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第一章 王女に婚約者が出来るまで。
第三話 一週間篭っていた間にしていたこと。
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一週間、王女宮で静かに篭っていた王女――――
王である父、王妃である母へと顔を全く見せないという抵抗によって、静かなる抗議を行っていた。
王女宮から一歩も出る事なく、王女に堅い忠誠を誓っている信頼ある使用人だけが出入りしていた。
―――そう、建前上は。
王女は宮から一歩も出ないと宣言した翌日、王宮メイドの服装を纏い、カツラまでしっかりと頭に被ると、全くの別人にしか見えなくなった。
変装を済ませた王女は、数人の信頼できる侍従とメイドを伴い、魔女たちの元へと訪れた。
とりあえず軟禁し押し込めていた魔女たち。
ただ飯食らいをさせる訳にもいかないし、魔女の資質として狡猾で欲望に酷く忠実な奔放な性分があって魔女になれたのだろうが、ソレなだけではただの性悪女として何処にでもゴロゴロいる。
それだけでは無いから魔女になれているのだ。
ということは、それなりに才能は有る筈である。
前々から気にかけていた事に魔女を使う事で解消できると思案し、一週間の間は暇を持て余すのだから、この際どうにかするかと思ったのである。
魔女たちを押し込めている部屋を軽くノックすると返事を待たずに入室する。
「だ、誰なのよ!」
「まさか、王族を謀った罪で処刑なの!?」
「お、王女を出しなさいっ! 王女がこの部屋に居れたのには理由があるはずなのよ!」
強気そうな魔女が数人口ぐちに叫ぶ。
そこまで怯えるのなら、何故王族を謀るであろう話に乗ったのだろう。
そんなことをすれば処刑も免れない大罪だと、小さな子供でも理解してそうなのだが。
王女は耳を塞ぎたいのを我慢しカツラをとると「私がその王女よ」と正体を明かす。
赦されたと思っていた魔女たちは、王女の訪問を歓迎した。
「赦していないわ。」
「酷い思いをさせてしまったに関わらず、寛大なお心で赦しを与えて下さった王女様…」と魔女が感謝の言葉を述べようとしたときにズバッと言った言葉である。
そこからは王女の無双である。
ちくちくねちねち嫌味を混ぜ、暗く汚く臭い大罪人が収容される地下牢の話や、処刑といっても首跳ねるだけがやり方ではない事を伝え、具体的にある数種類の拷問に近い処刑方法をちらつかせながら、魔女たちを散々震え上がらせた。
青どころか真っ白になった顔色の魔女たちを一人一人確認し都合のいい夢は見てない事を確認すると、赦して欲しくば私の為に働きなさい、と仕事を与えた。
仕事内容は真っ当なもので、その仕事への対価は魔女たちの大好きなお金。
王宮の中にの空き室を三部屋程使用し、そこに機材や作業台などを持ちこみ、そこで薬草をメインに使用した病気や怪我などに使用する薬や軟膏を作らせた。
所謂、薬師である。
不思議な事に魔女は薬を作る事に適正が高いのか、元々居る薬師たちと同じ様な工程で作らせている筈なのに効果が高かった。
王女に言われた通りに働き、作業時間も休憩時間もしっかりと管理され、その上、決まった時間に掃除をする者が現れ、掃除などしたことも無いような魔女たちが汚した作業台や器具などを綺麗にしてくれる。至れり尽くせりだ。
三食の食事に休憩時間に提供される王家のシェフが作った絶品のお菓子を食べお茶を飲む。そして、綺麗な衣服と環境で任された仕事を頑張る。
頑張ればしっかり見返りがあり、もっとお金が欲しいのなら、新薬を開発してそれの効果次第では、かなりの褒美が与えられるそうだ。
真っ当な職場である。
最初、さっさと依頼をこなして金を貰ったら、こんな場所逃げ出そうと思っていた魔女たちも、王女の徹底的な管理下の元で働いてるうちに、ここで働くのも悪くないのではないか? 着の身着のままのその日暮らしより絶対いい!と思う者たちが増えていき、一週間が経過した今も誰ひとり逃げ出していない。
