わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件

果 一

文字の大きさ
24 / 36
第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる

第24話 これはデートの待ちあわせと言っていいのだろうか

しおりを挟む
《境楓サイド》

 翌日の日曜日。
 僕はと言うと、ニャンニャンモールに来ていた。
 
 ニャンニャンモールとは、駅から徒歩5分という最寄りの場所に存在する巨大商業施設である。
 地下駐車場完備、5階建ての最上階には映画館も入っている、まあよくある超大型ショッピングモールだ。
 ふざけた名前だが、ここは昔動物園があっただとか、建設当時の代表取締役が猫好きだったとか、とにかくやっぱりふざけた理由で名前がついた。

 ただ、申し訳程度の猫要素として、三毛猫のキャラクターがシンボルとして描かれていたり、猫カフェが中にあったりするのは、子連れに人気の理由かもしれない。

 そんな中――僕は、正面の自動ドア前にある、噴水の前でそわそわしていた。
 時刻は午前10時50分。
 11時待ちあわせだから少し早いが、早く来てしまったのだから仕方が無い。

 状況としては、デートの待ちあわせそのものだ。
 まあ、初デートがショッピングモールなどというカップルは世の中にいないだろうし(偏見)、デートではないと自分に言い聞かせることはできる。
 しかし……女の子と二人きりで休日を楽しむ。これをデートと言わずして、果たしてなんと言うのだろうか?

 僕は今一度、自分の格好を見る。
 白いTシャツに、それっぽいジーンズ。それと、姉から貰ったメンズのネックレス。以上。
 恥ずかしながら、これでも大人っぽく背伸びしている方である。だって、オシャレとか言われてもわからんし。
ちなみに、姉がメンズのネックレスを持っているのは、彼氏のために買った……とかそんな話では当然なく、趣味に合うものを買って付けていったら、女友達に「それメンズだよw」とからかわれたため、僕に押しつけられた形である。僕がオシャレに無頓着なのは、もしかしたら血筋的なセンスの無さが原因かもしれない。

「はぁ……緊張するなぁ」

 呟きつつ、何気なく視線を滑らせた僕は、慌てて建物の影に隠れる、水色の髪の少女を見た気がした。
 あれ? 今の人、どっかで見たような……

 そんな風に考えていた僕だったが、

「悪い。待たせちまったか?」

 若干男勝りな女性の声を聞いて、そちらに振り向いた途端、頭の中が真っ白に消し飛んだ。
 そこにいたのは、紛れもなく知っている人だった。

 高身長で、金髪で、ネイルをしていて、そんでもって、何がとは言わないけど大きい女の子を僕は知っている。
 しかし、目の前の人物が、自分の知っている人物と結びつかなかった。

 いろいろと際どいホットパンツに、白いブラウス。ブラウスの胸元は、危うくこぼれ落ちそうなくらい胸が主張していて……何が言いたいかと言うと、いろいろと見た目がマズい。
 似合ってるとか、似合ってないとか、そういう問題じゃない。

 こんな格好で街中歩いたら、通行人の視線を全部集めてもおかしくない、そんな感じだ。
 そして――当然、その傍らにいる僕も、今まで空気だったのに一気に注目されることとなる。
 カップルではないのに、カップルと思われるのは、やはり恥ずかしい――

「おい、見ろよアレ」
「おおーすげー美人。怖そうだけど」
「隣にいるのは、彼氏……かれ、し?」
「いやいやどう見てもカップル……、……には、見えないな?」
「どちらかと言うと、ボスと舎弟的な?」
「あーね。たぶん、姉弟きょうだいとかだよね」

 ――よーし、どうやら僕達はデートに待ち合わせたカップルには見えないらしい。
 でも、ちょっとは誤解してくれてもいいんだよ?

「お、おい。その……」

 安心と落胆が混ざった複雑な気持ちでいると、目の前の女性――南嶋先輩が声をかけてくる。
 見かけによらず、もじもじと乙女な反応をする南嶋先輩は、頬を赤らめて声を絞り出した。

「今日は、よろしく」
「はい。よろしくお願いします」

 僕はペコリと頭を下げる。
 と、そうだ。彼女には好きな人がいるわけだし、デートというわけではないけど、ここはちゃんと言っておかなければ失礼というものだろう。

「今日の服装、似合ってますね」
「ひゃっ!」

 ……なんか悲鳴を上げて飛び退かれた。
 う~む、逆効果か。まあ、好きでもないヤツにそんなこと言われても、気持ち悪いだけだよな。

 そんな風に思いつつ、僕は移動を開始しようとして――直後に背後に寒気を感じて振り向いた。
 ――が、特に後ろに何かあったわけでもない。

「?」
「どうした? 急に後ろを振り返って」
「いえ。なにか、殺意じみた視線を感じた気がするのですが……気のせいだったみたいです」

 そう答え、僕は南嶋先輩に「行きましょう」と告げて歩き出した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。 他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。 そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。 三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。 新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。   この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...