上 下
89 / 125
第二章

イタリアンか、スペイン料理か。

しおりを挟む
 「わー、大きなお船がいっぱーい!」

 ミルフィが楽しそうに目を輝かせるその視線の先には、このフェリーが小舟に見えるレベルの巨大な商船が多数。

 そう、最初の寄港地は商業港。
 それも、外国からの輸入品や、外国への輸出品を扱う巨大港。

 故に、小さな漁船は危ないとあまりこの近辺にはやって来ず、ここでは地魚は逆に手に入りにくいらしい。
 一応近辺の港から運ばれてくる加工品は豊富だけど、街を見ても新鮮な生の魚介を売りにする店は見かけない。

 代わりに日持ちするスパイス類やらチーズやバター等の加工食品に加え、貴金属や糸に布に衣類といった交易品の店が多数並ぶ。

 街行く人々も、ガタイの良い労働者はあまり見かけず、身なりの良い金持ちや羽振りの良さそうな商人が多い。

 「これは……、労働者に受けそうな料理はむしろ敬遠されそうね。ぱっとお洒落な料理でないと興味すら持って貰えなそうだわ」

 例えば、ピザとかパエリアとか。

 「うーん、米も小麦粉も。サフランもバジルも、トマトや魚介、チーズも普通に手に入るんだよね……、マジどっち作るか……」

 けど、ピザもパエリアも、そこそこ具材次第でいくらでも応用の効く料理。
 レシピ吸い上げられるとなると惜しい気もする。

 「となると……、肉やら野菜でも美味しく食べられるピザのレシピをくれてやるのは惜し過ぎる」

 ……理由がちょっとどころかかなり酷いの分かってるけど。

 「パエリア、作ろう」

 新鮮な魚介はなくとも、エビやら貝は豊富にある。
 パエリアにするなら、美味しい出汁の出る甲殻類やら貝のが有り難い。

 後は見栄えのために巨大な鉄鍋を用意してもらった。
 ……お金出したの私達だけどね。

 そしてエビにカニ、イカの干したのやらを買い、スパイスや野菜を揃える。

 ……イカは生のがあれば良かったけどなかったからね。けど、出汁は干したのの方が出る。

 さぁ、早速調理していこう。

 ニンニク、玉ねぎはみじん切りに。
 彩りのピーマンとパプリカは種を取って輪切りに。
 トマトも乱切りにして……、

 魚介も軽く洗って下ごしらえ終了。

 巨大鍋にオリーブオイルをなじませ、魚貝を投入。
 白ワインを加え、貝を開かせ出汁をとる。

 一旦魚貝を取り出し、ニンニクと玉ねぎを炒める。
 ある程度火が通ったら生米を入れて炒めていく。

 トマトや野菜、サフランにブイヨンを入れ、塩・コショウで味を整える。

 最後に魚貝を綺麗にトッピングすれば……

 「パエリアの出来上がり~!」

 黄色い米の上に、魚介や色とりどりの野菜が並んだ大鍋。
 それは私の狙い通り、人目を惹き付けてくれる。

 「さぁ。今回は今まで以上に売上が大事になるからね。皆、覚悟はいいわね? さぁ、売って売って売りまくるよ!」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生を繰り返した私。今世も穏やかな人生を希望します。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:157

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,357pt お気に入り:191

侯爵夫人は子育て要員でした。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,081pt お気に入り:1,773

異世界転移~治癒師の日常

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,471

世界一の治癒師目指して頑張ります!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:269

検索魔法で助けたもふもふ奴隷が伝説の冒険者だったなんて聞いてませんっ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:2,844

処理中です...