わけあって美少女達の恋を手伝うことになった隠キャボッチの僕、知らぬ間にヒロイン全員オトしてた件

果 一

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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる

第25話 デートとは言えグダグダすぎる

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 ショッピングモール。
 それは、我等陰の者には縁遠い、日向の世界である。……まあ、何が言いたいかと言えば、つまりこういう場所には来ない。

「ショッピングモールって、こんなに人いるのか」
「そ、そうだな。少し舐めてた」

 人の群れの間を縫って進みながら、思わず気後れして呟いてしまう僕に、横を歩く南嶋先輩が頷いて――って、あれ?

「先輩も、ショッピングモールとか来ないんですか?」

 てっきり、来ているものかと思ったが。

「お、お前も知ってるだろうが。ウチに友達がいないことくらい」
「いやでも、家族とかと一緒に来ないのかなって……ほら、今もそうですけど、結構オシャレな服着てますし、ファッションブランドとかお気に入りのがあったりするのかなって」

 そう聞くと、南嶋先輩はピクリと肩を振るわせて、なぜかそっぽを向きつつ言った。

「う、ウチの母親が勝手に買ってくるだけだ。あとは……若い頃のお下がりとかを貰ってる」
「へぇ~」
「なんだ、バカにしてんのか!?」
「い、いえ! してませんて!」

 なぜか顔を真っ赤にして食って掛かる南嶋先輩を宥める。
 しかし、お母さんのセンスか。派手だけど、娘の特徴をよくわかっているというか……センスはいいと思う。

 僕なんて、パンプスとかトップスとか、キャミソールとか言われても、何が何を指す言葉なのかすらもわからないレベルのオシャレオンチだから、南嶋先輩母を褒める僕の目は節穴かもしれないが。

「それで、まずはどこに行きます?」
「それはもちろん、清楚系の服を買いにいく」
「それはわかってるんですが……具体的に、どの服屋がいいとか、ファッションブランドが好みとか……」
「なあ、楓よぉ。今の話の流れで、ウチがそんなものに興味があって、詳しかったりすると思うか?」

 呆れたような声色で言ってくる南嶋先輩。
 うん、確かにそうだ。それにしても、いきなり呼び捨てだけど初めて名前を呼んでくれた気がするな。呼び捨てだけど。

「それより、お前の方はどこかおすすめのお店があったりしないのか?」

 そう問いかけてくる南嶋先輩に対し、僕は清々しい笑顔で答えた。

「僕がそういうのに詳しいと思いますか?」

――。

 結局、世の中というのは難しいもので、興味がないものは興味がないのである。
 例えば、数あるスーパーの中で、「ここがイチオシ!」と選ぶ人もいれば、「スーパーなんてどこも一緒でしょ」と選り好みをしない人だっている。
 車好きと人が車を見たら、同じブランドの前期生産車と後期生産車の僅かな違いがわかっても、全く興味の無い人から見たら、違うブランドの車の違いすらわからないみたいな。

 僕達はつまるところ、無頓着組が集まってしまった絶望の掃き溜めみたいな感じである。
 要するに何が言いたいかと言えば――

「ど、どうだ?」

 視界に入ったレディースのお店にとりあえず入店し、試着室で服を着替えた南嶋先輩が自信なさげにカーテンを開けて僕の前に姿を現す。
 それに対し、僕は一言――

「いい……んじゃないでしょうか?」
「煮え切らないな」

 だって、センスないんだもん。
 僕は自分に辟易しつつ、改めて南嶋先輩を見た。

 サイズは一応ピッタリらしい。全体的に肌色成分多めな服を着ていた人だから、こうして全身のシルエットを隠すゆるふわジャンパースカートというのは新鮮だ。
 しかし――

「清楚……には見えないよな?」
「……はい」

 ぶっちゃけエロいです。
 何せ、南嶋先輩はスタイルがいい。出るとこは出て、引き締まるところは引き締まっている、モデル顔負けの体型なのだ。
 本来、身体のラインを隠すはずのゆるふわコーデをしてなお、その暴力的な胸元とヒップラインが浮き出ていて――さっきまでの服装より逆にエロさが増している。

 浴衣は胸の小さい人の方が似合う、とはよく言われるが、つまりそういうこと。
 身体のラインがあまり浮き出ない服装=清楚というステレオタイプが存在する以上、彼女の特徴とは相容れない属性なのかもしれない。
 厄介だな、清楚。

「こうなったら、最終手段を使うしかありませんね」
「最終手段? そんなものがあるのか?」
「はい」

 僕はこくりと頷いてみせる。
 僕達にはどうにもならない問題でも、しかしプロの意見を借りればどうだろうか?
 そう、いるのだ。ここには、誰よりもファッションに詳しい専門家が。
 僕は大きく深呼吸をして、クワッと目を見開いた。

「店員さぁああああん! 男受けする今流行りの清楚系ファッションを教えてくださぁあああああい!」
「それでいいのかお前は!! 男として!!」

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