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プロローグ
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「すまない、レイティア。此から王宮に行かなくては行けないんだ。折角、王都に来たのだから観光がてら色々と見て回るといいよ」
「はい、マテウス様」
婚約者の第二王子マテウス殿下をお見送りした。
でもこれが彼と会った最後の日となった。
◇◇◇◇◇◇
数日後、クラレンス辺境伯爵家に王命で婚約が解消されたことを告げる使者がやって来た。
第一王子が不貞を働き王太子の座から退いたので、次席の第二王子であるマテウス殿下が立太子する事になった。
新しい婚約者には、オフィーリア・ルクセンブルグ公爵令嬢に決まっていた。
何故なら彼女は第一王子の元婚約者で王太子教育も施された完璧な令嬢だった。
対して私は、辺境伯爵令嬢で跡継ぎだった。
ただ、別れただけで傷は浅かったのに、まさか発表されたその日にあんな仕打ちを受けるとは思いもよらなかった。
「貴女が第二王子マテウス殿下の元婚約者ですの?」
「貧相なドレスね。流石、田舎者ね」
「こんな場違いなドレスで、場を汚すおつもりなの?」
「そもそも、婚約を解消されたのによく恥を忍んで出席出来たものね」
「やはり、王子のお相手には相応しくないわ」
様々な悪意に満ちた嘲りや嘲笑を受け、最後に一目でも一言だけでも元婚約者に伝えられればと考えていた私は、浅はかだった。
会場で紹介を受けて、皆の祝福を受けているマテウス殿下とオフィーリア様の姿はとてもお似合いだった。
私は、義務を果たしたとその場を去ろうとした。
だが、オフィーリア様は
「ごめんなさいね。貴女の立場を取ってしまった形になって、でも私も長く王太子妃教育を施されていたから、マテウス様のお役にたてるかと考慮しての事なの。貴族の結婚にはよくあることよね。マテウス様」
「ああ、仕方がない事だ」
「わかっております。殿下、立太子おめでとうございます。今までありがとうございました。どうかお幸せに」
最後まで、何とか言い切る事が出来た時、オフィーリア様がメイドに
「折角なので、お近づきの印に乾杯でも」
とシャンパングラスを持って来させた。そして、メイドは私にわざとグラスを傾けた。
ドレスに飲み物がかかり、ハンカチを渡そうとオフィーリア様が近づいた。
「負け犬令嬢は、さっさと尻尾を巻いて御下がり」
耳元でそう囁いた。
会場からは「無作法だ」等と中傷が聴こえて来たが、何とか貴族としての矜持だけは保ちながら、退出した。
マテウス殿下は何か言いたそうにしていたが、私はそのまま逃げる様に足早に去った。
そして、王宮の庭を走っていた。ほとんど来たことのない王宮で私は、どうやら迷った様だった。
庭の片隅にポツンと一人の男性が座っていた。
近づくとそれは第一王子ウィリアムだった。
「はい、マテウス様」
婚約者の第二王子マテウス殿下をお見送りした。
でもこれが彼と会った最後の日となった。
◇◇◇◇◇◇
数日後、クラレンス辺境伯爵家に王命で婚約が解消されたことを告げる使者がやって来た。
第一王子が不貞を働き王太子の座から退いたので、次席の第二王子であるマテウス殿下が立太子する事になった。
新しい婚約者には、オフィーリア・ルクセンブルグ公爵令嬢に決まっていた。
何故なら彼女は第一王子の元婚約者で王太子教育も施された完璧な令嬢だった。
対して私は、辺境伯爵令嬢で跡継ぎだった。
ただ、別れただけで傷は浅かったのに、まさか発表されたその日にあんな仕打ちを受けるとは思いもよらなかった。
「貴女が第二王子マテウス殿下の元婚約者ですの?」
「貧相なドレスね。流石、田舎者ね」
「こんな場違いなドレスで、場を汚すおつもりなの?」
「そもそも、婚約を解消されたのによく恥を忍んで出席出来たものね」
「やはり、王子のお相手には相応しくないわ」
様々な悪意に満ちた嘲りや嘲笑を受け、最後に一目でも一言だけでも元婚約者に伝えられればと考えていた私は、浅はかだった。
会場で紹介を受けて、皆の祝福を受けているマテウス殿下とオフィーリア様の姿はとてもお似合いだった。
私は、義務を果たしたとその場を去ろうとした。
だが、オフィーリア様は
「ごめんなさいね。貴女の立場を取ってしまった形になって、でも私も長く王太子妃教育を施されていたから、マテウス様のお役にたてるかと考慮しての事なの。貴族の結婚にはよくあることよね。マテウス様」
「ああ、仕方がない事だ」
「わかっております。殿下、立太子おめでとうございます。今までありがとうございました。どうかお幸せに」
最後まで、何とか言い切る事が出来た時、オフィーリア様がメイドに
「折角なので、お近づきの印に乾杯でも」
とシャンパングラスを持って来させた。そして、メイドは私にわざとグラスを傾けた。
ドレスに飲み物がかかり、ハンカチを渡そうとオフィーリア様が近づいた。
「負け犬令嬢は、さっさと尻尾を巻いて御下がり」
耳元でそう囁いた。
会場からは「無作法だ」等と中傷が聴こえて来たが、何とか貴族としての矜持だけは保ちながら、退出した。
マテウス殿下は何か言いたそうにしていたが、私はそのまま逃げる様に足早に去った。
そして、王宮の庭を走っていた。ほとんど来たことのない王宮で私は、どうやら迷った様だった。
庭の片隅にポツンと一人の男性が座っていた。
近づくとそれは第一王子ウィリアムだった。
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