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晩秋な私の魔王編

第327話 決着、エルフバトル伝説

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『はづきさん、あまり大っぴらに二人に分身するのはちょっと……。配信者界に激震が走っているので、控えて頂けると』

 という連絡を迷宮省からもらったので、たまにしかやらないことにしたのだった。
 どっちも私なので、ベルゼブブを外に出さないと文句を言うとかそういうの全然ないしね。

 忙しい朝なんかに、ベルゼブブが朝の雑談配信をして私が父のお弁当を詰めたり……。
 んん……?
 私が配信してない……!?

 まあいいか。
 合体すると記憶も食べたものも1人分にまとまるし。

 こんな毎日を送っているうちに11月になり、いよいよ男子チームデビューイベントだ! と言う頃合い。

『カナンさん、ついに決着の時来る!』とイカルガから連絡が!
 なんということでしょう。
 長かったカナンさんの旅三昧の日々も、ついに終わる……!

 私はビクトリアを呼び、カナンさんのチャンネルを付けた。
 ふむふむ、今、カナンさんは魔将ペルパラスを追い詰め、ついに波照間島で決戦することになったようだ。

「リーダー、ハテルマジマってどこ?」

「ここだよー。ほ、ほえー、絶海の孤島~」

 グググールで検索してびっくり、日本最南端の島、波照間島!
 満点の星空のもと、今、ついに二人のエルフの戦いが始まろうとしていた!

 なるほどなあ。
 ここまで来たら、相手もかなり逃げづらいもんねえ。

 ふと、配信を見ながらお茶とかお菓子とかが欲しくなった。
 分離する。

「ベルゼブブ、お茶とお菓子取ってきてもらっていい?」

『私も配信見たいな。カナンさんがついに望みを果たすときでしょ』

「確かにー」

 これは無理強いできないなー。
 ということで、私とベルゼブブとビクトリアの三人で、カナンさんの配信を眺めることになったのだった。
 あ、お茶はブタさん式神を送って持ってきてもらいました。

 ペルパラスは闇色のローブを纏ったダークエルフ。
 魔王に与すると、エルフは力を授かって肌の色が青くなるんですと。

 本来ならエルフよりもずっと強いんだけど、配信によって同接パワーを得たカナンさんなら魔将とも全然戦える。
 今、二人の魔法がぶつかり合う~!

 でもまあ、波照間島って山は無いし大きな森も無いし、二人の戦いの舞台はサトウキビ畑の真ん中くらいだし。
 収穫が終わったサトウキビ畑はだだっぴろい草原みたいになってるし。

「精霊魔法で利用できそうなものあんまないね」

「カナンはそれを狙ったのかも知れないわね」

『策士~』

 三人で感心しながら配信を追う。
 この配信は物凄く注目されており、既に同接数が百万人を超えていた。

 カナンさんのチャンネルには、日本に来たエルフさんのほとんど全員が登録しており、ペルパラスとの対決を追っている。
 その決着が今! ということなんだねえ。

※『がんばれカナン戦士長ー!!』『ついに戦士長の……我らエルフの戦士の悲願が叶う……!』『このコメント欄エルフ率高くね?』『カナンちゃんはエルフのリーダー格なんだよ!』『ほえー』

 ニュービーがいるな!
 なお、配信の撮影とかは娘のルンテさんが行っています。

 カナンさんとペルパラスの戦いは、周りに利用できるものが風と草原しかないので、同じような魔法の応酬になる。
 ペルパラスは強いっぽいけど、見た感じの勝負は完全に互角!!

※『うおおおカナンちゃんがんばれ!』『波照間のスーチカ定食のパワーを今こそ見せてくれー!』『スパムカツパワー!』『昨日のエルフっ娘二人で水辺配信良かったぞー!』

 そ、そんなことをしてたのか!!
 仇敵を追い詰めながら、きちんと撮れ高のある配信を欠かさないカナンさん。

「これはルンテの采配かも知れないわね。ちなみにイカルガ公式チャンネルでは、ルンテのナレーション入りの紀行配信があって人気よ」

「いつの間に……!」

『知らなかった……!』

「リーダーは忙しすぎるのよ。二人に分かれられるようになったんだし、たまにチェックしてみたらどうかしら」

 なるほど、それは確かに!

※『ちょうど泳がなくなるシーズンに来たから、水着はお預けだったもんな』『次はシーズンに二人で水着で行ってほしいね』『カナンちゃんの配信見てると、旅行行きたくなるんだよなあ』『経済効果凄いらしいじゃん』

 そうなんだー。
 日本中旅をしながら配信してるもんね。
 夏休み終わりくらいから11月にかけて、三ヶ月くらいの旅。

 東北、北海道を回ってまた南下し、山梨長野富山と回って、そこから関西、四国、山陰、中国、九州……。
 ついに沖縄へ渡ってからペルパラスを波照間島まで追い詰めたわけだ。

 執念だなあ。

『おのれ……おのれーっ!! 戦う度に力をつけおって! 貴様の力はどこから湧いてくるのだ!! ただのエルフが私に及ぶなど、そんな馬鹿なことが……!!』

『ペルパラス! どうやらお前はインターネッツに触れていないようだな! それがお前の敗因だ! 今の私は、精霊の愛子たちの思いを背負い、お前よりも遥かに強い!』

『精霊の愛子だと!? まさか、精霊王の加護を受けたというのか!!』

『そのようなものだ!!』

 配信文化を知ってるかどうかで意味が変わってきますねーこれ。
 ペルパラスは完全に動揺してるけど、カナンさんはあえてこの勘違いの説明をしない。
 互角なら、精神的に優位な方が強そうだし。

 精霊魔法のぶつけ合いだと完全に拮抗していたので、ここでカナンさんが飛び込んでいった。
 手にしているのは南十字星マグネットとヤギさんステッカー!

 おみやげ品をこんなところでもアピール!
 やるなあ……。

 ペルパラスの攻撃をマグネットで受け止め、『ツアーッ!』とステッカーをかざすカナンさん。
 すると、そこから光が溢れ出た。
 なあにこれ。

「これ、リーダーがいつもやってるよく分からない攻撃だと思うわよ。同接数が増えすぎるとちょこちょここういう何が起きてるか分からない攻撃が出るもの」

 ステッカーから飛び出した光り輝くヤギさんが、ペルパラスに突撃!
 炸裂した。

『ウグワーッ!! さ、長い時を生きたこの私が!! 魔王様から強大な力を賜った私が、異世界のどこだか分からない島で……!!』

『波照間島は沖縄県八重山郡は竹富町に属する日本最南端の有人島だ! 美しい海、満点の星空、自然の風味をいかした島グルメ……!! 是非一度皆さんも遊びにきてください!』

『な、何を話して……ウグワーッ!!』

 ペルパラス、爆発!
 これをバックに、カナンさんが振り返った。
 爆発が収まると、星空が戻って来る、
 うわーっ、星きれいすぎる。

『では明日から……またカナンとルンテの日本行脚配信を再開します。精霊の愛子たちよ、みんな見に来て欲しい』

 ワーッと沸くコメント欄。
 ついに仇敵を討ち果たしたということと、それはそれで通常営業するんだ、という楽しさと、色々ないまぜになっている。
 カナンさん、すっかりビッグな配信者になったなあ。

 なお、明日からは波照間島を発ち、与那国島へ向かうらしい。
 その先は、ぼたんちゃんのお父さんの故郷である台湾だねー。

 これからの旅配信が楽しみになってしまう私なのだった。
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