25 / 36
第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる
第25話 デートとは言えグダグダすぎる
しおりを挟む
ショッピングモール。
それは、我等陰の者には縁遠い、日向の世界である。……まあ、何が言いたいかと言えば、つまりこういう場所には来ない。
「ショッピングモールって、こんなに人いるのか」
「そ、そうだな。少し舐めてた」
人の群れの間を縫って進みながら、思わず気後れして呟いてしまう僕に、横を歩く南嶋先輩が頷いて――って、あれ?
「先輩も、ショッピングモールとか来ないんですか?」
てっきり、来ているものかと思ったが。
「お、お前も知ってるだろうが。ウチに友達がいないことくらい」
「いやでも、家族とかと一緒に来ないのかなって……ほら、今もそうですけど、結構オシャレな服着てますし、ファッションブランドとかお気に入りのがあったりするのかなって」
そう聞くと、南嶋先輩はピクリと肩を振るわせて、なぜかそっぽを向きつつ言った。
「う、ウチの母親が勝手に買ってくるだけだ。あとは……若い頃のお下がりとかを貰ってる」
「へぇ~」
「なんだ、バカにしてんのか!?」
「い、いえ! してませんて!」
なぜか顔を真っ赤にして食って掛かる南嶋先輩を宥める。
しかし、お母さんのセンスか。派手だけど、娘の特徴をよくわかっているというか……センスはいいと思う。
僕なんて、パンプスとかトップスとか、キャミソールとか言われても、何が何を指す言葉なのかすらもわからないレベルのオシャレオンチだから、南嶋先輩母を褒める僕の目は節穴かもしれないが。
「それで、まずはどこに行きます?」
「それはもちろん、清楚系の服を買いにいく」
「それはわかってるんですが……具体的に、どの服屋がいいとか、ファッションブランドが好みとか……」
「なあ、楓よぉ。今の話の流れで、ウチがそんなものに興味があって、詳しかったりすると思うか?」
呆れたような声色で言ってくる南嶋先輩。
うん、確かにそうだ。それにしても、いきなり呼び捨てだけど初めて名前を呼んでくれた気がするな。呼び捨てだけど。
「それより、お前の方はどこかおすすめのお店があったりしないのか?」
そう問いかけてくる南嶋先輩に対し、僕は清々しい笑顔で答えた。
「僕がそういうのに詳しいと思いますか?」
――。
結局、世の中というのは難しいもので、興味がないものは興味がないのである。
例えば、数あるスーパーの中で、「ここがイチオシ!」と選ぶ人もいれば、「スーパーなんてどこも一緒でしょ」と選り好みをしない人だっている。
車好きと人が車を見たら、同じブランドの前期生産車と後期生産車の僅かな違いがわかっても、全く興味の無い人から見たら、違うブランドの車の違いすらわからないみたいな。
僕達はつまるところ、無頓着組が集まってしまった絶望の掃き溜めみたいな感じである。
要するに何が言いたいかと言えば――
「ど、どうだ?」
視界に入ったレディースのお店にとりあえず入店し、試着室で服を着替えた南嶋先輩が自信なさげにカーテンを開けて僕の前に姿を現す。
それに対し、僕は一言――
「いい……んじゃないでしょうか?」
「煮え切らないな」
だって、センスないんだもん。
僕は自分に辟易しつつ、改めて南嶋先輩を見た。
サイズは一応ピッタリらしい。全体的に肌色成分多めな服を着ていた人だから、こうして全身のシルエットを隠すゆるふわジャンパースカートというのは新鮮だ。
しかし――
「清楚……には見えないよな?」
「……はい」
ぶっちゃけエロいです。
何せ、南嶋先輩はスタイルがいい。出るとこは出て、引き締まるところは引き締まっている、モデル顔負けの体型なのだ。
本来、身体のラインを隠すはずのゆるふわコーデをしてなお、その暴力的な胸元とヒップラインが浮き出ていて――さっきまでの服装より逆にエロさが増している。
浴衣は胸の小さい人の方が似合う、とはよく言われるが、つまりそういうこと。
身体のラインがあまり浮き出ない服装=清楚というステレオタイプが存在する以上、彼女の特徴とは相容れない属性なのかもしれない。
厄介だな、清楚。
「こうなったら、最終手段を使うしかありませんね」
「最終手段? そんなものがあるのか?」
「はい」
僕はこくりと頷いてみせる。
僕達にはどうにもならない問題でも、しかしプロの意見を借りればどうだろうか?
