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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる
第23話 妹はきっと加減というものを知らない
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《朝比奈梨子サイド》
「……はぁ~」
土曜日の夜。
夕食を食べていた私は、図らずもため息をついてしまった。
「どうしたのお姉ちゃん。ニンニクたっぷり餃子と臭い対決でもしてるの?」
「なんで冷凍餃子と口臭対決をしなきゃならないのよ……」
梨々香の謎ツッコミに、私はまたため息をついた。
「なんていうかね、将来設計をしてるの。高校生って、いろいろ考える時期なんだよ」
「なるほどなるほど。つまり話題の彼氏さんとの関係の縮め方がわからなくて、餃子に臭い攻撃で八つ当たりしてたわけですな?」
「……ねぇ、ひょっとして梨々香ってエスパーなの? 大体全部当たってるのが悔しいんだけど」
驚くのも通り越して呆れる私に、梨々香は「お姉ちゃんはわかりやすいからね」とか真顔で言われた。
ここ数日でそれを言われるのは、何人目で何回目だろうか? 顔に出てしまうのも考えものである。
土曜日の夜だというのに、今日は父は休日出勤。母は急用で実家に帰っているから、二人きりだ。故に、本日は冷凍餃子(ニンニクマシマシアレンジ)で、姉妹揃って仲良く夕飯を食べているのだが……最近二人きりになると、やたらと彼の話題を振ってくる我が妹である。
「なんていうか……これまで楓くんのことちゃんと知らなかったわけだし、どう接すればいいのか、よくわからなくて」
「つい最近男を乗り換えたビッチのくせに何を言っている我が姉よ」
「ねぇ梨々香? 最近思うんだけど、ちょっと毒舌の威力増してない? あながち否定も仕切れないから余計に心に来るものがあるんだけど!」
そりゃ確かに、海人のこと好きになって、ころっと楓くんに落とされたわけだし、ビッチって思われてもなにも言えないんだけど……って、あれ?
「ちょっと待って。なんで楓くんの前に好きになった人がいるって知って……?」
「…………」
「ねぇ梨々香? お願い目を逸らさないで、梨々香ってばぁ!!」
うぅ……やはりそれもバレていたのか。
本格的にポーカーフェイスの作り方を勉強した方がいいのかも。
「まあ、お姉ちゃんが彼氏さんと付き合っていないから(妄想)彼氏さんだってことはわかってるけど、積極的にアプローチを仕掛けてもいいんじゃない?」
そう言いながら、梨々香はスマホを弄る。
食事中に行儀悪いよ。
「アプローチって言っても、同じ部活に入って一緒に放課後過ごす、くらいしか現状できてないし……」
「じゃあ、休日一緒に過ごすとか」
「それこそハードル高いよ。いや、もっと仲良くなったらわかんないけど、まだ仲良くなって1週間しか経ってないし……」
「ふ~ん……じゃあ、偶然を装って会えばいいんじゃない?」
「いや、そんなのどうやって会えばいいか……第一、私は楓くんの家すら」
知らない。そう言おうとした私の前に、梨々香はぽつりと言った。
「ちなみに、推定彼氏さんは明日、ニャンニャンモールに行くらしいよ」
「……はい? ちょっと待って、なんで梨々香がそんなこと知ってるの?」
「ん」
梨々香は、今の今まで弄っていたスマホを見せつけてきた。
スマホの画面にはPINEが表示され、宛先の名前は「境楓」となっている。
そして、肝心の会話は――
『そういえば、楓くんて明日予定とかあるの?』
『明日はニャンニャンモールで服を見るのに付き合うことになってる』
『へぇ! 偶然だね、私もニャンニャンモールに家族で行くんだよ!』
『そうなんだ。ばったり会えるかもね』
『ね!』
「……へ?」
「と、こんな感じ」
いや。
いやいや。
いやいやいやいや。
と、こんな感じ。じゃねぇよ!
