて、迷宮省再編が猛スピードで行われている。
しばらく迷宮省に関わってなかった風街流星さんは、ライブダンジョンでの活動の方をメインにして、迷宮省には協力、と言う形で関わることになった。
そして……。
なんか、私のザッコのフレンドが物凄く増えた。
北は北海道から南は石垣島まで、増えた。
あっ、うぉっちちゃんねるさんが『きら星はづき派閥について切り込むのだ!』とかへんてこな配信をしている!!
そんなものはないぞ!
仲良くなった人たちが、私が声を掛けたら厚意で動いてくれるだけだ。
自宅に戻ったら、迷宮省の人がやって来てた。
菓子折りを持ってる!
「この度は、きら星はづきさんに大変なご迷惑と苦労をおかけして……」
「いえいえいえいえ、いいんですいいんです。迷宮省の方もまた頑張ってください」
「ありがたいお言葉です……!」
とかそういう遣り取りをした。
ちなみに菓子折りの中身は高級和菓子セットだった。
ありがたや~。
これだけで私は迷宮省を許すよ……。
今度、高級羊羹食べながら雑談配信をしよう。
しぶーいお茶を淹れなくちゃなあ……。
ちょっといいお茶っ葉も買っておくか!
これからのことで頭がいっぱいになる私なのだった。
一人はトリットさん。
「まあ、まだデビューは先なんだけどねー。歌とダンスのレッスンしてるよ」
「えっ!? 新グループは歌と踊りを!?」
「配信者って大変だねえ」
どっちも私はやってませんねえ!
もう一人は、公正な運任せオーディションで受かったラッキーボーイ。
本人は二刀流で前線でバリバリ戦いたかったのに、宇宙さんから「君は道士の才能があるね! 現代魔法麻雀と合わせて鍛えようか!」ということになってしまった男子大学生。
大学一年生らしいから、ビクトリアとファティマさんと同い年かあ。
最後の一人は私もよく知ってる人。
『おうおう! その魔力の気配はきら星はづきではないか! 元気しておったか! 我だぞ我!!』
「バングラッドさんが現実に出てきてるー!!」
甲冑に四本腕、動く鎧みたいな魔将バングラッド氏が、ノシノシとイカルガを歩き回っていたのだ。
ちなみに大きさとか形はある程度自由らしくて、腕を二本にして人間サイズまで縮むのもお手の物らしい。
「バングラッドさん、いつうちでデビューすることに……」
『うむ、話せば長いことながら、我のフレンドの多くがイカルガに所属していてな。その縁だ』
短い!
そしてゲームが結んだ縁!
うちはついに魔将までスカウトしてデビューさせちゃうんだなあ。
兄も自慢げに、
「欲しかった低音パートがこれで補われたぞ。バングラッドは声量も豊かだし、空洞になった体に音を響かせることでオペラみたいなことも可能だと分かった。今新しい技ができないか試しているところなのだ」
なんと楽しそうなのか。
魔将をデビューさせることで世の中でどう反応されるかとか全然考えてない。
前しか向いてない、この潔さ!
「お前が迷宮省とバチバチやってくれるお陰で、こちらは社の運営に注力できる。感謝しているぞ」
「バチバチやってるつもりはないんだけど!」
それでも、迷宮省のケアができなくなった部分を、私が逆凸とかして補ってるのはあるかなあ。
お陰で全国の配信者の人たち、ちょいちょい強化されたり、あるいは私を通じて繋がり始めたりしてる。
迷宮省の存在感はめちゃめちゃ小さくなったかなあ。
「あれ? 緊急の記者会見が」
ちょうど通りかかったたこやきが、スマホを見ている。
「みんな、大変だ。迷宮省の人事に関して発表があるらしい。まだ新人事になって一ヶ月経ってないのに」
「一ヶ月! じゃあ、もう九月も終わりなんですねえー」
色々な人のサポートをしまくってたから、時間の流れが早かった!
たこやきが見てるチャンネルを、私も見てみる。
ははー。
中林長官が頭下げてる。
へー、辞任するんだなあ。
前に見たときよりも、ずっとげっそりしてる気がした。
苦労したんだろうなあー。
でもまあ、辞任することだけ分かればいいや。
私はニュースチャンネルを閉じた。
「次は党内の穏健派の議員が長官をやるってさ。大京元長官がやって来た事を踏襲して、前例通りに動くし前例に無いことがあった場合、配信者を集めて有識者会議を開催、ザッコ上で迅速に決断するって言ってる」
「優秀な人じゃないか」
兄が感心した。
どうやら、迷宮省を巡るドタバタはこれで決着がつきそうだ。
「今回のことで、迷宮関連は通常の政治と同じように対処できないことがよく分かっただろう。おかしなツッコミが入ることは無くなると思いたいな。さて、俺は新人たちの教育で忙しい……。行くぞバングラッド!」
『うむ! お主ら人間は、同種族なのにややこしいやり取りが必要なのだなあ。我らリビングメイルは楽なものだぞ? 意識を持った個体など一握りだからな』
「バングラッドさんはちょっと天然さんかも知れない」
「イカルガにはそういう人多いかもね。始まりの一人目がそうだし」
おいたこやきー!
「な、なんですとー」
私が反応したので、たこやきが笑いつつピューッと逃げていった。
全くもう。
ちなみに後で聞いた話によると、中林長官は迷宮省を私物化したり、外部から大罪勢と目される人物を勝手に招いたりしたということで裁判に掛けられることになるらしい。
そんな事をしていたのかー。
よろしくない。
散り散りになっていた元職員さんたちも集まってきて、迷宮省再編が猛スピードで行われている。
しばらく迷宮省に関わってなかった風街流星さんは、ライブダンジョンでの活動の方をメインにして、迷宮省には協力、と言う形で関わることになった。
そして……。
なんか、私のザッコのフレンドが物凄く増えた。
北は北海道から南は石垣島まで、増えた。
あっ、うぉっちちゃんねるさんが『きら星はづき派閥について切り込むのだ!』とかへんてこな配信をしている!!
そんなものはないぞ!
仲良くなった人たちが、私が声を掛けたら厚意で動いてくれるだけだ。
自宅に戻ったら、迷宮省の人がやって来てた。
菓子折りを持ってる!
「この度は、きら星はづきさんに大変なご迷惑と苦労をおかけして……」
「いえいえいえいえ、いいんですいいんです。迷宮省の方もまた頑張ってください」
「ありがたいお言葉です……!」
とかそういう遣り取りをした。
ちなみに菓子折りの中身は高級和菓子セットだった。
ありがたや~。
これだけで私は迷宮省を許すよ……。
今度、高級羊羹食べながら雑談配信をしよう。
しぶーいお茶を淹れなくちゃなあ……。
ちょっといいお茶っ葉も買っておくか!
これからのことで頭がいっぱいになる私なのだった。
応援ありがとうございます!
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