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52話 正統な後継者の子
しおりを挟む肖像の間の扉を開けると、最初に見える壁に掛けられた、初代レガロ伯爵が等身大で描かれた肖像画の前に立ち…
初代レガロ伯爵にそっくりのグランデは、腕組みをしてボラーチョをにらみつけた。
「これでオレが、レガロ伯爵家を継ぐのにふさわしい“立派な非嫡出子” だとわかったか? そこのお前!!」
伯爵位を継ぐだけの能力があると、先々代に認められ、選ばれた正統な後継者の子と… 成り行きで後継者になった無能な当主の子とでは… 誰が見ても、どちらがレガロ伯爵にふさわしいかは明らかだった。
何よりグランデには、黒騎士団の騎士団長にまで上り詰めるほどの、魔獣討伐の実績があり、疑いようのない実力があると、すでに証明している。
「・・・・・・」
ボラーチョは黙ったまま何も言わず、そっぽを向いた。
「わかったらなら、今すぐこの伯爵邸から出て行け! オレは酔っ払いの相手をしていられるほど、暇ではない!! 次に同じ騒ぎを起こしたら、侮辱罪で監獄行きだからな!」
「…クソッ!!」
悔しそうに顔を歪め、ボラーチョはグランデと一度も目を合わせず、肖像の間を去った。
「なんだぁ… グランデ様は僕の従弟だったのですね?」
<伯爵家の非嫡出子なら、先代のお子だと僕は思い込んでいたけれど… なんだ… 良かった!!>
ホッ… としたらジワリと涙が目からにじみ出て、アスカルは何度も手でぬぐう。
「そうだ! 悪かったアスカル… お前がオレを兄だと思い込んでるとは、予想していなかった」
「いえ… それは僕が黙っていたから…」
<僕が先代の子だということも… お父さんの養子だということも、グランデ様に黙っていたから… それがいけなかった>
「よくよく考えると、あんな田舎にお前のような綺麗なオメガが、いること自体がおかしいと気づくべきだった! オレは騎士業以外のことについては、本当に気が回らなくてな…」
「本当に良かった… おかしいと思った! だってグランデ様が僕のお兄さんだなんて、全然そう思えないのに… でも、兄弟なんだって悩んでいたから… ほらね! やっぱり違ったんだ!!」
何度も涙をぬぐい、目が真っ赤になってしまったアスカルを慰めようと… グランデは抱き上げて、椅子に腰を下ろしてアスカルを膝の上に乗せた。
「実はなアスカル… オレが話したかった本題は、ここからなんだ!」
「え?」
「オレの妻になるお前には、真実を知って欲しい」
「…真実?」
淡い藤色の瞳を涙で潤ませ、アスカルがグランデを見ると…
深紅の瞳が暗く陰っていた。
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