「ちょっと待って。なんでニャンニャンモール行くことになってるの!? しかも、あんたいつの間に楓くんの連絡先を――」
「ん? 何言ってるのお姉ちゃん。これ、お姉ちゃんのスマホだよ?」
「……はい?」
その瞬間、私の思考が停止した。
よく見れば、PINEの右側の吹き出しにあるアイコンは、見覚えがありすぎる。
これは間違い無く……私のアカウント。
「って、何してくれてんのぉおおおおおおおおおおおお!!」
「これで合法的に、あくまで偶然、幻想彼氏さんに会えるね」
「仕組まれた必然じゃん!!」
私は思わず、そう叫んでいた。
「……はぁ~」
土曜日の夜。
夕食を食べていた私は、図らずもため息をついてしまった。
「どうしたのお姉ちゃん。ニンニクたっぷり餃子と臭い対決でもしてるの?」
「なんで冷凍餃子と口臭対決をしなきゃならないのよ……」
梨々香の謎ツッコミに、私はまたため息をついた。
「なんていうかね、将来設計をしてるの。高校生って、いろいろ考える時期なんだよ」
「なるほどなるほど。つまり話題の彼氏さんとの関係の縮め方がわからなくて、餃子に臭い攻撃で八つ当たりしてたわけですな?」
「……ねぇ、ひょっとして梨々香ってエスパーなの? 大体全部当たってるのが悔しいんだけど」
驚くのも通り越して呆れる私に、梨々香は「お姉ちゃんはわかりやすいからね」とか真顔で言われた。
ここ数日でそれを言われるのは、何人目で何回目だろうか? 顔に出てしまうのも考えものである。
土曜日の夜だというのに、今日は父は休日出勤。母は急用で実家に帰っているから、二人きりだ。故に、本日は冷凍餃子(ニンニクマシマシアレンジ)で、姉妹揃って仲良く夕飯を食べているのだが……最近二人きりになると、やたらと彼の話題を振ってくる我が妹である。
「なんていうか……これまで楓くんのことちゃんと知らなかったわけだし、どう接すればいいのか、よくわからなくて」
「つい最近男を乗り換えたビッチのくせに何を言っている我が姉よ」
「ねぇ梨々香? 最近思うんだけど、ちょっと毒舌の威力増してない? あながち否定も仕切れないから余計に心に来るものがあるんだけど!」
そりゃ確かに、海人のこと好きになって、ころっと楓くんに落とされたわけだし、ビッチって思われてもなにも言えないんだけど……って、あれ?
「ちょっと待って。なんで楓くんの前に好きになった人がいるって知って……?」
「…………」
「ねぇ梨々香? お願い目を逸らさないで、梨々香ってばぁ!!」
うぅ……やはりそれもバレていたのか。
本格的にポーカーフェイスの作り方を勉強した方がいいのかも。
「まあ、お姉ちゃんが彼氏さんと付き合っていないから(妄想)彼氏さんだってことはわかってるけど、積極的にアプローチを仕掛けてもいいんじゃない?」
そう言いながら、梨々香はスマホを弄る。
食事中に行儀悪いよ。
「アプローチって言っても、同じ部活に入って一緒に放課後過ごす、くらいしか現状できてないし……」
「じゃあ、休日一緒に過ごすとか」
「それこそハードル高いよ。いや、もっと仲良くなったらわかんないけど、まだ仲良くなって1週間しか経ってないし……」
「ふ~ん……じゃあ、偶然を装って会えばいいんじゃない?」
「いや、そんなのどうやって会えばいいか……第一、私は楓くんの家すら」
知らない。そう言おうとした私の前に、梨々香はぽつりと言った。
「ちなみに、推定彼氏さんは明日、ニャンニャンモールに行くらしいよ」
「……はい? ちょっと待って、なんで梨々香がそんなこと知ってるの?」
「ん」
梨々香は、今の今まで弄っていたスマホを見せつけてきた。
スマホの画面にはPINEが表示され、宛先の名前は「境楓」となっている。
そして、肝心の会話は――
『そういえば、楓くんて明日予定とかあるの?』
『明日はニャンニャンモールで服を見るのに付き合うことになってる』
『へぇ! 偶然だね、私もニャンニャンモールに家族で行くんだよ!』
『そうなんだ。ばったり会えるかもね』
『ね!』
「……へ?」
「と、こんな感じ」
いや。
いやいや。
いやいやいやいや。
と、こんな感じ。じゃねぇよ!
「ちょっと待って。なんでニャンニャンモール行くことになってるの!? しかも、あんたいつの間に楓くんの連絡先を――」
「ん? 何言ってるのお姉ちゃん。これ、お姉ちゃんのスマホだよ?」
「……はい?」
その瞬間、私の思考が停止した。
よく見れば、PINEの右側の吹き出しにあるアイコンは、見覚えがありすぎる。
これは間違い無く……私のアカウント。
「って、何してくれてんのぉおおおおおおおおおおおお!!」
「これで合法的に、あくまで偶然、幻想彼氏さんに会えるね」
「仕組まれた必然じゃん!!」
私は思わず、そう叫んでいた。
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