【完結】婚約破棄は誰が為に？

真実

　「ウィリアム様、私と結婚してください」

　「はあ？」

　マテウスの隣でオフィーリアが口を開いた。

　その言葉にウィリアムが

　「何故？君とは終わったはずだし、ああ始まってもいなかったよね。だって君、婚約者候補だったから」

　「えっ、候補？」

　「そう、公爵から申し出が合った頃、君が色々やらかしているのを耳にしていたから、保留にしていたんだけど、君は勘違いして婚約者だと周りに言ったよね。これって王族に対する虚偽罪に当たる」

　その言葉に目を泳がし始めたオフィーリアは

　「そんな事は…」

　「挙げ句の果てにマテウスに乗り換える為に、媚薬の香を炊いて、令嬢を寝所に忍ばせた」
　
　「そ、それは」

　どんどん顔色が悪くなっていくオフィーリア

　「違う？おかしいな、じゃあ直接聞いてみようか」

　そうウィリアムが言うと関係していた証人が次々と真実を語った。

　「私はオフィーリア様に気分が良くなるお香だと言われ、最近睡眠不足になりがちなウィリアム様にちょうどいいと勧められました」

　侍女が証言した。続いて

　「私はオフィーリア様にウィリアム様が即位されたら側妃として迎えるからと憧れのウィリアム様に一夜だけでも側にいたくて…申し訳ございません。陛下を陥れるつもりなどありませんでした」

　泣いて詫びる伯爵令嬢

　「公爵家はオフィーリアのしていることを黙認していたのか？」

　「とんでもない、再三注意を促していました。婚約者候補である事は了承させて頂いております」

　「そう、ならどうしてオフィーリアはこんな大胆な事が出来たと思うマテウス？」

　「まさか、そんな」

　「何となく分かった。彼女はね僕らの父上とも仲良しだったんだ。わかるだろうマテウス。私はその女に指一本触れていないが、その女は乙女ではなかっただろう」

　マテウスは冷や汗をかいていた。

　兄の言う通り、オフィーリアは乙女ではなく、何処か手慣れていた様な仕種だった。

　「他人の手垢のついた女等ごめんだよ」

　そう言った兄は氷の王太子と呼ばれたその人そのものだった。