婚約破棄された紋章官家の令嬢は、王太子妃の紋章が偽物だと知っている

――自分の名はいつも白紙だった。

セルウィリア・ド・ヴァルモンは、正式な役職を持たぬまま、父レオニードに代わって実質的に紋章院の実務を担ってきた。
だが婚約者ドミトリに切り捨てられたその夜、王太子ミハイルの新たな婚約者エレナ・ド・サン=クレールの紋章に、決定的な違和感を見つける。
それは単なる意匠の誤りではなく、婚姻資格と王家の血統正統性を揺るがす偽装だった。

唯一その違和感に気づいた彼女を信じたのは、第二王子アレクセイ・ド・ベルヴィールだけだった。
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