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3章 農園カンパニー

第2話 羊な執事の仕事ぶり

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 「おお、これそ牧場スタイル……!」

 青いデニム生地のオーバーオール。
 ユージーン君のとデザインを揃えた事で、制服感も出た。

 「流石です、セバスさん! 素晴らしいです!」
 「いえいえ、お褒めいただきありがとうございます」

 これで衣と食は揃った。
 これからは住のジャンルを充実させる番だ。

 「これだけ安全で暖かい寝床があるんだ、充分だろう?」

 「全員が満腹になる程の充分な食料があり、ユリさんが美味しく調理して下さる。そのための場所も設備もある。
 それは、貴族のお屋敷には及ばないかもしれませんが、そこらの平民の平均より遥かに恵まれた環境ですよ?」

 だけど、元の基準が低い二人は今の環境で満足してしまっている。

 けれどそれではこれ以上の発展が望めない。
 何か二人がやる気になるようなアイディア無いかなかぁ……。

 「確かに、下界の状況からすれば、ここの環境は彼らにとってはまさしく天国でしょうからね」
 アグリ様まで……!

 「次の召喚はまた三十日後に行いますから、そのつもりで進めてくださいね?」

 おぅふ、もう次か……。
 そろそろ集会場的な物も造りたいしなぁ。

 だけど。
 日本ではそんなお金持ちでもなくごく普通、いや並より若干余裕の無い生活をしていたユリは、しかし彼ら程大変な生活などした事もない。

 食材は基本的なものならスーパーに行けば買える。
 ……高めの物――国産の牛肉だとか魚卵だとかを買うには多少ためらうけど、安売りの卵を買うのにためらう事はない。
 なるべく特売の物を買う様にはしているけど、たまにプチ贅沢と称して少し高めのお肉やフルーツを買う事も無くはない。

 今なら、少し頑張れば美味しいお肉や野菜や果物が食べられるし、使い勝手や使い心地の良い家具や住居も手に入るとなれば、仕事に気合も入る。

 その点、ユージーンは美味しい肉や果物に感動し、その為に日々頑張って働いてくれている。
 だけど彼はそれで満足してしまっている。

 「うん、一度生活レベルを上げちゃうと、また下げるのって心理的負担が大きいんだよね」

 なら、もっと上を体験させないと駄目なのか。

 「だとすると、今私が手掛けてる通常の仕事は全部人に任せて、私は新規事業専門でやるくらいの勢いが必要だなぁ」

 セバスさんの為、私のポイント交換機能をユージーンやセバスさんにも使えるようにアグリ様に調整して貰い、二人へのお給料もポイントで支払い、そこから好きにポイント交換出来るシステムに変えた。

 「もっと人が増えたら会社にした方がよさそうな……」
 ここでは明確に法律もなく会社と行ってもなんちゃって感たっぷりなものになりそうではあるけど。

 少しだけ遠い農園の未来を、私は初めて考え始めたのだった。
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