そう、いるのだ。ここには、誰よりもファッションに詳しい専門家が。
僕は大きく深呼吸をして、クワッと目を見開いた。
「店員さぁああああん! 男受けする今流行りの清楚系ファッションを教えてくださぁあああああい!」
「それでいいのかお前は!! 男として!!」
それは、我等陰の者には縁遠い、日向の世界である。……まあ、何が言いたいかと言えば、つまりこういう場所には来ない。
「ショッピングモールって、こんなに人いるのか」
「そ、そうだな。少し舐めてた」
人の群れの間を縫って進みながら、思わず気後れして呟いてしまう僕に、横を歩く南嶋先輩が頷いて――って、あれ?
「先輩も、ショッピングモールとか来ないんですか?」
てっきり、来ているものかと思ったが。
「お、お前も知ってるだろうが。ウチに友達がいないことくらい」
「いやでも、家族とかと一緒に来ないのかなって……ほら、今もそうですけど、結構オシャレな服着てますし、ファッションブランドとかお気に入りのがあったりするのかなって」
そう聞くと、南嶋先輩はピクリと肩を振るわせて、なぜかそっぽを向きつつ言った。
「う、ウチの母親が勝手に買ってくるだけだ。あとは……若い頃のお下がりとかを貰ってる」
「へぇ~」
「なんだ、バカにしてんのか!?」
「い、いえ! してませんて!」
なぜか顔を真っ赤にして食って掛かる南嶋先輩を宥める。
しかし、お母さんのセンスか。派手だけど、娘の特徴をよくわかっているというか……センスはいいと思う。
僕なんて、パンプスとかトップスとか、キャミソールとか言われても、何が何を指す言葉なのかすらもわからないレベルのオシャレオンチだから、南嶋先輩母を褒める僕の目は節穴かもしれないが。
「それで、まずはどこに行きます?」
「それはもちろん、清楚系の服を買いにいく」
「それはわかってるんですが……具体的に、どの服屋がいいとか、ファッションブランドが好みとか……」
「なあ、楓よぉ。今の話の流れで、ウチがそんなものに興味があって、詳しかったりすると思うか?」
呆れたような声色で言ってくる南嶋先輩。
うん、確かにそうだ。それにしても、いきなり呼び捨てだけど初めて名前を呼んでくれた気がするな。呼び捨てだけど。
「それより、お前の方はどこかおすすめのお店があったりしないのか?」
そう問いかけてくる南嶋先輩に対し、僕は清々しい笑顔で答えた。
「僕がそういうのに詳しいと思いますか?」
――。
結局、世の中というのは難しいもので、興味がないものは興味がないのである。
例えば、数あるスーパーの中で、「ここがイチオシ!」と選ぶ人もいれば、「スーパーなんてどこも一緒でしょ」と選り好みをしない人だっている。
車好きと人が車を見たら、同じブランドの前期生産車と後期生産車の僅かな違いがわかっても、全く興味の無い人から見たら、違うブランドの車の違いすらわからないみたいな。
僕達はつまるところ、無頓着組が集まってしまった絶望の掃き溜めみたいな感じである。
要するに何が言いたいかと言えば――
「ど、どうだ?」
視界に入ったレディースのお店にとりあえず入店し、試着室で服を着替えた南嶋先輩が自信なさげにカーテンを開けて僕の前に姿を現す。
それに対し、僕は一言――
「いい……んじゃないでしょうか?」
「煮え切らないな」
だって、センスないんだもん。
僕は自分に辟易しつつ、改めて南嶋先輩を見た。
サイズは一応ピッタリらしい。全体的に肌色成分多めな服を着ていた人だから、こうして全身のシルエットを隠すゆるふわジャンパースカートというのは新鮮だ。
しかし――
「清楚……には見えないよな?」
「……はい」
ぶっちゃけエロいです。
何せ、南嶋先輩はスタイルがいい。出るとこは出て、引き締まるところは引き締まっている、モデル顔負けの体型なのだ。
本来、身体のラインを隠すはずのゆるふわコーデをしてなお、その暴力的な胸元とヒップラインが浮き出ていて――さっきまでの服装より逆にエロさが増している。
浴衣は胸の小さい人の方が似合う、とはよく言われるが、つまりそういうこと。
身体のラインがあまり浮き出ない服装=清楚というステレオタイプが存在する以上、彼女の特徴とは相容れない属性なのかもしれない。
厄介だな、清楚。
「こうなったら、最終手段を使うしかありませんね」
「最終手段? そんなものがあるのか?」
「はい」
僕はこくりと頷いてみせる。
僕達にはどうにもならない問題でも、しかしプロの意見を借りればどうだろうか?
そう、いるのだ。ここには、誰よりもファッションに詳しい専門家が。
僕は大きく深呼吸をして、クワッと目を見開いた。
「店員さぁああああん! 男受けする今流行りの清楚系ファッションを教えてくださぁあああああい!」
「それでいいのかお前は!! 男として!!」
22
あなたにおすすめの小説
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる