邪魔者は静かに消えることにした…

春野オカリナ

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クリステル侯爵家の秘密

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 第二王子エルリックは困惑していた。

 それはアディーナ・クリステル侯爵令嬢がカインとは別の男と学園祭のダンスパーティーに来ているからだ。

 連れの相手がこの国の人間ならエルリックも心配しない。

 だが、彼女をエスコートをしている男に問題がある。

 ジルベスター・グレン男爵。

 彼は、地質学の天才で、考古学にも長けていた。その為に様々な土地の問題を解決するために各地を転々としている。

 優秀な人材をこの国に縛り付ける為に、父王が爵位を新たに授けたのだ。しかし、彼の実の両親は隣国リンドレン帝国のフォレスト公爵夫妻。

 何が問題なのかと言えば、アディーナ・クリステルは次期侯爵になる。

 現侯爵にはアディーナ以外の子供はいない。当然彼女が後を継ぐ事は決定している。

 問題は、彼女の伴侶にはこの国ドメスト王国の王侯貴族でなければ何の意味もない。

 その昔、クリステル侯爵家はただの海賊だった。

 彼らの持つ領地は元からクリステル侯爵家が代々守ってきた土地であり、一つの独立国家のようなもの。

 一族間の結束は固く、余所者を受け付けなかった。

 領地は海に面していて、西はゼルトナル国。東はミシェラン国そしてタスマニカ諸島を挟んで反対の大陸にリンドレン帝国があり、南にドメスト王国がある。

 国同士の境界は山に囲まれ、まさに陸地の孤島のような土地。

 しかし、海に面しているが近隣の山からは鉱物資源が豊富にあり、タスマニカ諸島にある一番大きな島。パナマでは近年、古代遺跡が発見さた事が大きな話題となった。

 その遺跡には人の顔をした3つの塔があり、その一つ一つが希少なブルーダイヤ・ブラックダイヤ・イエローダイヤで作られていた。

 神殿も大理石を使っており、中には巨大なルビーの原石が神代として祀られていたのだ。その価値は国家財産にも匹敵する程だ。

 観光資源として十分に価値がある領地となり、今ではドメスト王国の税収の三分の一を占めるほどとなっている。

 そんな元海賊が何故ドメスト王国に籍を置く様になったのは訳があり、当時の国王が見目麗しい貴族令嬢を海賊の頭領に差し出した。

 頭領は海賊仲間の女性や商売女とは違って洗練された美しい令嬢を愛して大切にした。

 そして彼女の言うままにドメスト王国の爵位を受け、ドメスト王国に属するように仕向けていた。

 以後は、次々と代が代わる度に王族や有力貴族の令嬢や子息たちをその伴侶として送り込むことで、侯爵家を取り込んできた。

 次の侯爵となるアディーナがカインに好意を抱いていて、二人共仲が良かった。このまま学園を卒業すれば一年の婚約期間の後に結婚するはずだと安堵していた。

 エルリックが王子の責務として治水地の視察をしている間に事態が大きく変わっていた。

 元々、同年代にエルリックがいる事でアディーナにおかしなが付かないように見張り、カインとの関係も見守っていた。

 二人の良好な関係が崩れたのは、きっとそばにいるあの令嬢…アンネローゼの所為なのだという事だけは理解した。

 エルリックは真相を探るべくアディーナに声を掛ける事にしたのだった。

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