王女による魔女の調教完了である。
魔女たちを思うように働かせ、既存の薬にもテコ入れして効果が高い薬へと進化させたり、素晴らしい効果を発揮する化粧品関連の開発にも力を入れさせた。
騎士団の団員にサンプルとして配られた怪我によく効く軟膏や、筋肉の疲労に効く飲み薬などはかなり良質で効果が高く、騎士団からもっと欲しいと追加注文がきたほど。
狡猾で貪欲だと蔑み対象であった魔女。
それが今では立派な騎士様たちから感謝の手紙を何通も頂いていた。
魔女たちは、初めて他者に感謝され、その存在を認められる心地良さの虜になった。
もう王女から与えられたこの素晴らしい職場と環境から離れられないと、魔女たちの誰もが強く思う。
今までよりも一層新薬の開発に熱心になり、完成まではまだ時間が掛かるだろうが、現段階でも順調に一定の成果をあげつつ進んでいる。
既存の飲み薬や軟膏を怠けるのを全くしなくなった為、完成して提供するまでのスピードが格段に速くなる事で大量の薬を用意する事が出来ている。
絶対数が少なければ、そこそこ裕福な平民であっても高額に感じる値段でしか手に入らなかった薬も、魔女製であるなら比較的安価で大量に販売出来る個数が確保できた為、薬効の少ない気休め程度の効き目の薬や、民間療法で我慢していた貧しい層でも購入できそうな値段の薬も提供できるようになった。
王女がおとなしくしている訳などないと、王女の性格を誰よりも分かっている兄王子は、こっそりと動向を調べさせていた。
魔女たちのくだりの報告書を読んで、我が妹ながら何て恐ろしいと薄ら寒くなったのだった。
あの狡猾で強欲で怠け者な人間をたった一週間で真っ当に調教した王女。
人心掌握に長けすぎていて、女である事が惜しい程だ。
全ての報告書に目を通した兄王子。
時は満ちたと王女宮へと先触れを出した。
両親には許可される事は無かったが、兄王子はアッサリと王女から許可を貰うと、側近の釣書を片手に王女宮へと颯爽とした足取りで向かったのだった。
王である父、王妃である母へと顔を全く見せないという抵抗によって、静かなる抗議を行っていた。
王女宮から一歩も出る事なく、王女に堅い忠誠を誓っている信頼ある使用人だけが出入りしていた。
―――そう、建前上は。
王女は宮から一歩も出ないと宣言した翌日、王宮メイドの服装を纏い、カツラまでしっかりと頭に被ると、全くの別人にしか見えなくなった。
変装を済ませた王女は、数人の信頼できる侍従とメイドを伴い、魔女たちの元へと訪れた。
とりあえず軟禁し押し込めていた魔女たち。
ただ飯食らいをさせる訳にもいかないし、魔女の資質として狡猾で欲望に酷く忠実な奔放な性分があって魔女になれたのだろうが、ソレなだけではただの性悪女として何処にでもゴロゴロいる。
それだけでは無いから魔女になれているのだ。
ということは、それなりに才能は有る筈である。
前々から気にかけていた事に魔女を使う事で解消できると思案し、一週間の間は暇を持て余すのだから、この際どうにかするかと思ったのである。
魔女たちを押し込めている部屋を軽くノックすると返事を待たずに入室する。
「だ、誰なのよ!」
「まさか、王族を謀った罪で処刑なの!?」
「お、王女を出しなさいっ! 王女がこの部屋に居れたのには理由があるはずなのよ!」
強気そうな魔女が数人口ぐちに叫ぶ。
そこまで怯えるのなら、何故王族を謀るであろう話に乗ったのだろう。
そんなことをすれば処刑も免れない大罪だと、小さな子供でも理解してそうなのだが。
王女は耳を塞ぎたいのを我慢しカツラをとると「私がその王女よ」と正体を明かす。
赦されたと思っていた魔女たちは、王女の訪問を歓迎した。
「赦していないわ。」
「酷い思いをさせてしまったに関わらず、寛大なお心で赦しを与えて下さった王女様…」と魔女が感謝の言葉を述べようとしたときにズバッと言った言葉である。
そこからは王女の無双である。
ちくちくねちねち嫌味を混ぜ、暗く汚く臭い大罪人が収容される地下牢の話や、処刑といっても首跳ねるだけがやり方ではない事を伝え、具体的にある数種類の拷問に近い処刑方法をちらつかせながら、魔女たちを散々震え上がらせた。
青どころか真っ白になった顔色の魔女たちを一人一人確認し都合のいい夢は見てない事を確認すると、赦して欲しくば私の為に働きなさい、と仕事を与えた。
仕事内容は真っ当なもので、その仕事への対価は魔女たちの大好きなお金。
王宮の中にの空き室を三部屋程使用し、そこに機材や作業台などを持ちこみ、そこで薬草をメインに使用した病気や怪我などに使用する薬や軟膏を作らせた。
所謂、薬師である。
不思議な事に魔女は薬を作る事に適正が高いのか、元々居る薬師たちと同じ様な工程で作らせている筈なのに効果が高かった。
王女に言われた通りに働き、作業時間も休憩時間もしっかりと管理され、その上、決まった時間に掃除をする者が現れ、掃除などしたことも無いような魔女たちが汚した作業台や器具などを綺麗にしてくれる。至れり尽くせりだ。
三食の食事に休憩時間に提供される王家のシェフが作った絶品のお菓子を食べお茶を飲む。そして、綺麗な衣服と環境で任された仕事を頑張る。
頑張ればしっかり見返りがあり、もっとお金が欲しいのなら、新薬を開発してそれの効果次第では、かなりの褒美が与えられるそうだ。
真っ当な職場である。
最初、さっさと依頼をこなして金を貰ったら、こんな場所逃げ出そうと思っていた魔女たちも、王女の徹底的な管理下の元で働いてるうちに、ここで働くのも悪くないのではないか? 着の身着のままのその日暮らしより絶対いい!と思う者たちが増えていき、一週間が経過した今も誰ひとり逃げ出していない。
王女による魔女の調教完了である。
魔女たちを思うように働かせ、既存の薬にもテコ入れして効果が高い薬へと進化させたり、素晴らしい効果を発揮する化粧品関連の開発にも力を入れさせた。
騎士団の団員にサンプルとして配られた怪我によく効く軟膏や、筋肉の疲労に効く飲み薬などはかなり良質で効果が高く、騎士団からもっと欲しいと追加注文がきたほど。
狡猾で貪欲だと蔑み対象であった魔女。
それが今では立派な騎士様たちから感謝の手紙を何通も頂いていた。
魔女たちは、初めて他者に感謝され、その存在を認められる心地良さの虜になった。
もう王女から与えられたこの素晴らしい職場と環境から離れられないと、魔女たちの誰もが強く思う。
今までよりも一層新薬の開発に熱心になり、完成まではまだ時間が掛かるだろうが、現段階でも順調に一定の成果をあげつつ進んでいる。
既存の飲み薬や軟膏を怠けるのを全くしなくなった為、完成して提供するまでのスピードが格段に速くなる事で大量の薬を用意する事が出来ている。
絶対数が少なければ、そこそこ裕福な平民であっても高額に感じる値段でしか手に入らなかった薬も、魔女製であるなら比較的安価で大量に販売出来る個数が確保できた為、薬効の少ない気休め程度の効き目の薬や、民間療法で我慢していた貧しい層でも購入できそうな値段の薬も提供できるようになった。
王女がおとなしくしている訳などないと、王女の性格を誰よりも分かっている兄王子は、こっそりと動向を調べさせていた。
魔女たちのくだりの報告書を読んで、我が妹ながら何て恐ろしいと薄ら寒くなったのだった。
あの狡猾で強欲で怠け者な人間をたった一週間で真っ当に調教した王女。
人心掌握に長けすぎていて、女である事が惜しい程だ。
全ての報告書に目を通した兄王子。
時は満ちたと王女宮へと先触れを出した。
両親には許可される事は無かったが、兄王子はアッサリと王女から許可を貰うと、側近の釣書を片手に王女宮へと颯爽とした足取りで向かったのだった。
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